頼れる獣医が教える治療法 vol.044
不妊手術(避妊手術、去勢手術)を受けることで予防できる病気はたくさんあるので、不妊手術は受けた方が良いでしょう。若いうちは生殖器が残っていて困ることはありませんが、中年齢以降になると生殖器が関係する病気が増加します。男の子であれば前立腺疾患、精巣腫瘍、会陰ヘルニア。女の子であれば子宮蓄膿症や乳腺腫瘍などです。これらの病気は命に係わることもありますが、不妊手術をしていれば防げる病気です。また「不妊手術を受けることで寿命が20%伸びる」という学術的な報告もあります。実際に、中高齢になって手術を受けた飼い主さんから「行動が若返った」との声もよくお聞きします。
当院では生後6か月~8か月での手術をお勧めしています。特に女の子では、1回目の発情が来る前が理想的です。発情が1度でも起こると、女性ホルモンの影響で乳腺腫瘍の発生率が跳ね上がるからです。男の子でも、マーキングなど男の子特有の行動が習慣化する前に手術を受けるのが良いですね。
麻酔のリスクは、健康な子ではほぼありません。先天的な疾患があるとリスクが上がるので、手術前の検査を綿密に行うことが重要です。手術自体のリスクでは、腹腔内出血や卵巣遺残、尿管損傷などがありますが、適切な手技で行うことにより極めて低い確率となります。
不妊手術は、動物と飼い主さんにとって初めての手術となることが多いので、麻酔や痛みなどに不安もあるでしょう。しかし、手術のリスクを恐れて不妊手術を受けないことは、予防できるはずの病気にかかる大きなリスクを取ることになります。たとえば乳腺腫瘍は雌犬でもっとも多い腫瘍です。手術を「受けるリスク」と手術を「受けないリスク」を天秤にかけていただきたいです。
「生殖器を摘出する」という内容は同じですが、病院独自のこだわりが色濃くでる手術です。手術費用だけではなく、手術前検査の内容や手術方法、手術後のケアなどを確認するとよいでしょう。詳しく検討すると、病院により大きく異なることに驚かれると思います。手術前にこれらの点を説明してもらい、飼い主さんと動物に合った病院を探しましょう。
木場きたむら動物病院
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