頼れる獣医が教える治療法 vol.057
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の弁がうまく閉まらずに血液が逆流し、全身に送られる血液量が減少して、うっ滞することでさまざまな症状があらわれる病気です。キャバリアやチワワ、トイプードルなどの中高齢の小型犬で多くみられます。「咳」や「疲れやすい」といった症状がでていない無症状の時期に、病院で心雑音が聴取されて見つかるケースが多数あります。進行すると、肺水腫により命を落とす危険があるため、適切なタイミングで治療を開始し、定期的に経過観察を行うことが重要です。
病気の進行度はA、B1、B2、C、Dのステージに分かれ、症状や検査によって分類します。ステージB2までは無症状で、CとDは肺水腫を起こしたことがある子です。治療の目的は肺水腫にさせないことと、進行を遅らせること。B2の段階から投薬治療を開始します。主に投薬で治療を行いますが、手術により完治が望める子もいます。
肥大型心筋症や拘束型心筋症が多くみられます。どちらも心臓の筋肉が硬くなり、心臓が広がりにくくなることで、全身に送る血液量が減り、うっ滞する病気です。犬の弁膜症と異なるのは、若齢でも発症するという点と、心雑音がなくても心筋症である、逆に心雑音があっても病気ではないケースもあるという点です。また、死亡率が高い動脈血栓塞栓症を併発しやすいことも特徴です。
猫も5段階のステージに分類され、多くの場合はステージB2から血栓予防を開始しますが、左心室の出口が閉塞する閉塞性肥大型心筋症の場合は、B1からβブロッカーによる治療を開始することがあります。心筋症は進行すると肺水腫や胸水により命を落とす危険があり、また血栓症を防ぐためにも適切な時期から治療を開始することが重要です。
安静時の呼吸数をチェックしてください。犬でも猫でも、呼吸数が1分間で40回以上が続く場合は肺水腫の可能性があります。肺水腫はおぼれているのと同じ状態のためすぐに受診することを勧めます。
日頃から呼吸の仕方や回数を見ていると、呼吸に異常があった際に「なにかがおかしい」とすぐに気づくことができます。ステージCの子はもちろんですが、無症状のうちから確認して正常な呼吸の状態を知っておくことが大事です。
荻窪桃井どうぶつ病院/杉並動物循環器クリニック
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