ペットのため学び続ける、皮膚とエイジングケアのスペシャリスト
長年信頼を寄せられている皮膚科系疾患の治療に加え、ペットのエイジングケアにも力を入れています。
- 北川犬猫病院 東京都板橋区南常盤台
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- 後藤 慎史 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.045
目次
腎臓と膀胱をつなぐ尿管に石が詰まり、腎不全や尿毒症を引き起こす病気です。尿管閉塞の原因のひとつで、腎臓の中にできた石が尿管に流入することで起こります。稀に石が流れたあとに尿管が線維化して狭窄することでも発生します。両側/片側、閉塞/狭窄などさまざまな詰まり方をし、両側が閉塞すると命にかかわります。また腎臓に細菌感染があると、腎結石の形成が促進されるだけでなく、万が一尿管結石となった場合は隔離された腎臓内で細菌が繁殖し、膿腎症という敗血症につながる病気も起こります。
尿管結石の症状は、嘔吐や元気消失など非特異的なものです。片方が狭窄/閉塞していれば、尿は排出されるので体調の波があったとしても飼い主様が気づくことは難しいでしょう。両側が閉塞すると、排尿がなく、おしっこをしようとする動作自体なくなります。この場合には元気消失や食欲減退、嘔吐だけではなく、尿毒症による神経症状を呈し、ただちに治療が必要となります。
身体検査と血液検査、超音波検査、尿検査、レントゲン検査を行います。結石の存在や、腎臓・尿管が拡張する水腎症や水尿管の画像所見、腎数値上昇などの所見により診断します。CT検査が実施できる場合はさらに情報量が増えます。ひとつの尿管からは複数の結石が見つかることが多いです。尿管は拡張しても1mmほどの細い管であり、0.5mm程度の非常に小さい石であっても詰まってしまうのです。石が映らない場合には、腎盂造影を行い閉塞している箇所を特定します。
内科治療のみでは奏功しないケースが大半なので、適切なタイミングで手術が望まれます。
当院では、「尿管切開術」「尿管膀胱新吻合術」「皮下尿管バイパス術(SUBシステム)」という3つの術式から、その子の状況に合わせて選択します。尿管切開術は、尿管を切開して石を取り出し、元通りに縫う手術です。石が腎臓側にあり、尿管が線維化していないときに適用します。尿管膀胱新吻合術は、詰まっている箇所の尿管を結石ごと摘除し、短くなった尿管を直接膀胱につなぎ合わせる手術で、膀胱近くの閉塞のときに適用します。皮下尿管バイパス術は、尿管を迂回して腎臓と膀胱を人工のチューブでつなげる手術です。
術式の選択を誤るとQOLの低下や再発のリスクを高めるため、慎重に決定します。術式は病態を最優先にしながらも、飼い主様の考えも踏まえて決定するようにしています。手術の方法をイラストで描いたり、それぞれのメリットデメリットを説明したりするなど、飼い主様にわかりやすい説明を心がけています。
石の位置だけではなく、左右の腎機能バランス、細菌感染の有無、年齢、腎結石の有無、麻酔リスクなど多くのことを加味して決定します。腎臓の機能は、腎臓の大きさや拡張具合などから推測し、腎瘻チューブを挿入して推定する事もあります。
当院では、インプラントを用いない切開術と新吻合術を優先して手術を実施しています。しかし、高カリウム血症など麻酔リスクが非常に高い場合や腎結石が多数存在する場合、比較的若い症例の場合などにはバイパス手術が第一選択となります。
術前術後は内科管理が大切です。たとえば、術後の点滴は、術前の体が脱水状態だったのか、浮腫だったのかによって細かな調整を行います。術後は閉塞解除後利尿と呼ばれる、尿が大量に出る現象が起こるのですが、術前の状態を把握せずに排出された尿量分だけ点滴を行っても適量ではないのです。
入院中は感染予防やペインコントロールを行い、多尿が治まり食欲が戻れば退院します。退院までの日数は閉塞による後遺症の残り方によって異なり、早い子では3、4日、長い子では1週間程度です。SUBシステムを適用した子や慢性的な腎臓病がある子では、メンテナンスや治療のために定期的な通院が必要になります。
福島で開院する前に、5年間ほどMRI・CT併設の総合病院で軟部組織外科を担当していました。腫瘍外科や泌尿器外科、肝胆膵外科、胸部外科などが専門ですが、椎間板ヘルニアなどの神経系疾患も得意です。一次診療病院に勤めていたころは、「経験を積めば手術がうまくなる」と思っていました。今は少し考え方が変わり、「外科には、たゆまぬ勉強・綿密な準備・経験・理論的でクイックな思考が求められる」というのが持論です。症例に合わせて最適な治療を提案できるように、自分もまだまだ鍛錬が必要だと感じています。現状維持ではなく、変わっていかないといけない。常に知識をアップデートして経験を積み、最善を提供するよう精進を続けます。
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