循環器認定医が教える犬と猫の心臓病
心臓病の咳や散歩に対する不安は解消できる。QOLを維持しながら自宅で生活する治療を提案します。
- 諌山 紀子 副院長
内村先生:子どもの頃に交通事故で亡くなっている猫ちゃんを見て、「自分が獣医だったら何かしてあげられるかもしれない」と思ったのがきっかけです。 高校生になって進路を考えていたときに迷わずに、獣医学部に進むことを決めていました。
諌山先生:私は小さい頃から動物が好きで、親によるとミミズやカエル、トカゲなど、いろいろな動物を飼っていたようです。 そして動物と触れ合うことができる農業高校に入学し、そのまま動物関係の道を進んできました。
内村先生:僕は、特定の分野を極めるよりもオールマイティーに対応できる獣医師をめざしていました。 例えば大型犬は診られない、この病気は診られないとお断りするのではなく、自分では診ることができない症例でもしっかりと判断して、適切な病院をご紹介できるようになりたかったんです。その思いから大学卒業後は全科研修医として麻布大学に勤め、さまざまな症例を診てきました。
諌山先生:私は循環器科を専門にしているのですが、きっかけは大学生の頃に飼い始めた犬です。
生まれつき心臓病だったので寿命は短いものと覚悟していましたが、ある時参加した学会で、動物の心臓外科の先生が「治せます」とおっしゃっていたんです。それなら私が治せるようになろうと思い、循環器科のスペシャリストになることを決意しました。
そして海外留学を経て東京女子医科大学心臓外科で博士号を取り、日本獣医循環器学会認定医を取得して現在に至ります。
内村先生:自分のやりたい医療ができなかったのが一番大きな理由です。動物の場合は、飼い主さんのご意向や動物病院の方針によって治療法が変わってきます。
「本当はこういう風にしてあげた方がいいのに」という思いがあっても、やってあげられないことが歯がゆかったんです。
あとは休診日ですね。自分自身も病院を探すときに休診日を調べるのが嫌でしたし、ペットの体調が優れないときに「明日は休みなので診られません」と伝えられると、飼い主さんは心細くなってしまいます。
その不安を取り除いてあげたいという思いから、当院は休診日なしで診療しています。
諌山先生:開業すれば長期的に診ることができるという点ですね。以前はいろいろな病院を回っていたのですが、それでは飼い主さんと一緒に治療方針を立てても、具合が悪かった時に対応できなかったり、病院が変わる際には「他の方に診てもらって下さい」というお話をしなくてはいけません。そのことが非常に心苦しかったんです。
内村先生:上野公園が近いことが大きいですね。当院のコンセプトは「おさんぽついでに行ける動物病院」なのですが、公園には人も集まってきますし、僕達が犬の散歩をしていれば、そこで出会った人に「こんにちは、様子はどうですか」というお話もできます。
住まいも近いので、診療時間外でも留守番電話にメッセージを入れていただければ夜間救急にも対応できます。何かあればいつでも相談できる、敷居の低い病院にしたいという思いがありました。
内村先生:獣医師として自分がやりたいことは、できるだけやってみようと思っています。僕達だけではなくここで働いた人も同じ気持ちになって、その思いをいつか別の病院で生かしてくれたら嬉しいです。
諌山先生:自分達もペットの飼い主なので、飼い主さん目線で不便を感じる点はできるだけ取り除きたかったんです。そうすれば自然に人も集まって、輪が広がるだろうと考えました。
内村先生:あとは、なるべく距離の近い獣医師でありたいですね。獣医師との距離を感じてしまうと飼い主さんも話しづらいと思うので、できる限り送り迎えや見送りもするようにしています。飼い主さんから「先生が先生っぽくなくて良かった」というお言葉をいただいたときは本当に嬉しかったですね。
内村先生:理解しやすい説明です。獣医師にとっては当たり前でも一般の方にとってはそうではないことも多々ありますから、専門用語をなるべく避けて、わかりやすい言葉を使うようにしています。あとは治療方針を限定せず、複数の選択肢をご提示することですね。昼間はお薬をあげられないという方には注射を提案するなど、柔軟な対応を心がけています。
諌山先生:そのためには、飼い主さんとじっくり話し合える環境も大切です。当院では、時間をかけてお話しできるように診察室を3室設けています。たとえ1人の獣医師が説明に時間をかけても他の飼い主さんをお待たせすることなくご案内できますし、話している飼い主さん側も「待ってる人がいるから早めに切り上げないと」という心理にならず、気持ちが落ち着くと思います。
内村先生:診察室が複数あれば急患にもすぐに対応できますし、怖がりな子は飼い主様と一緒に診察室で治療を受けていただくことも可能です。
