キャットクリニック世田谷 有井 良貴 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.075

猫への愛情を原動力に、難病「FIP(猫伝染性腹膜炎)」に挑む
感染症系疾患
猫への愛情を原動力に、難病「FIP(猫伝染性腹膜炎)」に挑む
キャットクリニック世田谷
  • 有井 良貴 院長
  • 徳原 佳奈 獣医師
  • 堀口 裕子 獣医師
  • 井上 真幸 獣医師
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およそ7割の猫が感染しているといわれる、猫腸コロナウイルス。これが体内で突然変異を起こし、腹膜炎をはじめとする強い炎症をきたした結果、高い確率で死に至らしめる恐ろしい病気が「FIP(猫伝染性腹膜炎)」だ。近年では効果的な治療薬が開発され、動物病院において普及しつつあるが、その中でもいち早く導入した「キャットクリニック世田谷」では、FIPの完治率9割という成果が出ているという。安心して通える猫専門のクリニックで、日々猫と飼い主の幸せのために奮闘する有井良貴院長と猫を愛する同院の先生方に、FIPの注意すべき点や飼い主に心掛けてほしいことなどを伺った。(取材日 2024年3月25日)

猫がストレスなく安心して受診できる、猫のためのクリニック

― 貴院の特徴について教えてください。

2020年に開院したこの「キャットクリニック世田谷」は、その名の通り猫を専門に診る動物病院です。半地下のためとても静かで、他の動物の匂いや鳴き声もないため、猫がストレスを感じることなく安心して受診できるのが特徴です。また、デジタルでレントゲン画像を取り込む「デジタルX線システム」や、腹部の臓器、心臓機能、関節、妊娠の検査・診断などに用いる「超音波診断装置」、超音波メス、血球計算機など、院内設備の拡充にも力を入れています。さらに、当クリニックの本院である「羽根木動物病院」では高難度の手術や再生医療にも対応しており、必要に応じてより高度な医療を提供することも可能です。

― 診察の際に心掛けていることはありますか?

猫の心身に掛かる負担や飼い主様の費用的な負担を考慮しながら、最もバランスのいい検査や治療を提案するということでしょうか。そのために「どこまで」「どのように」治療するかというご希望を事前にお伺いし、こちらの意見を押し付けないよう心掛けています。
また猫に対し、人間と同じように接することも意識しています。話しかけたりスキンシップをとったりと少しでも怖がらせないように配慮することはもちろん、ケージから出てもらうときも猫のペースを尊重しています。扉を開けた瞬間に飛び出してくる子や、しばらく外の様子を伺っている子など、猫によって性格は異なりますからね。

子猫だけでなく成猫も注意が必要なFIP。気になることがあれば相談を

― FIP(猫伝染性腹膜炎)とは、どのような病気なのでしょうか?

猫の腸に感染するコロナウイルスがあるのですが、7〜8割の猫が持っているといわれており、とくに純血種に多い傾向があります。この猫腸コロナウイルスが突然変異することで、腹膜炎をはじめとする強い炎症をきたし、致死率は9割以上にものぼります。コロナウイルスを保有しているだけであれば特に症状はなく、突然変異の確率も1割未満と考えられていますが、致死率が高くとても恐ろしい病気です。
また、その症状は多種多様です。病名の通り腹膜炎があれば、腹水が溜まるといった典型的な症状が見られますが、なんとなく元気がない、食欲が落ちてきた、食べているのに痩せてきたなどの症状が現れた場合、FIPと判断しにくいものです。反対に、FIPを疑って診察したところ、猫風邪やリンパ腫だったというケースも少なくありません。また以前は主に子猫がかかる病気といわれていましたが、最近では年齢に関わらず発症が見られ、これまでの定説が覆されつつあります。

― 貴院ではFIPの治療薬をいち早く導入し、治療実績も豊富だそうですね。

かつては対症療法しか手段がなく、完治を目指すのが困難な病気でした。治療薬が非常に高価だったことも、その一因です。しかし、近年では従来に比べて安価な治療薬が流通するようになり、当院でも2022年に導入しました。完治率は約9割と、対症療法のころに比べて飛躍的に進歩しています。
ただし、薬さえあればFIPを治療できるわけではありません。前述の通りFIPは他の病気と症状がよく似ており、血液検査や尿検査などのデータ、さらには猫の様子などからFIPと的確に診断できる経験と知見が求められます。また、FIPは完治したものの「便が緩いまま」「神経の障害で後ろ足がぐらつく」といった後遺症が残る症例もあり、注意が必要です。

― 愛猫をFIPから守るために、飼い主が心がけるべきことについてお聞かせください。

やはり、FIP治療の実績が豊富な病院を選ぶことが大切ですね。例えば当院ではFIPの症状を多数見てきた経験をふまえ、「後遺症が残りそうだな」と感じた際は、本院と連携して幹細胞を用いた再生医療を提供することも可能です。実際、FIPの重い後遺症により排尿障害になってしまった猫が、再生医療により救われたケースもありました。このように、FIPを治すだけでなく、FIPによる後遺症などをケアできることも当院の強みと考えています。
何よりも飼い主様にお願いしたいのは、少しでも様子がおかしいと思ったらすぐ病院に連れてきていただくことですね。普段の様子を知っているのは飼い主様だけです。重症化や後遺症のリスクを減らすには、ダメージを受けている期間を少しでも短くすることが大切になります。FIPの早期発見・早期治療に繋げるためにも、小さな変化を見逃さないであげてください。

ドクターからのメッセージ
  • 有井 良貴 院長
  • 徳原 佳奈 獣医師
  • 堀口 裕子 獣医師
  • 井上 真幸 獣医師

私たちは猫の専門医ですので、症状に表れていない病気に気づくこともあります。爪切りだけでも結構ですので、ぜひ遠慮なくご相談ください。

猫への愛情を原動力に、難病「FIP(猫伝染性腹膜炎)」に挑む
猫への愛情を原動力に、難病「FIP(猫伝染性腹膜炎)」に挑む

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住所
東京都世田谷区世田谷2-25-2 ルモンド世田谷 B1-4
電話番号
03-6413-9381
最寄駅
上町駅
駐車場
なし(近くにコインパーキング有り)
診察動物
ネコ
診察領域
歯と口腔系疾患 眼科系疾患 皮膚系疾患 脳・神経系疾患 循環器系疾患 呼吸器系疾患 消化器系疾患 肝・胆・すい臓系疾患 腎・泌尿器系疾患 内分泌代謝系疾患 血液・免疫系疾患 筋肉系疾患 整形外科系疾患 耳系疾患 生殖器系疾患 感染症系疾患 寄生虫 腫瘍・がん 中毒 心の病気 けが・その他 軟部外科