頼れる獣医が教える治療法 vol.046
口臭や歯石、歯が抜けたといった相談をよくいただきます。犬歯や奥歯が破折、欠けたり割れたりしている子も多いですね。歯折の多くは、硬いものを噛んだことが原因です。犬猫の歯は、肉を切り裂けるようになっていますが、骨などの硬いものを噛むようにはできていません。「噛むことで歯を強くする」という硬い素材でできたデンタルグッズで、歯が折れてしまうことがあります。硬いものを噛んでも歯が丈夫になることはないので、飼い主さんが噛んでみて「硬い」と思うものは、犬猫にも与えないようにしましょう。
犬では歯周病、猫では歯周病と口内炎、吸収病巣を併発しているケースが多いですね。
歯周病は、歯そのものではなく歯周組織を壊す病気です。下の歯であれば、顎の骨を溶かし顎骨が折れてしまいます。「痛い」と言えない犬猫に代わり、進行する前に気づいてあげましょう。
歯周病は見た目だけでは重症度を判断できません。見た目がきれいでグラグラしていない歯であっても、根元が溶けているケースもあります。そのため、当院では全ての歯に対して歯科用レントゲンで歯周辺の状態を確認することを重視しています。
なによりも大切なことは歯周病の治療です。歯周ポケットに隠れているプラークを除去し、歯石が付きにくくなるように1本1本処置をします。
また歯周病が悪化している場合には、抜歯が必要であるか、温存できるかを検討します。歯を温存する場合には、処置後にお家での継続的なケアが必須となります。歯の割れ(破折)に対し、当院ではマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた、歯の温存治療も実施しています。歯の神経である歯髄をくりぬき、人工物に置き換えて、歯を温存する治療です。
歯を温存できるかどうかのポイントは、「歯周病の進行度合い」と「麻酔を複数回かけられるか」です。重度の歯周病というのは、「沼地に家が建っている」状態なので、歯を残す処置をしても土台である歯周組織が崩れてしまいます。また、歯を残す治療を行った場合、治療後半年ごとに麻酔をかけた状態でのレントゲン撮影を3回行います。歯を残す最大のメリットはフードやおやつも噛めること、デメリットは麻酔を複数回かける必要があることです。一方、抜歯のメリットは1回の処置で治療が完了すること、デメリットは噛めなくなることです。
当院では飼い主さんと動物にとって、なにが一番幸せかを考えながら、飼い主さんの希望に沿った治療を行っています。口腔内の健康を保つためには、病院での治療と自宅でのデンタルケアが重要です。なにができるか、どこまでできるかを一緒に考え、方針を決めましょう。
おかの動物病院 横浜どうぶつ歯科
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