頼れる獣医が教える治療法 vol.037
犬アトピー性皮膚炎は、アトピー素因という遺伝的要素をもつ犬で発症する皮膚病です。アトピーを発症するかどうかは後天的な要素も関連します。犬アトピー性皮膚炎を発症すると、かゆみや紅斑、脱毛といった症状が現れます。
猫では未だアトピー素因からの皮膚病の診断名がいまいち確定されていませんが、犬では明確な判断基準が存在します。まだ研究が進んでいる分野なので今後基準が変わる可能性はありますが、当院では「ファブローの診断基準」をもとに診断を行っています。また、犬アトピー性皮膚炎に類似した他の皮膚炎も多く存在し、さらには皮膚感染症などアトピーと併発した疾患も多く存在しますので注意が必要です。
ファブローの診断基準には、発症年齢や皮膚病変の部位、ホルモンに対する反応性など8つの基準があり、8個中5個以上当てはまるとほぼ確定します。安易にアトピーと診断することは誤診に繋がりますので、さまざまな情報をもとに総合的に判断します。
飼い主さんからは、病歴を特に注意してお聞きます。犬アトピー性皮膚炎は若齢から発症することが多いからです。4~5歳になってはじめて相談に来る方もいますが、そのような子であっても、以前から皮疹を伴わないかゆみの症状が出ていた可能性はあるのです。
犬アトピー性皮膚炎に対する根本的な治療法が「減感作療法」です。
減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法)は、アレルギーの原因物質を少量ずつ投与し、過剰なアレルギー反応を起こさないようにしていく治療です。治療を開始する前にアレルギー検査を行い、治療の効果が見込めるか否か検討します。若齢から治療を開始することで、より高い効果が期待できます。
はじめは1週間おきに計6回投与します。その後は1か月毎の投与となります。治療開始初期から効果が出る子もいますが、投薬をやめると再発することもありますので、最低でも半年から2年は続けていただきたい治療です。
犬アトピー性皮膚炎は、減感作療法以外で根治は目指せません。シャンプーをして清潔に保ったり、保湿したりするのも重要です。かゆみを抑えるための抗炎症薬や二次感染を防ぐための抗菌薬などを処方しながら、減感作療法を実施します。犬アトピー皮膚炎に対しての治療やケアをする方法は複数ありますので、年齢等も考慮し、その子にあった治療を選択していただければと思います。
横浜山手犬猫医療センター
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