既成概念をぶっ壊せ!その先にある最良の動物病院を目指して
ちゃんとした診断をして欲しい。しっかりした治療をして欲しい。そんなオーナーの願いに応える病院です。
- 新井 勇人院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.007
目次
内視鏡は細長いカメラを口やお尻から入れて体内を観察する医療機器で、本来の使い方は胃や腸に病気が無いかを調べるものです。私はそれに様々な摘出器具を併用して、動物に多い異物誤飲事故に対応しています。お腹にメスをいれる開腹手術をせずに異物を摘出できるので、オーナーの皆様に大変喜ばれています。
ある業者の概算によると、内視鏡がある動物病院は全体の約10%だそうです。多くはありませんがネットで検索すればいくらでも見つけられます。それでも他県からの来院が多い理由は、内視鏡での異物摘出にこだわりを持って取り組んでいる動物病院が他にあまりないからだと思います。
多くの動物病院にとって、内視鏡での異物摘出は必須の技術ではありません。なぜなら内視鏡で摘出できなくても開腹すれば摘出できるからです。内視鏡での異物摘出は“成功したらラッキー”ぐらいの位置づけで、できなくてもそんなに困らないんですよ。ですから、日々の診療や自己研鑽で忙しい獣医さんの中には、「なんとしても内視鏡で異物を摘出するぞ」と情熱を傾ける人があまり多くないのだと思います。
私が内視鏡での異物摘出に力を入れようと思った契機は、正にそこです。夜間救急で10年近く勤務して、その間に何千という異物誤飲を診察してきました。「他院で『開腹手術しかない』と言われたが、どうにかならない?」と来院する人も多く、私が開腹せずに内視鏡で摘出すると多くの人が涙を流して喜んでくれました。同時に「開腹って気軽に言わないでほしかった」と憤慨もしていました。オーナーが価値を置いていることを獣医療従事者がどれだけ軽視しているか、両者の間にはこんなにもすれ違いがあるのか、と思わされる体験でした。
自分の家族に置き換えて想像してください。医者からサラっと「開腹手術すれば解決しますよ」と言われて「じゃ、お願いしま~す」と言えますか? 私なら「開腹以外の方法は無いんですか!?」と食い下がります。ペットも家族の時代ですからね。「内視鏡でダメなら開腹すればいいや」ではなく「絶対に開腹せずに摘出するぞ」という気持ちで、私は内視鏡に取り組んでいます。
気合いをいれて内視鏡をするだけで何でも摘出できるのか、ということですよね。正直、私だけができる“超絶技巧”のようなものはありません。しかし救急医時代に数をこなし多くの失敗と試行錯誤を重ねた経験と、あとはそれを遂行するために必要な器具の充実ですね。「内視鏡はあるけど摘出できる器具がないから開腹しかない」とか「仔犬に入れられる細いサイズは無いので開腹しましょう」と言われたとか、そういった理由で転院してくる人も多いのですが当院は全て対応しています。
それは大きいですね。自動車の教本を読み込んでも運転が上手にならないのと同じで、内視鏡の技術は教科書を読んでも絶対に上手くなりません。いかに数をこなして、イレギュラーな事例も含めて経験の蓄積があるか、それがすべてです。その意味では、街の動物病院勤務では絶対にできない、本当に貴重な経験を積んだのだなと感じます。
当院では約95%ですが、これは私が魔法のようにどんなケースでも摘出できるからではありません。事前の診察や検査で可能性が無いと判定したものは、そもそもやらないからです。この事前の見極めが何より大事です。
残りの5%は何かというと、「内視鏡では難しそうだけど、もしかしたら……」という微妙なケースです。そのような時、私は「チャレンジさせてください」とお願いします。その結果、摘出できることもあるし、ごめんなさいダメでしたということもあり、その5%です。
それから私は、開腹手術を全否定している訳ではありません。むしろ内視鏡では不可能で開腹すべきだと判定した場合は、正直にそのように伝えています。しかし、本当は開腹せず解決できるのに開腹されてしまう事例が世の中に多くあるのもまた事実です。そのような犬猫を一頭でも減らしたいですね。
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