救える命のために手を尽くす、供血犬のいる動物病院
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
- クレア動物病院 大阪府大阪市天王寺区
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- 田中 誠悟 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.076
目次
⽝や猫には人間と違って虫歯はほぼなく、最も多いのは「⻭周病」です。最近の研究によると、3歳までの⽝と猫の約80%に何らかの⻭周病の症状があり、⼩型⽝に至っては1歳の時点で90%近くに⻭周病がみられるそうです。⻭周病は「⻭⾁炎」と「⻭周炎」の2つを合わせた病名で、⻭を⽀える組織の疾患です。⻭⾁炎は⻭⾁のみに炎症が認められる病態で、適切な処置によって完治できます。しかしさらに状態が悪化して⻭周炎になると、⻭を⽀える顎の⾻などにまでダメージが及び、⼀度破壊された組織は⻭垢や⻭⽯を除去しても再⽣することはありません。
その他に多い疾患は、破折(歯が欠ける、折れる)や、猫については歯が顎の骨に吸収されてしまう「吸収病巣」、口内に炎症を起こし痛む「⻭⾁⼝内炎」などですね。
どんなに綺麗な口腔でも、歯垢は数時間で形成されてしまいます。⻭垢は歯周病菌を含む多数の⼝腔内細菌とその代謝物の塊であり、便より多い数の菌が含まれるといわれています。歯垢が歯と歯肉の間にたまると炎症が起こり、歯周ポケットが形成され、歯周病が進行します。
歯垢が石灰化し歯石になってしまうと、ホームケアでは除去できません。犬は歯垢が歯石に変化するのが3~5日と人間より早く、歯周病になりやすいのです。さらに、⼩型⽝やフレンチブルドッグなどの⿐が短い⽝種は、顎が短いので⻭の隙間も狭く⻭並びも乱れがちになり、ほとんどの子が⻭周病を患っていると言っても過言ではありません。
歯周病菌が歯の周囲に炎症を引き起こし、そのまま放置されると、⼝腔周囲の組織が破壊されます。上顎の⾻が溶けると、⿐までつながる⽳が開いてひどいくしゃみや⿐汁が出たり、頬に膿瘍ができたり出血したりします。下顎で⻭周病が進⾏すると、下顎⾻が溶けて⾻折する場合もあります。
また、患部周辺の⾎管から⾎液中に⻭周病菌や毒素が侵⼊すると、全身で臓器障害・臓器不全を引き起こす恐れがあり、最悪の場合は命を落とすこともあります。⻭周病が原因となり⼆次的な疾患が⽣じることを⻭性病巣感染(しせいびょうそうかんせん)といい、人間ではアルツハイマー病や糖尿病が有名です。このように、⻭周病は⼝腔周囲の障害にとどまらず、全⾝にまで悪影響を起こす重篤な感染症になり得るのです。
歯ブラシでの歯磨きが効果的です。⻭とブラシの⾓度は45度、鉛筆の様に持って、⽑先が少ししなるぐらいの軽い⼒で磨きましょう。⻭の表⾯に加えて、⻭⾁溝の⻭垢を落とすようにブラシを滑らせるのがポイントです。慣れるまではシートを指に巻き付けての歯磨きや、朝に上顎、夜に下顎など、少しずつ数回に分けて磨くようにするとペットの負担も軽くなります。
動物にとって⼝周りは触られるのが嫌なところなので、触ったらすぐ褒めたりご褒美をあげたりして、「⼝を触られるといいことがある」と思ってもらうことから始めましょう。最初はうまくいかなくても、楽しみながら続けていけば必ず上達します。定期的に口内を観察することになり、⼝臭や⻭⾁の異常などの初期症状にも早く気付けます。診察で歯磨きのご助言や相談も可能です。
当院では最新の研究やガイドラインに基づき、1歳以上の子には年に1回の⻭科検査・⻭周処置をおすすめしています。正確な⻭周病の診断と治療には、⿇酔をかけての検査やスケーリング(歯石除去)などの歯周処置が⽋かせません。全⾝的な健康診断によって⿇酔をかけても問題がないか確認した後、麻酔下で⻭科専⽤レントゲンを⽤いて、⽬では見えない⻭根周囲や顎⾻の正確な評価を⾏っています。⿇酔をかけない⻭科検診では、獣医師による視診や、口内の細菌を採取しての歯周病チェックをします。
また、いつでもホームケアのお悩み相談が可能です。皆様からのリクエストを受け、定期的に歯磨き教室も開催していく予定です。
ありがとうございます。私や院長含めスタッフ全員海が⼤好きで、皆それぞれ近くの海岸でSUPやサーフィン、愛⽝の散歩をしています。ちなみに私は、獣医療関係者の集まるサーフィン⼤会で準優勝、横浜の⼤会では愛犬とペアを組んだドッグSUP部⾨で優勝したこともあり、近頃は2歳の息⼦とのタンデムSUPもしています。⽇々の診療や獣医療の⾃⼰研鑽には体⼒と根気が必要なので、各々が海で英気を養っています。
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血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
ペットと長く楽しく過ごせる治療を選択するために、高度な機器と技術で消化器型リンパ腫を診断します。
ペットにも起こる、腎不全と心腎関連症候群。細やかに状態を把握し、適切な治療を行う必要があります。