頼れる獣医が教える治療法 vol.036
若い子は膝蓋骨脱臼の症例が圧倒的に多く、高齢になると十字靭帯断裂もよくみられます。「散歩中にスキップのような歩き方をする」「お座りをするときの体勢が変わった」などの変化は飼い主さんが気づきやすい症状です。健康診断やフィラリア予防などで来院された際に、膝を触ってはじめて異常に気づくことも多くあります。骨折などとは異なり、徐々に進行して症状が現れるケースが多いことが特徴です。歩き方や座り方の異常だけでは膝関節以外の原因も考えられるので、股関節、膝、足首と、どこが悪いのかを一つひとつ確認して診断を行います。
犬種を問わず発症しますが、小型犬では特に多く半分以上の子が罹患しています。症状が出ていない子であっても、膝を触るとゆるんでいる子が多いですね。膝蓋骨と呼ばれる膝のお皿部分がはずれることで、筋肉や靭帯がひっぱられ、違和感や痛みが生じます。進行すると、痛みで歩けなくなるだけでなく骨も曲がります。小型犬では内側にはずれていることが多いですが、トイプードルでは内側と外側両方にはずれてしまうケースが多いようです。内側に対する治療だけを行った場合は再手術になる可能性もありますので、注意が必要です。
症状の進行度合いにより4段階のグレードに分けられ、グレードとその子自身の痛みの現れ方や年齢を加味し、飼い主さんと一緒に治療内容を検討します。「この状態になったら治療を開始しましょう」といったアドバイスもしています。
鎮痛剤やレーザー治療により症状を緩和させる方法と外科手術の2種類がありますが、完治をさせるためには手術が必要です。グレード3が手術の指標となりますが、当院ではグレード2であっても若い子でびっこをひいていれば手術の提案をしますし、グレード3であっても高齢で症状が出ていなければ手術は行いません。特に若い子では、膝蓋骨脱臼が原因で後々に十字靭帯を傷めてしまう可能性があるため、飼い主さんとよく話し合い予防的な手術を行う等の治療方法を決定しています。
手術をした場合、3日程度入院してから帰宅します。激しい運動を控えれば、すぐにお散歩に行けます。術後翌日から歩き回る子もいますし、「足をついたら痛いはず」と足を使わないようにする慎重な子もいます。性格や膝の状態にあわせ、ケアの方法をお伝えしています。
横浜山手犬猫医療センター
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