葉⼭まほろば動物病院 ⼩原 健吾 副院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.076

犬や猫にも重要な予防歯科。定期的な検診とケアで健康に繋げる
歯と口腔系疾患
犬や猫にも重要な予防歯科。定期的な検診とケアで健康に繋げる
葉⼭まほろば動物病院
  • ⼩原 健吾 副院長
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神奈川県三浦郡葉山町、御用邸近くに2024年4月開院した「葉⼭まほろば動物病院」は、5メートルを超す高い天井や海からの風が心地よいテラス待合席など、ゆったりとした明るい雰囲気に溢れている。地域のかかりつけ医としての一次診療から、皮膚科、耳鼻咽喉科、歯科などの専門性の高い診察も常時可能な同院で、ペットの口腔ケアに注力しているのが副院長の小原健吾先生だ。近年、犬や猫の「予防歯科」も、人間と同じく全身の健康に繋がると注目されている。歯科を通じてペットと飼い主の笑顔を守るために奮闘する小原健吾副院長に、犬や猫によく見られる歯周病と、口腔ケアの重要性についてお話を伺った。(取材日 2024年8月23日)

⼝腔周囲だけでない歯周病の影響。臓器不全を引き起こし、命を落とす場合も

― 犬や猫に多い⻭科疾患を教えてください。

⽝や猫には人間と違って虫歯はほぼなく、最も多いのは「⻭周病」です。最近の研究によると、3歳までの⽝と猫の約80%に何らかの⻭周病の症状があり、⼩型⽝に至っては1歳の時点で90%近くに⻭周病がみられるそうです。⻭周病は「⻭⾁炎」と「⻭周炎」の2つを合わせた病名で、⻭を⽀える組織の疾患です。⻭⾁炎は⻭⾁のみに炎症が認められる病態で、適切な処置によって完治できます。しかしさらに状態が悪化して⻭周炎になると、⻭を⽀える顎の⾻などにまでダメージが及び、⼀度破壊された組織は⻭垢や⻭⽯を除去しても再⽣することはありません。
その他に多い疾患は、破折(歯が欠ける、折れる)や、猫については歯が顎の骨に吸収されてしまう「吸収病巣」、口内に炎症を起こし痛む「⻭⾁⼝内炎」などですね。

― なぜ歯周病になるのでしょうか?

どんなに綺麗な口腔でも、歯垢は数時間で形成されてしまいます。⻭垢は歯周病菌を含む多数の⼝腔内細菌とその代謝物の塊であり、便より多い数の菌が含まれるといわれています。歯垢が歯と歯肉の間にたまると炎症が起こり、歯周ポケットが形成され、歯周病が進行します。
歯垢が石灰化し歯石になってしまうと、ホームケアでは除去できません。犬は歯垢が歯石に変化するのが3~5日と人間より早く、歯周病になりやすいのです。さらに、⼩型⽝やフレンチブルドッグなどの⿐が短い⽝種は、顎が短いので⻭の隙間も狭く⻭並びも乱れがちになり、ほとんどの子が⻭周病を患っていると言っても過言ではありません。

― ⻭周病を放置するとどうなるのでしょう。

歯周病菌が歯の周囲に炎症を引き起こし、そのまま放置されると、⼝腔周囲の組織が破壊されます。上顎の⾻が溶けると、⿐までつながる⽳が開いてひどいくしゃみや⿐汁が出たり、頬に膿瘍ができたり出血したりします。下顎で⻭周病が進⾏すると、下顎⾻が溶けて⾻折する場合もあります。
また、患部周辺の⾎管から⾎液中に⻭周病菌や毒素が侵⼊すると、全身で臓器障害・臓器不全を引き起こす恐れがあり、最悪の場合は命を落とすこともあります。⻭周病が原因となり⼆次的な疾患が⽣じることを⻭性病巣感染(しせいびょうそうかんせん)といい、人間ではアルツハイマー病や糖尿病が有名です。このように、⻭周病は⼝腔周囲の障害にとどまらず、全⾝にまで悪影響を起こす重篤な感染症になり得るのです。

ペットと楽しみながら続けて欲しい、病気の早期発見にも繋がる口腔ケア

― 犬や猫を歯周病から守るためにできることはありますか?

