名古屋みなみ動物病院・どうぶつ呼吸器クリニック 稲葉 健一 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.059

犬と猫の呼吸器疾患、短頭種気道症候群、気管虚脱の診断と治療
呼吸器系疾患
犬と猫の呼吸器疾患、短頭種気道症候群、気管虚脱の診断と治療
名古屋みなみ動物病院・どうぶつ呼吸器クリニック
  • 稲葉 健一 院長
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桜通線桜本町駅から徒歩15分の「名古屋みなみ動物病院・どうぶつ呼吸器クリニック」は、東海・中部地方で唯一、呼吸器科専門診療を行う。苦しそうな呼吸や咳、いびきなど扱う症状は多岐にわたる。呼吸器疾患は同じ症状でも病気により治療方法が異なるため、確定診断を行うことが重要だ。同院は、全国でも数少ない直径3.1mmや4.1mmなど非常に細い内視鏡による鼻腔や気管支の検査を実施。血液ガス検査など特殊な検査にも対応し、的確な診断で長引く咳や息苦しさから多くの犬猫を救ってきた。呼吸器で気になる症状があれば相談してほしいと話す稲葉健一院長に、気管虚脱や短頭種気道症候群の治療を中心に呼吸器科の診療について伺った。(取材日 2022年4月19日)

苦しそうな呼吸や咳は病気の特定が大事。同じ症状でも治療方法が異なる

― 呼吸器科専門診療ではどのような症状を診るのでしょうか?

咳や呼吸の苦しさ、鼻水、くしゃみ、いびきなど、鼻から肺までの呼吸に関わるすべての症状を診ています。セカンドオピニオンでは、なかなか咳が治らない、レントゲン検査で「肺が白い」「気道が狭い」などの異常が見つかった、というケースが多いですね。ワンちゃんネコちゃんの患者さんは同じぐらいです。気管虚脱や短頭種気道症候群に対しての手術も実施しています。
呼吸器科専門外来は予約制です。呼吸器の病気は同じ症状であっても治療法が異なることが多いので、呼吸器科の診療では、可能な限り確定診断を行う、つまり病気を特定することが何よりも大切です。

― 診察の流れを教えてください。

問診を綿密に行い、そのあとに身体検査やレントゲン検査、血液ガス分析、内視鏡検査などを実施します。
問診では見落としがないように「呼吸は吸いづらいのか吐きづらいのか」「どのタイミングでどんな音の咳をするのか」など、様々なことをお伺いします。初診では30~60分程度お話を聞いて、病変部位と病気を推測します。またレントゲン検査では、静止画だけでなく動画のように撮る透視検査という手法も用いて、気管支や喉の動きを確認します。特殊な検査では、肺機能を調べる動脈血ガス分析や、麻酔下での気管支鏡や鼻鏡による内視鏡検査も状況に応じて実施します。

― 短頭種気道症候群について教えてください。

短頭種の子では「鼻の入り口が狭い(外鼻孔狭窄)」「鼻の中が狭い(鼻腔狭窄)」「軟口蓋が長い(軟口蓋過長)」「軟口蓋が分厚い(軟口蓋肥厚)」「気管が細い(気管低形成)」といった骨格的、解剖学的異常が多くみられ、それらが合わさって起こる症状を短頭種気道症候群と呼びます。代表的な症状はいびきや呼吸困難です。パグでも鼻の通りのよい子がいるように、すべての短頭種が罹患するわけではないですが、短頭種の飼い主様には知っておいてほしい病気です。
軽度の場合は体重管理など内科的なケアを行いますが、根本的に解決するには手術が必要となることがあります。短頭種は麻酔から覚めたあとに上気道閉塞(窒息)を起こすことがあるので、術前にそれらのリスクについても十分に評価したうえで、症例毎に必要な治療として「鼻の穴と、その中を広げる」や「軟口蓋の長さや厚さを整復する」「喉にできた喉頭小嚢を取る」などの手術を行います。短頭種気道症候群としての症状が認められるのであれば、病態が進行してしまうことの多い4歳までの治療を推奨しています。いびきや日常的なガーガーやブーブー、ズーズーといった呼吸音が当たり前だと思わずに、気になる症状があればご相談いただきたいです。

気管虚脱は気管の潰れ方で治療が変わる。手術か投薬かの見極めが大切

― 気管虚脱について教えてください。

気管が潰れることで様々な症状がでる病気です。軽度の段階では咳がみられ、重度になると「ガーガー」「ゼーゼー」というアヒル様やガチョウ様呼吸と表現される呼吸困難を示します。気管が潰れる原因は分かっておらず、小型犬で好発しますがどの犬種でも発症します。
気管虚脱はレントゲン検査で発見しやすい病気ですが、「手術が適しているタイプ」と「内科治療が適しているタイプ」に分かれることはあまり知られていません。気管がどのように潰れているのかどうかを見極めることが治療のカギです。

― 気管のつぶれ方によって手術の要否が変わるのですね。

気管は軟骨と膜で構成されているのですが、軟骨が潰れていても膜が伸びていても、レントゲンでは同じように見えてしまうので、透視検査や気管支鏡検査によりどのように気管が潰れているかを診断します。軟骨が潰れて扁平化している場合には手術が有効です。一方、膜が伸びて潰れているタイプは気管以外の部位に原因があるため、そこの治療をしないと治りません。多くの場合は内科治療が適しています。

― 気管虚脱の手術について教えてください。

気管内にメッシュ状の金属を入れて内側から広げる気管内ステント留置術と、気管の外にコイル状の補強材を取り付け外側から広げる気管外プロテーゼ術の2通りの方法があります。ステント術は、皮膚の切開は不要で数分の手術で呼吸困難を解消することが可能です。しかし、定期的な検査やネブライザー療法などの自宅での日常的なケアが必要になります。気管外プロテーゼ術は、合併症がなければ一回手術をするだけでその後のケアは必要ありません。ただし手術時間が長い、手術が難しく実施している病院が限られている、といった難点もあります。
当院ではどちらの手術も実施できますが、それぞれにメリット・デメリットがありますので、ワンちゃんやご家族のご事情などを考慮して最善の治療を提示するようにしています。手術方法や費用などなんでもご相談ください。

ドクターからのメッセージ
  • 稲葉 健一 院長

2週間以上続く咳は積極的な検査や治療が必要ですし、気管虚脱の経過が思わしくない場合はタイプが異なっている可能性があります。これらの原因を突き止めて適切な治療を実施することで、ワンちゃんネコちゃんの生活の質は向上します。どういった治療が良いのかは、その子の状態やご家庭の考えによっても異なるので、飼い主様と動物に寄り添った診療を心がけ、より良い生活を送れるように全力でサポートします。

犬と猫の呼吸器疾患、短頭種気道症候群、気管虚脱の診断と治療
犬と猫の呼吸器疾患、短頭種気道症候群、気管虚脱の診断と治療

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