犬アトピー性皮膚炎の診断と減感作療法
犬アトピー性皮膚炎は長期の管理が必要になります。減感作療法により根治が見込める場合もあります。
- 上田 一徳 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.079
目次
リンパ腫は、白血球の中のリンパ球ががん化してしまう、血液のがんです。その中で、がん化したリンパ球が消化管や膵臓、肝臓やリンパ節などに入り込み、全体あるいは一部が腫れたり、しこりを形成したり、時には見た目が変わらないまま悪さをする病気を「消化器型リンパ腫」といいます。初期症状としては、繰り返す嘔吐や下痢が一番多くみられ、胃腸炎と区別がつきにくいこともあります。しかしリンパ腫の場合は、吐き気止めや整腸剤などの薬剤投与により一時的に症状が改善しても、すぐにぶり返すことが多く、また徐々に薬剤へ反応しなくなっていきます。その他の症状としては、食欲不振や体重減少、元気がなくなる、また腹部の不快感や痛みによって姿勢に影響が出てくる場合もあります。
まずは丁寧な触診でしこりなどがないか確認し、その後に血液検査、便検査、超音波検査などを行っていきます。なかでも超音波検査は重要であり、胃腸の層構造の変化やしこりの有無など、様々な体内の情報を得られるので、病気の原因、患部の位置などが絞り込めるのです。その後は必要に応じて、細胞を採取して調べる細胞診検査、内視鏡検査や開腹検査などに進み、病気を特定していきます。
なお当院では、クリニックレベルでは珍しいCTや高画質の内視鏡などの充実した機器を用いて、専門知識の豊富な医師が検査を行います。疑わしい場合は検査をしてみることをお勧めします。
内視鏡検査は、細い管状のカメラを消化管に挿入し、詳細に観察していく検査です。当院では4K高画質の機器を使っていますので、腸粘膜表面のビロードのような細かい絨毛組織まで鮮明に観察でき、小さな病変でも見つけることが可能です。また内視鏡は組織の採取もできますから、病変部の生検を行い胃腸炎なのかリンパ腫なのかの診断に役立ちます。60~90分程度で終了し、開腹の必要もなく低侵襲で実施できる唯一無二の検査ですが、病変の場所によっては内視鏡が届かないケースもあります。
ひとくちに消化器型リンパ腫と言っても、様々な型があり、型により治療法が変わってきます。
例えば、1つの分類としてリンパ腫は高グレード(大細胞性)や低グレード(小細胞性)に分けることができますが、低グレードですと週3回〜毎日の内服薬を飲ませるだけで治療できる場合もあります。高グレードの場合は、抗がん剤の注射や時には外科手術の実施、つらい症状を和らげる緩和治療や栄養管理など様々な治療の選択肢があります。
ただしいずれの場合にも、リンパ腫の治療では抗がん剤が中心となることがほとんどです。しかし抗がん剤には副作用があり、出⽅にも個体差があります。
軽度な症状しか出ない子から吐き気や下痢、骨髄抑制など強く出てしまう子まで様々です。それでも抗がん剤治療をするのは、治療の先にQOL(生活の質)の向上や生存期間の延長を目指すためです。ですから、たとえ治療で腫瘍が小さくなっても、副作用などによってQOLが著しく低下してしまっては意味がありません。治療する際は常に患者であるペットとそれを見守る飼い主様のQOLを大事にしながら治療していきたいと考えています。どこまで治療していくのか、何を目的に治療していくのか、それらをしっかりと相談していきながら、その子その子にあった治療選択ができるよう心がけています。
低グレードの場合は適切な治療で長い寛解状態(治癒ではないが、病気による症状が消えた状態)を得られることもありますが、高グレードの場合は治療を施しても、半年~1年を超えることが難しいです。しかし、その子に合った対応を行うことで、QOLが高い状態をできる限り長く保つことを目指します。
多くの疾患に⾔えることですが、これを⾏えば必ず良くなるという治療はありませんし、特にリンパ腫という病気はその性質上、全ての子が一様な治療反応を示してくれるとは限りません。腫瘍の性質だけでなく、ペットの状態や性格、体質や⽣活環境によっても治療反応は変わります。その時々の状態や、治療の反応を見ながらその都度飼い主様と相談し、治療方針を一緒に決定することが大切だと考えています。
横浜山手犬猫医療センター 地図を見る
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
ペットと長く楽しく過ごせる治療を選択するために、高度な機器と技術で消化器型リンパ腫を診断します。
ペットにも起こる、腎不全と心腎関連症候群。細やかに状態を把握し、適切な治療を行う必要があります。