頼れる獣医が教える治療法 vol.008
普段の診療においては、吐いたり下痢をしたりといった主訴で来院される方が多いです。症状として嘔吐、下痢があらわれていますが、その原因は多岐にわたります。単なる急性胃腸炎から、異物の閉塞や機能性イレウス、膵炎、腫瘍、免疫疾患、内分泌、血液疾患などさまざまな原因があります。また吐いたり下痢をしていても元気にみえる子もいれば、痩せていたり、腹水や貧血を伴っているケースもあります。
ケースによりますが重症の場合には、正確な血液検査と画像診断は必須になります。血液検査と画像診断をすることで多数ある候補の病気から鑑別診断を狭めていき、なおかつ基礎疾患の存在を確認します。内科疾患では根底に基礎疾患があり、その上でいくつもの症状がでてくるケースがしばしばあるので、基礎疾患を確認することは非常に大切です。例えば、肝臓や腎臓の数値が悪いというだけで肝不全、腎不全と決めつけると大きく病気を見誤る可能性があります。消化器疾患では、検査結果から確定診断に進むために生検が必要になることが多いです。
超音波診断を行いながら細い針で細胞を採取することや、内視鏡を用いて腸粘膜を採取することもあります。患部の組織の一部を切り取って病理診断を行うことを生検と言います。
ケースによっては、開腹して直接患部を切除する切除生検を選択することもあります。
血液検査と超音波検査などの画像診断で異常所見が見つかった場合、どのような生検が適切かを飼い主様と相談しながら判断をします。
免疫介在性疾患を疑う炎症性腸症・リンパ型拡張症・消化管型リンパ腫などの腫瘍が疑われる場合です。口腔からだけでなく大腸側からアプローチすることもあります。
内視鏡の診断によってその後の治療方法・予後が大きく変わるため、必須の検査であると思います。
また内視鏡には生検を目的とした使用以外にも、異物の摘出を目的として使用する場合もあります。
若齢期に多い異物の誤飲で、オモチャや固いおやつなどが食道~十二指腸付近に詰まってしまった場合に内視鏡と異物摘出用の鉗子で対応可能な場合があります。特に食道内に詰まってしまった場合は内視鏡が有用です。
彩の森動物病院
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