頼れる獣医が教える治療法 vol.023
飼い主様は今後どのようにしていきたいですか?私たち獣医師は、「飼い主様がどうしていきたいか」の答えに行きつくまでの情報を提供することが仕事です。そのためにその子の状態を調べ、病気の今後や必要なもの、必要ない事をお伝えし、その子の生活パターンや性格を加味して、一緒に病気と向き合う方法を作り上げていきます。
心臓病は命に関わる病気ですが、ケージや酸素室の中でずっと絶対安静にしなければならない病気ではありません。亡くなるまでをどのように過ごすかもその期間もその子本人やご家族によって考え方は様々です。「悔いなく過ごす」ために、飼い主様にはよく考えて答えを出してほしいと思います。出した答えに間違いや正解はありませんし、考え方が途中で変わっても良いのです。その子のことを一番良く知っていて一番想っているご家族が、その子のために考えた方針に間違いなんてありません。病気の状態が変われば考え方も変わります。毎回一緒に悩みましょう。心臓病に関する治療方法や生活の仕方など、様々な情報提供をできるように日々アップデートをすることを心がけています。不安なことや解決したい悩みなど、なんでも聞いてください。
大学生の時に飼いはじめたウェスティが先天的な心臓病を持っていて、少し走ると突然発作で倒れてしまう状態でした。当時はまだ外科実習もしたことがない学生だったのですが、大学の先生に手術の立ち会いをさせてもらい、その時から循環器の分野をしっかりと勉強するようになりましたね。散歩が大好きな子だったので、手術後はあまり食事や運動の制限をせずに生活をさせていました。「楽しく元気に過ごせるなら多少寿命が短くなっても良い」と考え、好きなことを制限してつまらない生活をさせたくなかったのです。幸いなことに長生きをしてくれましたが、もし短命になってしまっても「後悔しない」と決めていました。飼い主様によってもその子の性格によっても、なにが良いかは変わってきます。悔いなく過ごせるように、私が持っている情報をなんでも提供したいと思います。
「他の病院で心雑音があると言われた」「治療をしているが症状が改善しない」といった相談が多いですね。心雑音がみられるだけの初期段階では、治療を開始せず経過観察を行うこともあります。現状と予後を飼い主様と共有をしたうえで、投薬の効果や費用を踏まえ治療の開始時期を話し合います。肺水腫が起きている重度の心臓病では、咳に関するご相談も多いですね。小型犬は気管が弱いため、特にその傾向が強くあります。
「末期で余命を伝えられた」「酸素室の購入を勧められた」など深刻な悩みを抱えている飼い主様も多くいらっしゃいます。どんなに重症であってもできる治療はありますので、疑問や不安なことはなんでも聞いてください。
上野の森どうぶつ病院
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膿皮症の治療は抗菌薬だけではない。食事やシャンプー、インターフェロンによる治療も重要です。
僧帽弁閉鎖不全症は小型犬の85%がなる病気。超音波検査で正確に診断することが重要です。
MRI検査、脳波検査による速やかな診断。てんかんは早期の診断、適切な治療開始の時期決定が大切です。