木場きたむら動物病院 北村 亮 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.044

犬と猫の避妊去勢手術(不妊手術)~検査、手術、術後管理~
生殖器系疾患
犬と猫の避妊去勢手術(不妊手術)~検査、手術、術後管理~
木場きたむら動物病院
  • 北村 亮 院長
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門前仲町駅、木場駅から徒歩10分、下町風情あふれるエリアを抜けた葛西橋通り沿いにある「木場きたむら動物病院」では、年間400件以上の避妊去勢手術を行っている。避妊去勢手術は一般的だが、犬猫にとって初めての手術となることが多く、安全性や痛みなど飼い主の不安も大きい。「不妊手術は受けた方が良い」と話す北村亮院長は、動物の負担と安全面への配慮を第一に手術を行う。腹腔鏡手術や血管シーリングシステムの導入、手術後のエリザベスウェアの着用もその一環。「当たり前の手術だからこそ、こだわりたい」と語る北村院長に、避妊去勢手術のメリットやリスク、腹腔鏡などの最先端の器具を使った同院の手術について伺った。(取材日 2022年7月14日)

手術を受けるリスクと受けないリスクの比較。避妊去勢手術で寿命が長くなる

― 避妊手術、去勢手術は受けた方が良いのでしょうか?

不妊手術(避妊手術、去勢手術)を受けることで予防できる病気はたくさんあるので、不妊手術は受けた方が良いでしょう。若いうちは生殖器が残っていて困ることはありませんが、中年齢以降になると生殖器が関係する病気が増加します。男の子であれば前立腺疾患、精巣腫瘍、会陰ヘルニア。女の子であれば子宮蓄膿症や乳腺腫瘍などです。これらの病気は命に係わることもありますが、不妊手術をしていれば防げる病気です。また「不妊手術を受けることで寿命が20%伸びる」という学術的な報告もあります。実際に、中高齢になって手術を受けた飼い主さんから「行動が若返った」との声もよくお聞きします。
当院では生後6か月~8か月での手術をお勧めしています。特に女の子では、1回目の発情が来る前が理想的です。発情が1度でも起こると、女性ホルモンの影響で乳腺腫瘍の発生率が跳ね上がるからです。男の子でも、マーキングなど男の子特有の行動が習慣化する前に手術を受けるのが良いですね。

― 麻酔や手術のリスクはありますか?

麻酔のリスクは、健康な子ではほぼありません。先天的な疾患があるとリスクが上がるので、手術前の検査を綿密に行うことが重要です。手術自体のリスクでは、腹腔内出血や卵巣遺残、尿管損傷などがありますが、適切な手技や腹腔鏡を用いることにより極めて低い確率となります。
不妊手術は、動物と飼い主さんにとって初めての手術となることが多いので、麻酔や痛みなどに不安もあるでしょう。しかし、手術のリスクを恐れて不妊手術を受けないことは、予防できるはずの病気にかかる大きなリスクを取ることになります。たとえば乳腺腫瘍は雌犬でもっとも多い腫瘍です。手術を「受けるリスク」と手術を「受けないリスク」を天秤にかけていただきたいです。

― 手術の内容は病院によって異なるのでしょうか?

「生殖器を摘出する」という内容は同じですが、病院独自のこだわりが色濃くでる手術です。当院では、手術前検査を入念に行うこと、腹腔鏡や血管シーリングなど最先端医療機器を用いて安全・迅速に手術をすること、手術後も快適に過ごせるようにすることに注力しています。
不妊手術は一生に一回の手術です。獣医師として、その一回を任せてもらえるのは大変嬉しいことです。健康な子にメスを入れることに責任を持ち、こだわりを持って最高の手術が提供できるよう努力しています。

動物への負担が少ない手術を追及。避妊手術には腹腔鏡手術も導入

― 手術には縫合糸ではなく血管シーリングシステムを使われているそうですね。

超音波振動と高周波電流で血管を閉鎖する血管シーリングという機器を使用しています。この機器で血管を挟むと、素早く血管を封鎖、切断することができ、「安全で迅速な手術」が実現できるのです。犬の去勢手術は5分程度、避妊手術は15分程度で完了するので、従来の血管を縫合糸で縛る処置よりも動物の負担が大幅に軽減されます。
また、縫合糸を使用すると、アレルギー反応により肉芽腫という炎症の塊ができたり、糸が外れて手術後に出血が起こったりする可能性がありました。一方、血管シーリングシステムではこれらの心配がないので、極めて安全な手術が可能です。

― 避妊手術では腹腔鏡手術も選択できると聞きました。

当院では動物に負担の少ない手術を追求した結果、腹腔鏡手術へと辿り着きました。体に小さな穴を2つ開けるだけで避妊手術が可能です。従来の開腹手術より優れているのは、なんと言っても傷口が小さいこと。動物が感じる痛みも少ないので、当院の腹腔鏡手術は日帰りで実施しています。
腹腔鏡手術は体の大きなワンちゃんほどメリットが大きくなります。開腹手術では体が大きいほど傷口も大きくなりますが、腹腔鏡手術では体格にかかわらず、傷口は5mmの穴が2つだけです。逆に、体がとても小さい子やネコちゃんでは開腹手術が適しているケースもありますが、当院では腹腔鏡による避妊手術を選ばれる方が多いです。
腹腔鏡手術は、設備投資が高額であり特殊な手技も必要なので、実施できる病院が少ないのが実情です。痛みを訴えることができない動物だからこそ、より負担の少ない腹腔鏡手術を普及させていきたいと考えています。

― 手術後のケアを教えてください。

痛み止めと抗生剤を投与します。術前から行う「先取り鎮痛」が、痛みの管理として重要ですね。作用する部位が異なる4種類の鎮痛剤を使うことで、術後数日でお散歩も可能ですし、腹腔鏡手術の場合は翌日から散歩ができます。
また当院では、術後にエリザベスウェア(手術の傷口を覆える洋服)を着用してもらっています。カラーは日常生活において不自由が多いですが、ウェアは傷口をしっかりと保護しつつ自由に動くことができます。動物のストレスも少ないですし、見た目もかわいらしいので飼い主さんからも大好評です。

ドクターからのメッセージ
  • 北村 亮 院長

不妊手術はその子にとって一生に一度の大切な手術です。手術の内容は病院により異なるので、担当の先生の話を聞き、納得したうえで手術を受けることが大切です。無事手術が終わった際には、担当医と飼い主さんの間で強い信頼関係ができるでしょう。その信頼関係は飼い主さんとペットにとって一生のもの。その後のケアにも役立ちます。

犬と猫の避妊去勢手術(不妊手術)~検査、手術、術後管理~
犬と猫の避妊去勢手術(不妊手術)~検査、手術、術後管理~

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