しゅう動物病院 法月 周(のりづき しゅう) 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.073

中医学を学んだ獣医師が院内で調合。慢性疾患の「漢方生薬治療」
東洋医学
中医学を学んだ獣医師が院内で調合。慢性疾患の「漢方生薬治療」
しゅう動物病院
  • 法月 周(のりづき しゅう) 院長
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静岡市の中心地に位置する「しゅう動物病院」は、漢方生薬治療を得意とする動物病院だ。法月周(のりづき しゅう)院長は中国の伝統医学である「中医学」に基づき、院内で調合した生薬(漢方の原材料)を用いて犬・猫の慢性疾患を治療している。日本で中医学を取り入れる動物病院は数少ないが、その中でも漢方生薬を扱える獣医師は稀だ。同院では診療実績を知って遠方から訪れる飼い主が多く、また都市部の動物病院での出張診療や、紹介によるオンライン診療で全国からの相談にも応じている。漢方製剤や漢方サプリメントとは異なる「漢方生薬治療」について、法月院長にお話を伺った。(取材日 2024年1月24日)

漢方生薬で「体質」と「症状」の両方を改善し、病気を根本から治療する

― 漢方生薬治療とは、どのような治療なのでしょうか?

漢方の原料である「生薬」を用いた治療です。病気の根底にある「体質の改善」と病気による「症状の治療」、それらを同時に行うことで、病気を根本から治します。例えば皮膚病の場合は、赤みやかゆみといった症状の消失はもちろん、体質改善によって肌の調子が整うことで毛艶が良くなり、毛量も増加。さらに併発している下痢・嘔吐、食欲不振の改善など、他の症状への波及効果がみられることも、漢方生薬治療ならではですね。
また一般的な漢方のイメージとは異なり、効果が出るまでの早さも特長です。病気の種類や病歴にもよりますが、腎臓の検査数値は早ければ約2週間で改善する患者様もいます。
実際の診療では、四診(ししん)と呼ばれる診察方法で全身状態を詳しく確認し、中医学による診断と症状に基づいて漢方生薬を選定、院内で調合しています。

― 貴院の特長についてお聞かせください。

中医学・漢方薬を“取り入れている”だけでなく、漢方を生薬から扱える点が当院ならではの特長です。漢方生薬の調合には臨床現場での経験が非常に重要で、国際中医師免許があるだけでは漢方生薬を用いて病気を治すことができません。私は幸運にも50年を超える豊かな経験を持つ中医師から直に学ぶことができ、5頭の飼い猫の治療を通してその効果を体感しました。
漢方生薬治療は2021年から開始しました。約3年かけて治療法を確立し、現在は診療のほぼ100%が漢方生薬治療です。内科疾患全般と一部の外科疾患を治療対象としており、中でも皮膚病、心臓病、慢性腎臓病の症例が豊富です。
また当院では、治療前に必ず血液検査などの各種検査を実施します。これは治療の評価を臨床症状の改善だけでなく、検査データを基に客観的に行うため。その上で良好な成績を収めているとお伝えできることも、当院の特長といえますね。

慢性疾患に対する症例実績が豊富。皮膚病、心臓病、腎臓病の漢方生薬治療

― まず、相談が多いという皮膚病の治療について詳しく教えてください。

代表的な皮膚病である細菌やマラセチア(カビ)による皮膚炎・外耳炎は、皮膚症状を起こしやすい体質、赤みの症状、かゆみの症状の、3つそれぞれに対して治療を行います。
細菌やカビの繁殖の原因は、体内の湿気です。中医学では体内に湿気が生じ、引き起こされる様々な症状を「湿熱症」と診断し、漢方生薬で体内の湿気を抑えて、細菌やカビが繁殖しづらい環境を作ります。これが1つ目の体質改善です。
2つ目は赤みの治療。中医学では「血熱症」と診断し、血液に熱がこもった状態を改善する漢方生薬を用います。

