頼れる獣医が教える治療法 vol.056
根尖周囲病巣という根尖(歯の根っこの先端)で起こる病気の一種で、膿が溜まった状態を根尖膿瘍と言います。破折(歯が折れる)や歯周病などが原因となり歯の髄が障害を受け、歯髄炎、歯髄壊死と進行していき、根尖で膿瘍を作ります。歯髄炎の段階では痛みがありますが、壊死すると痛みがないため、飼い主さんが初期段階で気づくことは難しい病気です。悪化すると、膿が溜まって目の下がぼこっと腫れる、皮膚や口腔内に歯瘻(膿の出口となる穴)ができるなどの症状が現れ、下顎の骨が折れる場合もあります。
歯科レントゲンを撮らないと事前に診断することが難しいケースもあり、通常の歯周病の抜歯と思って治療を進めると思わぬ出血や骨折を起こすこともあり得えます。ですから、根尖膿瘍などの根尖周囲病巣を疑う場合は、飼い主さんと獣医師でしっかりと相談して検査・治療方針を決めることが大切です。
根尖周囲病巣は歯の根っこに起こる病気なので、レントゲンを撮らないと診断できません。
最初に視診を行い、歯の病気である可能性が高ければ麻酔をかけて歯科用レントゲンを撮り、根尖とその周囲の骨の状態を確認して診断します。
顔が腫れている子では皮膚病と誤診されて転院してくる子もいます。膿瘍も細菌感染を起こしていることが多いので抗生物質を投与すると一時的に腫れは引きますが、原因が除去されないので何度も再発してしまうのです。また、硬い物を噛んだり、噛み合わせが悪く歯が当たったりすることで徐々に歯が削れる咬耗や、エナメル質のヒビから細菌感染が起こり歯髄炎になる場合も、歯の病気だと気づきにくいケースです。病変の見逃しがないように注意深く診ることが重要です。
その子の状態に応じて治療方法を選択します。根尖病巣の程度によっては、歯の中の血管や神経を除去し、歯髄をクリーニングして歯を残す「歯内療法」を行います。歯内療法が適応でないケース、たとえば根尖周囲病巣や重度の歯周病などで骨融解を起こし、下顎骨が骨折している場合は「抜歯」を行い、同時に感染している顎の組織を処置することで治療します。
かしわだい動物病院
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