頼れる獣医が教える治療法 vol.006
分かりやすく言うと、雌うさぎの子宮にガン、つまり腫瘍ができる病気です。犬猫より圧倒的にうさぎに多い病気です。年齢とともに発症率が増加し、4歳を超えたメスのうさぎの子宮癌の発生率は50%以上と異常に高いものです。ただし、経験上、2歳のうさぎでも病理検査の結果で子宮腺癌と診断されたケースもあり、まだ若いから大丈夫と過信するのは禁物です。
避妊していないうさぎは高齢になると子宮に異常が出やすくなります。レントゲン検査などで子宮の影が確認されれば、子宮疾患の疑いありということになります。この段階ではまだ子宮腺癌とは確定できませんが、治療は、卵巣と子宮の摘出を前提とした手術を行うことになります。癌の病巣のみを切除するわけではありません。診断は、摘出した組織の病理検査の結果で、はじめて子宮腺癌と確定します。
早ければ手術翌日に退院となりますが、手術前の状態や年齢によっては1週間程度入院することもあります。1~2週間後に抜糸をして、それで一旦治療は終了となります。
卵巣と子宮の摘出手術後の病理検査の結果、子宮腺癌でないとなれば、再発や転移を心配することはないでしょう。ただし、癌であった場合は注意が必要です。再発の可能性の有無は、ある程度病理検査で判断できます。手術で病巣が取り切れた場合は治癒の可能性がありますが、その場合でも定期的に再発のチェックを行うことになります。術後1か月、3か月、半年とレントゲン検査を行い、半年たって何もなければ、人間でいう5年生存率を越えたという判断になります。
うさぎの全身状態が悪ければ、手術自体ができない場合もあり、高齢だと手術に耐えられないと判断して行わない場合もあります。悪性度が高いものは転移しやすく、手術後に転移が確認されるケースもあります。癌細胞の転移が見られた場合は根治する事は困難です。
飼い主さんが一番気づきやすい症状としては、血尿、あるいは陰部からの出血です。こうした症状を見つけて来院される方もいますが、子宮腺癌だから必ず血尿が出るかといえばそうでもなく、初期段階では血尿が出ないケースもあります。
多いのは、病院で見つかるケースです。健診時はもちろん、お腹の調子が悪いなどたまたま別の不調を訴えて来院した際に見つかることもあります。そのため、病気の発見には、定期的な健診が不可欠です。特に、子宮疾患の場合はレントゲンを定期的に撮って確認するのが一番有効です。
ほかに、乳腺の張りなどの症状があればホルモン異常が疑われます。病気によってうさぎの体型が変わることもあるので、日頃からうさぎの様子を観察し、外見の変化などもよくチェックしておいてください。
膀胱炎と子宮腺癌は、症状としてどちらも血尿が出る事があるのですが、膀胱炎の出方とは少し違います。膀胱炎の場合は血だけが出るということはなく、必ず尿と混じって出てきます。血尿というと膀胱炎と思いがちですが、4~5歳以降の雌うさぎであれば腫瘍になっていくケースが増えるので、子宮疾患の可能性も十分に考えられます。
どちらかわからないケースの場合は、両方の可能性を考えて対処します。膀胱炎治療をしつつ、子宮は手術して治療すればよいので、どちらがどうというのはあまり気にしなくてもよいでしょう。
子宮腺癌はじめ、子宮疾患は飼い主側で予防することはできません。子宮腺癌にならないための手段は、避妊手術のみです。つまり、子宮と卵巣を手術で取ってしまうことです。若いうちに避妊手術をしていれば、子宮腺癌になることはありません。
最近は、加齢に伴って子宮疾患が増えることを知っている飼い主さんも増え、安心のためにあらかじめ避妊手術をされる方も多くなりました。できれば、半年~1歳までの間に避妊手術をお受けいただくようおすすめします。
花咲く動物病院
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