歯ブラシでの歯磨きが効果的です。⻭とブラシの⾓度は45度、鉛筆の様に持って、⽑先が少ししなるぐらいの軽い⼒で磨きましょう。⻭の表⾯に加えて、⻭⾁溝の⻭垢を落とすようにブラシを滑らせるのがポイントです。慣れるまではシートを指に巻き付けての歯磨きや、朝に上顎、夜に下顎など、少しずつ数回に分けて磨くようにするとペットの負担も軽くなります。
動物にとって⼝周りは触られるのが嫌なところなので、触ったらすぐ褒めたりご褒美をあげたりして、「⼝を触られるといいことがある」と思ってもらうことから始めましょう。最初はうまくいかなくても、楽しみながら続けていけば必ず上達します。定期的に口内を観察することになり、⼝臭や⻭⾁の異常などの初期症状にも早く気付けます。診察で歯磨きのご助言や相談も可能です。

― 貴院ではどのような歯周病診療をしていらっしゃいますか?

当院では最新の研究やガイドラインに基づき、1歳以上の子には年に1回の⻭科検査・⻭周処置をおすすめしています。正確な⻭周病の診断と治療には、⿇酔をかけての検査やスケーリング(歯石除去)などの歯周処置が⽋かせません。全⾝的な健康診断によって⿇酔をかけても問題がないか確認した後、麻酔下で⻭科専⽤レントゲンを⽤いて、⽬では見えない⻭根周囲や顎⾻の正確な評価を⾏っています。⿇酔をかけない⻭科検診では、獣医師による視診や、口内の細菌を採取しての歯周病チェックをします。
また、いつでもホームケアのお悩み相談が可能です。皆様からのリクエストを受け、定期的に歯磨き教室も開催していく予定です。

― ところで貴院はスタッフの皆様も明るく、はつらつとした雰囲気ですね。

ありがとうございます。私や院長含めスタッフ全員海が⼤好きで、皆それぞれ近くの海岸でSUPやサーフィン、愛⽝の散歩をしています。ちなみに私は、獣医療関係者の集まるサーフィン⼤会で準優勝、横浜の⼤会では愛犬とペアを組んだドッグSUP部⾨で優勝したこともあり、近頃は2歳の息⼦とのタンデムSUPもしています。⽇々の診療や獣医療の⾃⼰研鑽には体⼒と根気が必要なので、各々が海で英気を養っています。

ドクターからのメッセージ
  • ⼩原 健吾 副院長

ペットにも人間と同様に「予防⻭科」が大切です。⻭周病になってからの治療だけでなく、定期的な口腔ケアが病気の早期発見・早期治療に繋がり、ペットの健康を守ります。「⿇酔をかけての⻭周処置を年に1回⾏っていると、死亡リスクが18.3%低下した」という報告もありますので、私の愛犬・愛猫にも定期的に行っています。
それに、ペットに顔をペロペロされた時に嫌な臭いがしたら、せっかくのかわいさがもったいないですよね。口腔ケアからペットの「健康」と「かわいさ」を守り、皆様のお役に⽴ちたいと思っています。

犬や猫にも重要な予防歯科。定期的な検診とケアで健康に繋げる
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住所
神奈川県三浦郡葉山町一色1179-6
電話番号
046-887-0100
最寄駅
JR「逗子駅」
アクセス
JR「逗子駅」よりバスで17分、バス停「一色小学校」前より徒歩1分
駐車場
あり(8台)
診察動物
イヌ ネコ
診察領域
歯と口腔系疾患 眼科系疾患 皮膚系疾患 脳・神経系疾患 循環器系疾患 呼吸器系疾患 消化器系疾患 肝・胆・すい臓系疾患 腎・泌尿器系疾患 内分泌代謝系疾患 血液・免疫系疾患 筋肉系疾患 整形外科系疾患 耳系疾患 生殖器系疾患 感染症系疾患 寄生虫 腫瘍・がん 中毒 心の病気 けが・その他 軟部外科