頼れる獣医が教える治療法 vol.025
はい、整形外科を専門的に学んでいます。神奈川の動物病院で勤務医として5年間、外科をメインに担当していました。その後に「難しい症例でも自分で対応できるようになりたい」と、母校であり二次診療専門である大学病院に戻り、研修医として4年間さまざまな経験を積みました。
整形外科では、まったく同じ症例や治療方法はありません。術後のレントゲン写真を見るだけで「こういう子だったな」と思い出せるほど異なっています。同じ前足の骨折であっても、折れている箇所や折れ方、年齢に合わせて最適な治療を検討しています。まだまだ学び足りていませんが、大学病院での経験を通じて提案できる治療のバリエーションと技術が身につきました。
痛みの少ない治療を心がけています。整形外科の手術は、飼い主様の見えないところで行うので不安を抱えていることでしょう。だからこそ、飼い主様の信頼を裏切らないためにも疼痛管理は大切なのです。しっかりと鎮痛をしてから手術をすることで、痛みが少なく術後の回復も早い治療が可能になります。たとえば後ろ足の手術では、硬膜外鎮痛法により痛みを完全になくしてから手術を開始しています。人間の無痛分娩のようなイメージですね。
また、すぐに検査をするのではなく触診を大切にしています。まず、触診で「痛みの場所」「痛みの強度」を表情の変化を見ながら判断します。その後、客観的な評価を得るためにレントゲンやエコーを用います。「わかること」を積み重ねて手術を行うことが、犬猫自身の負担軽減に繋がります。
金属のプレートやピンで骨を直接固定する内固定と、患部の外側から固定する外固定に大きく分けられます。どちらの治療方法が良いかはその子により異なりますが、侵襲の少ない手術として創外固定も積極的に取り入れています。簡単に言うと、皮膚の外側からピンを打ち患部を固定する手術です。傷口が小さく負担が少ないことが特徴ですが、デメリットはピンを抜くまでエリザベスカラーの装着が必要になることです。外固定と内固定では、術後のケアの仕方や手術費用も異なりますので、それぞれのメリット・デメリットをお伝えして飼い主様に選択をしてもらいます。
骨は条件さえ揃えば治療をしなくても自然にくっつく組織ですが、それを手助けするのが僕たちの役目です。ただし、骨がくっついただけで「動かしにくい」「曲がっている」という状態では、本当の意味で治ったとは言えません。当たり前のことですが「正しく治しているのか」を常に自問自答しながら治療を行っています。
横浜青葉どうぶつ病院
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