ペットのため学び続ける、皮膚とエイジングケアのスペシャリスト
長年信頼を寄せられている皮膚科系疾患の治療に加え、ペットのエイジングケアにも力を入れています。
- 北川犬猫病院 東京都板橋区南常盤台
-
- 後藤 慎史 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.060
目次
膝蓋骨脱臼は犬の整形外科疾患で比較的多い病気で、膝のお皿である膝蓋骨が正常な位置から外れる病気です。落下した衝撃などで後天的に発症することもありますが、多くの場合は先天的な足の変形が原因です。特に小型犬で多くみられます。
「急に“キャン”と鳴く」「スキップやケンケンのような歩き方をする」といった症状のある子から無症状の子まで様々ですが、症状の有無は重症度(グレード)とは一致しません。膝蓋骨が外れるときや外れている状態では痛みや違和感があっても、グレードが進行してスムーズにお皿が外れるようになると症状が出なくなる子もいるのです。どこまで進行するかはその子により異なりますが、悪化すると歩けなくなる恐れがあるため、定期的な診察と状況に合わせた治療が重要です。
大きく分けると1歳頃、骨の成長が終わっているかどうかにより症状の出方が変わります。
重症度が高いと、仔犬では大腿骨や脛骨が引っ張られて骨が変形する可能性があり、膝蓋骨脱臼を放置された成犬では炎症の蓄積により変形性関節症を引き起こす可能性があります。骨の変形も変形性関節症も手術で治すことが難しいので、そこまで進行することを防ぐのが治療の目的です。
4段階のグレード分けや、X線検査の所見だけではなく、膝蓋骨を動かしたときの「つるつる」「がりがり」といった感触から炎症や変形の度合いを細かく見極めて、治療の開始時期や内容を検討します。
保存療法と外科手術の2種類あります。保存療法は足の負担を減らして進行を抑えることを目的とした治療です。ポイントは体重を減らしてしっかりと歩くこと。膝蓋骨は筋肉と靭帯、関節包という組織に支えられているので、これらの筋肉を鍛えて脱臼しにくく炎症も起こりにくい状態を目指します。多くの場合はグレード2から保存療法を開始し、跛行の症状や痛みが強い場合、またはグレード3まで進行した場合に外科手術を検討します。
膝蓋骨脱臼は足の複数の問題によって引き起こされるため、問題が起こっている複数の箇所に対して同時に手術を行います。前十字靭帯など他の関節疾患がないかを確認することも重要ですね。
「膝蓋骨が嵌まる滑車溝を深くする(滑車溝造溝術)」「膝蓋骨に付随する靭帯の引く力が弱まるように筋肉を短くする(支帯切離)」「靭帯、膝蓋骨、脛骨が直線になるようにする(脛骨粗面転植術)」「関節を包む関節包を縫い縮める(関節包縫縮術)」などの術式を組み合わせて、膝の構造上の問題を解消し、正常な状態に近づけます。
5日から1週間程度入院して、10日後に抜糸、その後に本格的なリハビリを始めます。早いうちからリハビリを開始することで、関節の可動域を維持できて回復も早くなるという効果が期待できます。
リハビリは病院で行う水中トレーニングや陸上での道具を使った訓練が中心ですが、ご家庭でもできるリハビリ方法もお伝えします。過度なリハビリは逆に足を壊してしまうため、その子の状態に合わせて無理のない範囲で行います。
リハビリ風景の動画の撮影もしていますが、見た目だけでは獣医師と飼い主様で評価が異なることもあるので、関節の動かせる角度や筋肉の太さなど客観的な数字を測定して、リハビリの効果を評価します。
アンダーウォータートレッドミルという水中歩行器具を使って、水の中でベルトコンベアの上を歩いてもらいます。実は、このような水中トレーニングには、浮力により関節にかかる負担を減らせる、水の抵抗により筋力をあげる、体を冷やしながら運動できる、水圧によって血流が良くなるなど、多くのメリットがあるのです。また、ワンちゃんは水の中では跨ぐようなおおげさな歩き方をするので、大きな屈伸運動を引き出し、関節可動域の改善を図ることもできます。
ただし、ワンちゃんにとって水中トレーニングはきつい訓練です。最初は思い通りに歩くのが難しく、歩けても5分が限界です。ですから、おやつをあげたり一緒に遊んだりして、ワンちゃんとの信頼関係を築き、モチベーションを上げることが何よりも大切です。当院のリハビリ担当者は、CCRPという犬のリハビリテーション認定プログラムを受講しており、行動学や理学療法を踏まえてトレーニングを行います。獣医師、スタッフが一丸となって治療からリハビリまでサポートしますので、ご不安な点はお気軽にご相談ください。
久米川みどり動物病院 地図を見る
長年信頼を寄せられている皮膚科系疾患の治療に加え、ペットのエイジングケアにも力を入れています。
飼い主様だけでなく、地域の獣医師からも紹介先として頼りにされる、外科治療専門の動物病院です。
発症後の致死率は9割を超える猫伝染性腹膜炎(FIP)。豊富な治療実績を基に、難病から愛猫を救います。