救える命のために手を尽くす、供血犬のいる動物病院
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
- クレア動物病院 大阪府大阪市天王寺区
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- 田中 誠悟 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.078
目次
私は獣医師免許取得後、愛知県内の心疾患診療が得意な動物病院で修行を積みました。そこでは腎臓の症例も多数扱っていたので、心臓だけでなく腎臓治療にも興味を持ちました。紹介があれば休日でも訪問して腎臓ケアのイロハを学び、現在は日本獣医循環器学会と日本獣医腎泌尿器学会の認定医を取得しています。
腎不全とは、腎臓が持つ血液中の老廃物を濾す機能が何らかの原因で低下し、本来なら尿として排出されるはずのミネラル分や老廃物が体内に蓄積している状態です。さらに急性の場合と慢性の場合があり、急性腎不全は、中毒症状を引き起こす物を食べてしまったり、腎結石が詰まって尿は作れているのに排尿できなかったりした場合に発症します。対して、慢性腎不全は加齢が主なリスク要因です。
また、腎不全は重症化しないと症状が現れないため、判断が難しいです。特に慢性腎不全は徐々に進行するため、血液検査で血中バイオマーカーを測定したら偶然数値の悪化が判明、すでに腎機能の7、8割が失われていたということも珍しくありません。一般的に、イヌよりもネコのほうが腎不全を起こしやすい傾向があると言われています。
慢性腎不全は、重症度に応じたステージ分類があります。推奨される治療方法もそれぞれ異なりますが、腎機能をこれ以上悪化させないことを主軸に方針を決定します。つまり、腎機能の回復を目指すのではなく、現時点で残されている腎機能をいかに維持するかが目標になるということです。
具体的な治療方法としては服薬が中心ですが、水分補給も大切なキーワードになります。なぜなら、慢性腎不全をおこすと腎臓がろ過した老廃物を濃縮できず、それを排出しようと正常時より尿量が増えてしまい、脱水を起こしやすくなるからです。そのため、ペットが十分な水分を摂れるよう、いつでも水を飲めるようにしたり食事をウェットフードに切り替えたりしていただくなど、飼い主様にアドバイスをします。それでも足りない場合には、補液を実施します。
慢性腎不全の治療は、長期的な通院と毎日のケアが必要です。またステージに基づき、食事管理や服薬なども病状の変化に合わせていかなければなりません。飼い主様やペットが無理なく治療を続けられるよう、負担の少ないスタイルをご一緒に考えていきます。
急性腎不全では、腎機能が低下した原因を早期に取り除くのが第一ですが、腎臓に回復不能なダメージを負っていなければ、その後の腎機能回復が見込めます。たとえば、タマネギやユリなどペットにとって毒物となるものを食べてしまったなら、血液透析を実施して毒素の排出を促すことで救命を図る方法があります。
ただし血液透析は、体内にポートという装置を留置することなどが必要で、ペットの体に負担がかかります。ペットの身近に危険なものを置かないよう、気を付けていただくことが何より大切です。
心腎関連症候群のことですね。心臓と腎臓は異なる役割を持つ別の臓器ですが、心臓が悪くなると腎臓に流れる血液量が低下し老廃物をろ過できなくなり、反対に腎臓が悪くなると今度は貧血や高血圧などで心臓に負荷をかけてしまいます。つまり心腎関連症候群は、心臓と腎臓が影響しあって双方に不具合が生じる症状と考えてください。
心腎関連症候群は、ヒトの診療の世界では比較的よく知られていますが、実はイヌやネコにも起こります。一般的に、イヌは心臓が悪くなってから腎臓が、ネコは腎臓が先に悪くなるケースが多いようですね。
イヌは僧帽弁閉鎖不全症という心臓病を抱えていることが多いのですが、そこから「肺水腫」という肺に体液が貯留している状態に至ることがあります。利尿剤を使用して溜まった水分の排出を促すこともありますが、腎機能に気を配り過度な負担をかけず、心腎関連症候群に陥らないように注意しなければなりません。ネコの心腎関連症候群の発症頻度は多くはないですが、症状が出づらく、特に心臓の疾患はレントゲン撮影や心エコーをしてようやく発見に至ることが多いです。
いずれにしても、心腎関連症候群の治療は心臓も腎臓も双方向に影響しあっていることを念頭に置いて、それぞれの臓器に負担をかけない治療方法をご提案する必要があります。
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血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
ペットと長く楽しく過ごせる治療を選択するために、高度な機器と技術で消化器型リンパ腫を診断します。
ペットにも起こる、腎不全と心腎関連症候群。細やかに状態を把握し、適切な治療を行う必要があります。