頼れる獣医が教える治療法 vol.042
アトピー性皮膚炎は、慢性的にかゆみや炎症があり、それを繰り返す犬の病気です。遺伝的要因と、ハウスダストや花粉といった環境要因が主な原因となります。また、アトピー性皮膚炎の犬では皮膚の角質の成分の一つである脂質に異常があり、皮膚のバリア機能が低下していることもわかっており、これも要因の一つになっています。
症状は顔や耳、足先、お腹などに現れます。マラセチアなどの二次感染や食物アレルギーを併発しているケースも多くみられます。
今までの経過に加えて、自宅での環境、かゆがるタイミングなど様々なことをお聞きします。皮膚病は長期にわたって症状が出ることが多いので、ご家族様に「そういえば」と思い出していただくことも大切と考えています。セカンドオピニオンの方にも経過を詳しく聞いています。「途中で悪くなった治療があったかどうか」などもわかると、治療が進めやすくなります。当院では処方するお薬の説明をしておりますが、薬の種類や名前をメモしてくださると良いですね。
アトピー性皮膚炎は悪化すると、皮膚が分厚くなったり、フケが出たり、脱毛したりしますが、最初からこれらの症状が出ているわけではありません。多くの皮膚病では皮膚に異常があるところを掻きますが、アトピー性皮膚炎の本当に初期は「なにもないのになぜか掻いている」状態であることも特徴です。
ワンちゃんの症状や性格、ご家族の状況によって治療方法を変えています。「環境を整える」「シャンプーや食事によるスキンケアを行う」「お薬」の3種類の治療の組み合わせをご家庭に合わせて提案し、相談のうえ決めています。
治療前には、かゆみの発生の仕方を「コップに注ぐ水」にたとえて説明しています。花粉やハウスダスト、細菌感染といったかゆみがコップの中に積み重なり、溢れるとかゆみが発生します。このコップから溢れるのを防ぐことが治療の目標になります。ですので、細菌感染に対して抗菌治療を行うだけで、かゆみが治まることもあります。
「環境を整える」場合には、普段ワンちゃんがどこによく居るのかをお聞きします。ソファーに居るのであれば、それが革製なのか布製なのかによっても対応法が変わります。最近は犬用のスキンケアグッズも充実しており、保湿剤だけでも入浴剤タイプやスプレー・泡、スクワランオイルが入っているものなど色々な種類があります。感染を起こしているケースでは先にそちらの治療を優先することもあります。また、“かゆみどめ”のお薬には様々な種類があり、新しい治療薬も出てきています。それぞれ費用や使い方が異なるので、ご説明して選んでいただいています。
久米川みどり動物病院
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