貞廣 優子院長 さだひろ動物病院 | ドクターズインタビュー

メニュー

頼れる獣医が教える治療法 vol.033

犬の会陰ヘルニア。症状と治療方法
軟部外科
犬の会陰ヘルニア。症状と治療方法
さだひろ動物病院
  • 貞廣 優子院長
58,631 views
新松戸駅から徒歩10分、ゆりのき通りにある「さだひろ動物病院」は、2019年にオープンした病院だ。ペットオーナーの声を取り入れて作られた院内は、木のぬくもりにあふれ、女性院長らしい温かさが感じられる。「どうしたら病気の子たちが幸せに暮らせるかを考え、治療の幅を広げてきた」と話す貞廣優子院長は心臓病、腫瘍、外科と幅広い専門分野を持つ。未去勢のイヌでよく見られる会陰ヘルニアは、ただの便秘ではなく進行性の病気であり、外科手術が必要となる。複数の手術方法が確立されており、状態に合わせた手術を行うことが再発予防や生活の質を上げることにつながる。貞廣先生に、会陰ヘルニアの症状や手術について話を伺った。(取材日 2019年12月19日)

長期の便秘は会陰ヘルニアの可能性も。早期の手術で再発は抑えられる

―会陰ヘルニアとはどのような病気でしょうか?

肛門周囲(会陰部)の筋肉が萎縮して隙間ができ、その隙間に直腸や膀胱、前立腺などの臓器が飛び出してしまう病気です。中高齢の未去勢のオス犬に多く、ポメラニアンやダックス、コーギーなどの小型犬で好発します。
飛び出す部位により症状はさまざまです。膀胱が飛び出すケースは排尿障害から腎不全を引き起こして命に関わることもあり、早めの処置が必要です。大腸や前立腺が飛び出すと、それぞれ大腸炎や前立腺炎を引き起こして全身性の発熱につながるので、こちらも早期の治療が望ましいですね。直腸が飛び出すと便秘や下痢が起こり、進行するとお尻が膨らみ、しっぽや肛門の向きも変わってきます。緊急性は高くないですが、その子自身は便秘や下痢で苦しみますし、自然には治らないので、治療をおすすめします。

―どのような治療があるのでしょうか?

内科治療と外科手術があります。まず、どの部分が飛び出しているのか、機能が低下している臓器がないかを確認するために、触診や直腸検査、場合によりエコー検査を行います。
内科治療では、便の掻き出しや軟化剤を使い管理をしますが、あくまでも対症療法であり病気の進行を止めることはできません。進行すると直腸憩室と呼ばれる袋が腸に形成され、そこにさらに便が溜まるようになります。また直腸壁は2ミリと薄いので、壁が破れ身体中に菌がまわりショック死につながる恐れがあります。持病やご家族のご希望から内科治療を選択することもありますが、多くのケースでは内科治療を補助的に行いながら外科手術を検討します。

―どのような手術になるのでしょうか?

以前はヘルニア周囲の自己組織を使い隙間を埋める手術が主流でしたが、筋肉は萎縮や伸展をするため5割ほどの高い割合で再発していました。現在は「ポリプロピレンメッシュ」という人工メッシュを使いヘルニア部を整復する手術を行っており、早期のヘルニアであれば再発率を低く抑えることができます。
当院の手術では、メッシュを肛門括約筋の下にある浅結節靭帯と、ヒトではイスに座ったときに座面に接する骨である坐骨結節とを繋ぎ合わせてヘルニア部を塞ぎます。強靭な骨や靭帯と結ぶことで、再びヘルニア部が飛び出すのを防げるのです。ただし、肛門の下のほうが飛び出すほど進行している症例では、メッシュによる治療が困難になります。よって、なるべく進行する前に手術を行うことが大切なのです。
ヘルニア部を塞ぐ手術と合わせ、状況に応じて結腸固定や膀胱固定、去勢手術を行います。手術の時間は合わせて2時間から2時間半ほどです。

未去勢のイヌは特に注意。術後ケアは感染対策が重要

―会陰ヘルニアは去勢とも関係があるのでしょうか?

会陰ヘルニアはネコやメスのイヌでも起こる病気ですが、未去勢のオス犬での発症率が明らかに高く、病気の発生には男性ホルモンが関与していると考えられています。再発を防ぐため、未去勢の子では治療と合わせて去勢手術も行います。
慢性気管支炎による咳や吠え癖のある子は、お尻に力が入りやすい状態が続くため、発症率が高まります。また、筋肉を薄くさせるクッシング症など、ほかの疾患から会陰ヘルニアが誘発される場合もあります。
手術後は、ご飯を食べて正常なうんちが出るようになれば退院し、術後1週間ほどで抜糸します。術後は、術部から細菌感染を起こさないように、抗生剤を飲むだけでなく、カラーの装着やうんちをしたらシャワーで洗い流すなどのケアを行います。

―入院室はガラス張りなのですね。院内のこだわりはありますか?

「ご飯をしっかりと食べているか」「苦しそうな呼吸をしていないか」など、中の様子をすぐに見られるようにガラス張りにしました。診察室や処置室からも犬と猫それぞれの入院室が見える作りになっています。また受付から処置室までを大きな1つの部屋として使い、元気な子は自由に歩けるようにしています。
待合室や看板は、実はご近所をお散歩中の方にご意見を伺いました。「病気で暗い気持ちになっているから明るい感じが良い」「子どもと一緒に来たときにも危なくない作りが良い」などの声をいただき、それを設計に反映させています。

―貞廣先生のご専門について教えて下さい。

心臓病、腫瘍科、外科の順番に修行を積んでいます。大学では心臓病を専門としていましたが、勤務医時代にリンパ腫の子を亡くしたことがきっかけで腫瘍の勉強をはじめ、腫瘍科認定医2種を取得しました。「より正しい知識があったら」「より良い治療を選択していたら」という後悔をしないために、幅広い病気を診られるように修練を続けています。また予防医療では、その子の生活スタイルに合わせたワクチンプログラムを提案しています。

ドクターからのメッセージ
  • 貞廣 優子院長

どんなに優れた検査よりも飼い主さんが最初に異常に気づきます。「いつもと様子が違う」「食欲が落ちてきた気がする」など異変があればご来院ください。やみくもに検査をすべて行うのではなく、目的や方法、費用をお伝えして、飼い主さんと一緒になにをするか決めていきます。ワンちゃんネコちゃんが犬らしく猫らしく暮らせるように治療をご提案させていただきますので、お困りのことがありましたらご相談ください。

犬の会陰ヘルニア。症状と治療方法
犬の会陰ヘルニア。症状と治療方法

さだひろ動物病院 地図を見る

住所
千葉県松戸市新松戸3丁目289
電話番号
047-700-5118
最寄駅
新松戸駅
アクセス
JR常磐線「新松戸駅」より徒歩10分
駐車場
あり
診察動物
イヌ ネコ
診察領域
歯と口腔系疾患 眼科系疾患 皮膚系疾患 脳・神経系疾患 循環器系疾患 呼吸器系疾患 消化器系疾患 肝・胆・すい臓系疾患 腎・泌尿器系疾患 内分泌代謝系疾患 血液・免疫系疾患 筋肉系疾患 整形外科系疾患 耳系疾患 生殖器系疾患 感染症系疾患 寄生虫 腫瘍・がん 中毒 軟部外科