3つ目のかゆみは、肝臓に起因して生じる症状です。中医学の中でも私が治療の基盤としている「伝統中医学」では、身体の不調は「陰陽五行(木・火・土・金・水)」のバランスが崩れることで起こると考えます。詳しい説明は省略しますが、陰陽五行においてかゆみは「肝」と関係が深い「木」の気が体内に滞留することで生じるため、木の気を減らす漢方生薬で治療します。
症状の消失はもちろん、その原因を解消する漢方生薬治療は、再発を繰り返す皮膚炎や中高齢以降で突然発症した皮膚病に対して非常に有効です。この点が、対症療法が中心となる西洋治療との、大きな違いといえますね。

― 続いて、心臓病の治療についてお聞かせください。

心臓病でご相談が多いのは、僧帽弁閉鎖不全症です。この治療では(1)循環改善漢方(2)心房内貯留血液除去漢方(3)肺水腫・胸水除去漢方を内服します。
まずは血液循環の改善から治療を開始。理想的な治療開始時期はACVIM MMVD stageB(A~Dまである僧帽弁閉鎖不全症治療段階の2つ目)の段階です。(1)の服用によって心臓病に起因する咳も止まります。
次は心臓に溜まる血液の除去です。血液の貯留は病気の進行に伴う症状ですが、(1)に(2)を加えて血液の排出を促すことで、心臓機能が改善します。
さらに時間が経過すると胸腔内に液体が溜まるので、それを除去するために(2)に(3)を加えます。西洋治療では利尿剤を投与しますが、この薬により腎臓に負担がかかることもあり、継続が難しく、いずれは治療に限界が訪れます。腎臓機能を悪化させずに続けられる点は、この治療の大きなメリットです。
治療した飼い主様は、「咳がでなくなった。」とおっしゃいます。患者様の活動性も向上します。

― 腎臓病の治療についてはいかがでしょうか?

慢性腎臓病で用いる漢方生薬は、腎臓の検査数値を下げる「デトックス漢方」、尿蛋白が漏れ出すことを防ぐ「尿蛋白漏出抑制漢方」、体質改善のための「陰虚漢方」または「陽虚漢方」です。
中医学では腎臓病を「腎陰虚」と「腎陽虚」の2つの病気として捉えます。「陰虚」と「陽虚」は体質の分類のことで、それぞれに適した治療が欠かせません。
漢方生薬治療では、診察で陰虚か陽虚かの診断が可能です。西洋治療では“経過観察”とされるIRIS stage1(1~4まである慢性腎臓病治療段階の1つ目)の早期から治療を始めた場合、病気が進行する前に体質を正常な状態に戻すことができます。また、実際に漢方生薬治療を行っている患者様は、病気の進行がゆっくりな印象があります。

ドクターからのメッセージ
  • 法月 周(のりづき しゅう) 院長

飼い主様にご了承いただいて、診療実績や飼い主様のご感想、治療の仕組みを、ホームページとSNSで公開しています。慢性疾患でお悩みの飼い主様は、ぜひご覧ください。
漢方生薬内服治療は早めがより効果的です。皮膚病なら、痒み止めなどをずっと内服する前、僧帽弁閉鎖不全症なら、ACVIM MMVD stageBより前の段階、腎臓病ならIRIS stage2より前の段階、貧血はHCTが20%台の時などです。免疫疾患に関しては、通常の免疫抑制剤が効いていないと思われる状態で、投薬期間が長くなる前です。これより後で改善することもありますが、早めの治療がより良い結果をもたらしてくれます。きっとお役に立てることがあります。

中医学を学んだ獣医師が院内で調合。慢性疾患の「漢方生薬治療」
中医学を学んだ獣医師が院内で調合。慢性疾患の「漢方生薬治療」

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住所
静岡県静岡市葵区西草深町22-20
電話番号
054-248-6167
駐車場
あり
診察動物
イヌ ネコ ウサギ ハムスター
診察領域
歯と口腔系疾患 眼科系疾患 皮膚系疾患 脳・神経系疾患 循環器系疾患 呼吸器系疾患 消化器系疾患 肝・胆・すい臓系疾患 腎・泌尿器系疾患 内分泌代謝系疾患 血液・免疫系疾患 筋肉系疾患 整形外科系疾患 耳系疾患 生殖器系疾患 感染症系疾患 寄生虫 腫瘍・がん 中毒 心の病気 東洋医学 けが・その他 軟部外科