横浜山手犬猫医療センター 松井 圭悟 副院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.079

犬や猫の消化器型リンパ腫。状態を見極め、適した治療の選択を
腫瘍・がん
犬や猫の消化器型リンパ腫。状態を見極め、適した治療の選択を
横浜山手犬猫医療センター
  • 松井 圭悟 副院長
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横浜市中区の「横浜山手犬猫医療センター」は、獣医師を11人配し、年中無休で診察を行っている。地域のかかりつけ医としての一般診療から、特に皮膚科・免疫アレルギー科・循環器科・外科・腫瘍科については、各学会の認定医資格を持つ医師が常勤しており、大学病院などにも匹敵する専門性の高い医療まで提供している。日本獣医がん学会獣医腫瘍科II種認定医であり、CTや4K内視鏡などの高度な機器を用いて病気の早期発見に奮闘する松井圭悟副院長に、診断が難しく個々のケースに合わせた治療が求められる、犬や猫の「消化器型リンパ腫」についてお話を伺った。(取材日 2024年9月19日)

なかなか治らない吐き下痢の診断には、専門的な検査が重要なことも

― 犬や猫の消化器型リンパ腫とは、どのような病気でしょうか?

リンパ腫は、白血球の中のリンパ球ががん化してしまう、血液のがんです。その中で、がん化したリンパ球が消化管や膵臓、肝臓やリンパ節などに入り込み、全体あるいは一部が腫れたり、しこりを形成したり、時には見た目が変わらないまま悪さをする病気を「消化器型リンパ腫」といいます。初期症状としては、繰り返す嘔吐や下痢が一番多くみられ、胃腸炎と区別がつきにくいこともあります。しかしリンパ腫の場合は、吐き気止めや整腸剤などの薬剤投与により一時的に症状が改善しても、すぐにぶり返すことが多く、また徐々に薬剤へ反応しなくなっていきます。その他の症状としては、食欲不振や体重減少、元気がなくなる、また腹部の不快感や痛みによって姿勢に影響が出てくる場合もあります。

― どのように診断するのでしょうか?

まずは丁寧な触診でしこりなどがないか確認し、その後に血液検査、便検査、超音波検査などを行っていきます。なかでも超音波検査は重要であり、胃腸の層構造の変化やしこりの有無など、様々な体内の情報を得られるので、病気の原因、患部の位置などが絞り込めるのです。その後は必要に応じて、細胞を採取して調べる細胞診検査、内視鏡検査や開腹検査などに進み、病気を特定していきます。
なお当院では、クリニックレベルでは珍しいCTや高画質の内視鏡などの充実した機器を用いて、専門知識の豊富な医師が検査を行います。疑わしい場合は検査をしてみることをお勧めします。

― 4K高画質の内視鏡カメラを完備しているそうですね。

内視鏡検査は、細い管状のカメラを消化管に挿入し、詳細に観察していく検査です。当院では4K高画質の機器を使っていますので、腸粘膜表面のビロードのような細かい絨毛組織まで鮮明に観察でき、小さな病変でも見つけることが可能です。また内視鏡は組織の採取もできますから、病変部の生検を行い胃腸炎なのかリンパ腫なのかの診断に役立ちます。60~90分程度で終了し、開腹の必要もなく低侵襲で実施できる唯一無二の検査ですが、病変の場所によっては内視鏡が届かないケースもあります。

腫瘍の型により異なる治療法。QOLと飼い主様の希望を尊重して選択

― 消化器型リンパ腫の治療法を教えてください。

ひとくちに消化器型リンパ腫と言っても、様々な型があり、型により治療法が変わってきます。
例えば、1つの分類としてリンパ腫は高グレード(大細胞性)や低グレード(小細胞性)に分けることができますが、低グレードですと週3回〜毎日の内服薬を飲ませるだけで治療できる場合もあります。高グレードの場合は、抗がん剤の注射や時には外科手術の実施、つらい症状を和らげる緩和治療や栄養管理など様々な治療の選択肢があります。
ただしいずれの場合にも、リンパ腫の治療では抗がん剤が中心となることがほとんどです。しかし抗がん剤には副作用があり、出⽅にも個体差があります。

軽度な症状しか出ない子から吐き気や下痢、骨髄抑制など強く出てしまう子まで様々です。それでも抗がん剤治療をするのは、治療の先にQOL(生活の質)の向上や生存期間の延長を目指すためです。ですから、たとえ治療で腫瘍が小さくなっても、副作用などによってQOLが著しく低下してしまっては意味がありません。治療する際は常に患者であるペットとそれを見守る飼い主様のQOLを大事にしながら治療していきたいと考えています。どこまで治療していくのか、何を目的に治療していくのか、それらをしっかりと相談していきながら、その子その子にあった治療選択ができるよう心がけています。

― 治療後の経過はどのようになるでしょうか?

低グレードの場合は適切な治療で長い寛解状態(治癒ではないが、病気による症状が消えた状態)を得られることもありますが、高グレードの場合は治療を施しても、半年~1年を超えることが難しいです。しかし、その子に合った対応を行うことで、QOLが高い状態をできる限り長く保つことを目指します。
多くの疾患に⾔えることですが、これを⾏えば必ず良くなるという治療はありませんし、特にリンパ腫という病気はその性質上、全ての子が一様な治療反応を示してくれるとは限りません。腫瘍の性質だけでなく、ペットの状態や性格、体質や⽣活環境によっても治療反応は変わります。その時々の状態や、治療の反応を見ながらその都度飼い主様と相談し、治療方針を一緒に決定することが大切だと考えています。

ドクターからのメッセージ
  • 松井 圭悟 副院長

繰り返しにはなりますが、病気を治療することは重要です。しかしその治療によってペットと飼い主様がつらくなってしまっては本末転倒です。ペットと過ごす時間が楽しいものになるようサポートするという本来の目的を見失わないよう、飼い主様としっかりお話をした上で治療方針を決めていくことを心がけています。
また私は、このクリニックのある横浜市中区で生まれ育ちました。地元獣医ならではの情報も提供し、皆様のお役に立ちたいと思っています。ペットの体調で気になることがあれば、どんな小さなことでも構いません。ご予約の上、お気軽にご来院ください。

犬や猫の消化器型リンパ腫。状態を見極め、適した治療の選択を
犬や猫の消化器型リンパ腫。状態を見極め、適した治療の選択を

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電話番号
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