ペットのため学び続ける、皮膚とエイジングケアのスペシャリスト
長年信頼を寄せられている皮膚科系疾患の治療に加え、ペットのエイジングケアにも力を入れています。
- 後藤 慎史 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.069
目次
耳の鼓膜までを外耳、鼓膜から奥を中耳といいます。外耳道に炎症が起こっている状態を外耳炎と呼び、ペット保険のデータにおいても特に件数の多い疾病の一つです。いろいろな原因で発症しますが、アレルギーが主因になることが多く、そういった場合は生涯付き合うことになります。定期的な通院が必要になったり、落ち着いてもまた次のシーズンに症状が出たりすることもあります。
外耳炎を軽く考える方もいらっしゃるかもしれませんが、痒みや痛みで生活の質を著しく落としかねませんし、こじらせると外耳の奥にある中耳、さらに奥の脳にまで炎症が広がってしまうこともあります。そういった意味では、外耳炎も命を落とす可能性がある病気といえるでしょう。
内科での治療方法は、「洗浄する」「点耳する」「薬を服用する」の3つになります。その中でも、当院が大事にしているのは洗浄です。泥まみれの手に塗り薬を使っても効かないのと同じで、耳の中をきれいにした上で点耳薬を使うのが肝心です。汚れや耳垢が溜まっていることで外耳炎になる場合もあるので、洗浄しただけで治る子もいます。治ってから1~2か月経って、耳垢が溜まり症状が再発する場合は、薬を使わずに定期的な耳洗浄を行います。
人間と犬猫とは解剖学的に耳の構造が違います。人間の耳は横に付いているので、入口から鼓膜までがストレートです。しかし、犬猫は耳が上に付いているため、滑り台のようにL字型になっており、外耳道も長くなっています。そのため人間と違い、炎症の部位が広くなることもあります。また耳道は管状になっているため、炎症を起こすことで狭くなり、通気性が悪くなったり耳垢が外に出づらくなったりと、さらに外耳炎の治りが遅くなります。さらに犬種や猫種によっては、耳道が狭い、垂れ耳、耳周りの毛が多い場合など、炎症を悪化させやすいことがあるので注意して検査・治療を行っています。
検査で耳の中を覗く際、これまでは「手持ち耳鏡」という機器が使われていました。しかし、前述のように犬や猫は耳道がL字型なので、それでは奥の方が見られません。
そこで当院では、「オトスコープ(耳の内視鏡)」という機器を導入しています。
オトスコープには細い管の先にライトと広角レンズのついたカメラが搭載されており、狭い耳の中も奥まで広く覗くことができます。手持ち耳鏡を使った検査で耳の中に腫瘍があると言われて転院してきた子が、オトスコープで検査したらただの汚れだったということもあります。逆に、入り口はきれいでも、奥が汚れていたりただれていたりなど、外耳炎の症状を見つけることも出来ます。
また、オトスコープを使用しながら耳洗浄を行うことも可能です。耳の中に洗浄液を入れて洗うだけの処置とは異なり、耳道の奥を確認しながら丁寧に汚れを取り除くことが出来ます。さらに当院では、カテーテルを利用するなど独自の洗浄方法も行っているという強みがあります。鉗子を使い、耳垢や異物を取り除くことにも使えます。
つまり、オトスコープは検査機器であり、洗浄、治療のツールでもあるのです。種類も様々で、当院には手術用の精度の高いものも揃えています。
私自身、皮膚と耳の疾患の診断と治療が好きだからですね。
また当院では、前院長の代から皮膚・耳の診療に注力しており、現在も皮膚・耳を見られる獣医師が私以外に複数名おります。専門性を突き詰めることで、診断にしろ治療にしろ、使える引き出し(選択肢)の数が増えるのです。
獣医師に引き出しの数が少ないと、まだ内科的に直せる状況でも「病巣を切除しましょう」という提案をされてしまうこともあります。耳の病気でも全耳道切除という手術がありますが、他院でそのように勧められて、ショックを受けてネットで当院を見つけてくださる飼い主さんもいらっしゃいます。当院では、8割以上のケースで耳を切らずに治療ができます。オトスコープなどを用いて丁寧に診察、洗浄、治療を行い、豊富な手段で症状をコントロールしながら外耳炎と共に生きることを大事にしています。
また、その豊富な引き出しを、きちんと飼い主さんに提示することも大切です。例えば「この薬が効かなかったら、今度はこういう治療をしよう」などと医療者が考えていても、それを飼い主さんに伝えていないと、最初の治療がうまくいかなかった段階で「やっぱりこの病院でも治らないのか」と他の病院に行ってしまうこともあり得ます。
当院にお越しになったその日までのストーリーを丁寧に伺い、こちらは診察のその場のことだけでなく、その先の治療の見通しも共有することを心がけています。
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血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
ペットと長く楽しく過ごせる治療を選択するために、高度な機器と技術で消化器型リンパ腫を診断します。
ペットにも起こる、腎不全と心腎関連症候群。細やかに状態を把握し、適切な治療を行う必要があります。