内村先生:獣医師からの説明がうまく伝わっていないことが多いようで、治療中のペットが今どういう状態で、何の薬を使っているのかわからないというご相談が目立ちます。
見当違いの治療をされていることは少ないのですが、何か足りない部分があってセカンドオピニオンを求められる方が多いようです。
ペットが重い病気だとショックで説明が耳に入らない方もいらっしゃるので、病気を理解していただけるように、当院では診断結果の報告書をお渡ししています。
それを元の病院にお持ちいただいても結構ですし、当院に通われる方もいらっしゃいます。
話を聞きに来るだけでも構いませんので、心配なことがあれば遠慮なく相談していただきたいです。
諌山先生:報告書は、飼い主さんが治療に積極的に参加していただくためにも大切です。報告書を読みながらわからない単語について調べてみることで、病気に対する理解を深められると思います。
私の場合は心臓病に関するご相談が多いのですが、診断があっているのか、薬を飲む必要があるのか、薬が合っているのかといった内容が多いです。様々なケースがありますが、今の治療で問題ない場合は何かあった時にすぐ診察できるお近くの病院での継続治療をお勧めしています。ただ、わからないことや不安なことが出てきた場合はいつでも相談してくださいとお伝えしています。
内村先生:ペットホテルは、病気がある子を預かってもらえずお困りの方もいるので、お役に立てるかと思い併設しました。
トリミングサロンは、トリミングに来ていただいたときに僕達からもちょっとしたお話ができればと考えて併設しています。病院のハードルを下げるという意味合いが強いですね。
諌山先生:初回のトリミング時に必ず検診を行い、一通りのチェックをするので、その時に雑音や腫瘍が見つかったこともあります。
内村先生:トリミングサロンと動物病院が連携しているのは、飼い主さん、サロン、病院それぞれにメリットがあると思います。トリミングの際に皮膚や耳、歯の異常が見つかることが多いのですが、普通のサロンでは動物病院に行くべきか判断できないこともあります。
また、トリミングをしてきれいになった後だと、病院側も診断が難しいんです。一方、普通の診察では毛の根元まで全部診るのは難しいのですが、トリミングで乾かしているときに皮膚が露出して、その時に病気が見つかることもあります。そういったときにすぐに連携できるのは強みといえますね。飼い主さんとしても二度手間になりませんし、スムーズに治療を受けさせることができます。
内村先生:そうですね。月1回ペースでイベントを行っていて、これまでは歯のセミナー、心臓のセミナー、しつけ教室、手作りおやつ教室、動物のお医者さん体験などを開催しました。
今後予定しているトリマーさんによるお手入れ教室は、僕達がトリマーさんから話を聞いて「これは絶対に知りたい人がいるだろう」と思ったのが実施のきっかけです。独学ではなかなかうまくできないという飼い主さんも多いんですよね。
諌山先生:獣医師とは違い、トリマーさんは美容面に気を配ってくださるので、「ここの皮膚を治療するために毛を刈りたい」というときでもきれいに刈っていただけるんです。
トリマーさんからは我々も学ぶことが多いんですよ。
内村先生:動物病院を訪れる理由は、ペットのおやつをもらうだけでも構いません。遊びに来るような感覚で、どうぞ気兼ねなくお越しください。当院にいる大きい犬は元々保護犬で、保護当時のトラウマで人間不信だったのですが、皆さんが気軽に立ち寄ってくださるおかげで次第に人に慣れてきていて、僕達も助けられています。もちろんお電話でも構いませんので、困ったことがあれば何でも聞いていただきたいです。
諌山先生:心臓病を抱えているペットが本当に薬を飲むべきなのか、今どういう段階なのか、今後どういうことが予想されるかを知らない飼い主さんがたくさんいらっしゃいます。心臓病は怖い病気ですが、必ず薬を飲まなくてはいけないわけではありません。確かにステージが進んだ子は毎日薬を飲んだ方が長生きできますが、「毎日飲まないといけない」のではなく、「毎日飲んだ方が長く一緒にいられる」と考えてみてください。病気を理解できれば気持ちも変わり、積極的に治療に参加できると思います。循環器のスペシャリストとして的確に診断し、警戒すべきポイントと安心していいポイントをしっかりお伝えしますので、ご自身の中だけで悩まず、不安な点があればぜひご相談ください。
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長年信頼を寄せられている皮膚科系疾患の治療に加え、ペットのエイジングケアにも力を入れています。
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