緑の森どうぶつ病院 さっぽろ病院 森 伸介 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.084

定期的な検診で、猫の「肥大型心筋症」を早期発見・早期治療
循環器系疾患
定期的な検診で、猫の「肥大型心筋症」を早期発見・早期治療
緑の森どうぶつ病院 さっぽろ病院
  • 森 伸介 院長
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北海道旭川市、札幌市を中心に展開する「緑の森どうぶつ病院」のグループ院であり、心臓病の治療をはじめとする高度な医療を提供する「さっぽろ病院」。札幌市電の東本願寺前停留所から徒歩2分と交通の便もよく、犬と猫で空間を分けるなど、受診しやすい環境を整えている。同院の森伸介院長が自らの経験をふまえて「非常に恐ろしい病気」と語るのが、猫の「肥大型心筋症」だ。症状が現れた段階では手遅れの可能性があり、突然死に至ることも珍しくないという。早期発見・早期治療が何より大切な肥大型心筋症について、疾患の特徴や治療法などを森院長へ伺った。(取材日 2024年9月16日)

症状が出てからでは遅い肥大型心筋症。早期発見のポイントは定期的な検診

― 猫の肥大型心筋症とは、どのような病気なのでしょうか?

心臓病にもいろいろな種類がありますが、猫で最も発生率が高いのは「肥大型心筋症」です。心臓の筋肉が肥大していき、動きが徐々に悪くなることで症状が現れます。発症する年齢は6歳以降の中高齢、猫種についてはメインクーン、ラグドール、アメリカンショートヘアなどが多い傾向にはありますが、年齢・猫種を問わず発症します。この病気の恐ろしさは、症状がわかりづらく、初期段階に至ってはほとんど症状が現れないところです。病気が進行すると胸水や肺水腫により呼吸困難になったり、食欲が低下して体重が減ったりしますが、そうした症状が出た段階では手遅れのケースも少なくありません。かつて私が飼っていた猫も、ある日突然呼吸が早くなり、急いで検査したところ胸水が確認され、その日のうちに亡くなってしまいました。

― 肥大型心筋症が疑われた場合、どのような治療を行うのでしょう?

猫の肥大型心筋症において、最も恐ろしいのは血栓症です。血栓ができてしまうと猫は強い痛みに襲われるほか、脚に力が入らず立てなくなってしまうといった特有の症状が現れます。突然死も珍しくありませんので、血栓ができる前に異変を見つけ、治療を開始することが重要です。また、胸水や肺水腫になると飲み込むことが困難になり投薬も難しくなるので、それらを発症する前に利尿剤や血圧のお薬を用いて速やかに治療を開始することも大切です。心臓病は基本的に完治しない疾患ですので、治療の目的は進行を止める、あるいは遅らせることになります。血栓、胸水、肺水腫といった症状が出る前に早期発見し、早期治療に繋げることが求められるのです。

― 症状が出る前に早期発見するには何が大切ですか?

残念ながら、心臓病には「こうしていれば防げます」という明確な予防策はありません。ですから飼い主さんにできることは、定期的な検診を行い、心音の変化を少しでも早く見つけることです。当院では、聴診や超音波検査を組み合わせながら心臓を慎重にチェックし、早期発見・早期治療に繋げています。ちなみに聴診や超音波検査は獣医師にとって基本的な診療行為ですが、病変を見つけられるかどうかは技術や経験によって左右されるものです。私は、うちの子のような悲しいケースを減らしたいという思いから、猫の心臓病治療を深く追求してきました。心音の聞き方、超音波の当て方に独自のノウハウを有しておりますので、少しでも気になることがあればご相談いただきたいと思います。なお、呼吸が速くなる、突然立てなくなる、怪我がないのに痛みで大声を上げるといった症状が見られたら、緊急事態ですので速やかに動物病院へ連れて行ってください。

ペットと飼い主のストレスを緩和することが、的確な検査・治療に繋がる

― 犬と猫とで診察室・待合室を分けていることも、貴院の特徴ですね。

猫は環境の変化に対して非常に敏感です。病院という慣れない場所で、さらに近くで犬が吠えている状況でのストレスは想像に難くありませんし、飼い主さんもご心配でしょう。そこで、当院では犬と猫で診察室・待合室を分け、ペットにとっても、飼い主さんにとっても、安心して通える病院をめざしています。
また猫にストレスを与えないことは、診療においても大きなメリットがあります。猫が怯えてしまうと、ケージから出てこなかったり暴れ回ったりして、必要な診療が出来なくなってしまいます。しっかりと診させていただくためにも、空間を分けることは重要なのです。

― グループ病院とは、どのような連携が行われているのですか?

当院は、犬猫の心臓病をはじめとする比較的高度な内科医療を得意としています。一方、グループ内には外科を得意とする病院や、鳥類、ウサギ、ハムスター、モルモットといったエキゾチックアニマルに幅広く対応している病院もあり、お互いの得意分野を生かしながら連携する体制を整えています。
また当グループでは、ペットのケアやしつけの専門家による教室を定期的に開催しており、飼い主さんのさまざまな悩みや困り事にお応えしています。そうした医療以外の面でお力になれることも、私たちの強みといえるでしょう。

― そのほか、獣医師として心がけていることをお聞かせください。

動物医療のレベルは日増しに高まっており、それ自体は素晴らしいことなのですが、だからこそ医療が過剰にならないよう注意する必要があると考えています。大切なのは「どうすればペットや飼い主さんが幸せになれるか」であり、その答えは飼い主さんとの話し合いのなかにあります。これからも丁寧なコミュニケーションを心がけ、ペットとの幸せな暮らしを応援していきたいですね。

ドクターからのメッセージ
  • 森 伸介 院長

肥大型心筋症のように、症状を示さない病気というものはたくさんあります。治療も大切ですが、病気の予防はさらに重要です。症状が出てからの受診ではなく、定期的な検診による早期発見をお勧めします。当院ではペットに負担のかからない環境を整えていますので、お気軽にご来院ください。

定期的な検診で、猫の「肥大型心筋症」を早期発見・早期治療
定期的な検診で、猫の「肥大型心筋症」を早期発見・早期治療

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住所
北海道札幌市中央区南7条西8丁目1-24 LC拾八番館1~2F
電話番号
050-5445-0843
最寄駅
東本願寺前駅
アクセス
札幌市電 東本願寺前駅より徒歩2分
駐車場
あり(61台)
診察動物
イヌ ネコ
診察領域
歯と口腔系疾患 眼科系疾患 皮膚系疾患 脳・神経系疾患 循環器系疾患 呼吸器系疾患 消化器系疾患 肝・胆・すい臓系疾患 腎・泌尿器系疾患 内分泌代謝系疾患 血液・免疫系疾患 筋肉系疾患 整形外科系疾患 耳系疾患 生殖器系疾患 感染症系疾患 寄生虫 腫瘍・がん 中毒 心の病気 けが・その他 軟部外科