頼れる獣医が教える治療法 vol.052
パグやフレンチブルドッグ、ボストンテリアなどの短頭種は、気管から上の気道が閉塞しやすい構造となっており、それに起因するさまざまな病態を「短頭種気道症候群」と呼びます。ガーガー、ブーブーという呼吸音、頑張って息を吸う努力呼吸やいびきが代表的な症状です。気道が狭く効率的に熱を逃がすことができないため、熱中症に陥りやすいことも特徴です。努力呼吸によって症状が悪化する慢性進行性の病気で、早い子では生後2、3か月から症状が出ます。進行すると失神や睡眠時の無呼吸を起こして命に関わるので、早期に手術をすることが望まれます。
はじめに身体検査を行い、レントゲン検査、透視検査、内視鏡検査で確定診断をします。呼吸音も大切ですね。常にガーガー言っているのか、興奮時だけか、いびきだけか、睡眠時の無呼吸はあるかといった点を確認します。外鼻孔と呼吸音でおおよその病気の進行度合い(グレード)を評価し、その後に外から見えない軟口蓋や咽頭、喉頭の状態を検査します。透視検査では、吸っているときと吐いているときにレントゲンを連続して撮影し、鼻から喉にかけての閉塞場所や軟口蓋の大きさを確認します。
短頭種では、外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、気管低形成、鼻道が狭いという解剖学的構造を持つ子が多くいます。先天的に口と鼻を分ける軟口蓋が長い子は60~100%、外鼻孔が狭い子は17~70%いると言われます。すぐに手術を必要としないケースもありますが、努力呼吸によって軟口蓋が引っ張られて伸びていき、気道が狭くなって呼吸が難しくなります。さらに悪化すると、咽頭虚脱や喉頭虚脱といった二次的な変化も引き起こします。
安静時に頑張って息を吸い込む努力呼吸が見られるときは手術対象と考えています。グレードは0~3の4段階で評価をしますが、当院ではグレード2から手術を勧めています。グレードの低い症例には経過観察をしながら、「太らせない」などの注意事項をお伝えします。
咽頭虚脱を起こすと手術をしても症状が完全には改善しないケースもあるので、悪化する前に治療を開始することが重要です。
乙訓どうぶつ病院
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