頼れる獣医が教える治療法 vol.040
年齢により考えられる病気が異なります。若齢では先天性の病気、5歳以上では後天性の病気である可能性が高くなります。先天性の病気では、動脈管開存症や心室中隔欠損症、大動脈狭窄症などの心臓の奇形、後天性の病気では僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、心筋症、心内膜炎などが挙げられます。特に5歳以上ではじめて心雑音が聴取される場合は、僧帽弁閉鎖不全症が多いですね。小型犬では13歳で85%が僧帽弁閉鎖不全症になると言われています。
心雑音の種類と位置により、どこの弁膜や心臓壁に異常があるかを推測します。一言に「心雑音がある」といっても、心臓が収縮、拡張を繰り返す中でいつ雑音が発生しているのか、左側、右側どちらのどの部位の心臓から音が聴取されているかは病気により異なるのです。複数の箇所に異常が見つかる場合もあります。
レントゲン、心臓超音波、心電図、血圧、血液検査などを行います。特に超音波検査が重要です。超音波検査は、パルスドプラ法や連続波ドプラ法、組織ドプラ法といった超音波の当て方が異なる検査を駆使します。それにより、異常血流の有無や心房・心室の拡大の有無、心臓壁や弁膜の形状、大きさなど、さまざまなことが分かります。レントゲンでは心臓の大きさや形、気管支の圧迫が分かります。それらを総合的に判断して、僧帽弁閉鎖不全症の重症度を5段階(A・B1 ・B2・C・D)で評価するのです。専門的な話をするとB2の診断をする基準は、心雑音が6段階の3以上、VHS(椎骨心臓サイズ)と呼ばれる心臓の大きさが10.5以上、LVIDDN(左室拡大末期内径)と呼ばれる左室が大きくなりすぎていないかの指標が1.7以上、左心房と大動脈の大きさの割合を示すLA/LOが1.6以上です。このB2以上の場合に治療が必要となり、B1でも治療を行ったほうが良い場合もあります。
心臓病の検査は難しいものですが、カラードプラ法と呼ばれる超音波検査では、血液の流れや速さを色分けして映すことができるので、飼い主さんにも視覚的に理解してもらいやすくなりました。
亀山動物病院
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