西軽井沢どんぐり動物病院 岩切 久弥 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.038

犬の顔面神経麻痺の治療~鍼灸治療による麻痺の改善~
脳・神経系疾患
犬の顔面神経麻痺の治療~鍼灸治療による麻痺の改善~
西軽井沢どんぐり動物病院
  • 岩切 久弥 院長
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長野県軽井沢駅から車で20分、御影用水そばの「西軽井沢どんぐり動物病院」は2020年に開院。岩切久弥院長が、西洋医学に加えて東洋医学を取り入れて治療している。東洋医学における代表的な治療法の一つである鍼灸治療は、腎不全やヘルニアなどの神経麻痺に特に有効であり、表情筋が動かなくなる顔面神経麻痺も例外ではない。犬の顔面神経麻痺は、投薬や手術では治療できないと言われているが、岩切院長は鍼灸治療で多くの犬を救った実績を持ち、飼い主に自宅でできる鍼灸やマッサージも教えている。「“西洋医学では治療が難しい”と言われた飼い主様に治療法を提示したい」と話す岩切院長に、顔面神経麻痺や鍼灸治療について伺った。(取材日 2020年10月5日)

鍼灸治療は信頼関係が大事。自宅で行う温灸や針のない鍼も治療のひとつ

― 西軽井沢どんぐり動物病院では薬による治療と鍼灸治療を取り入れていると伺いました。

当院では、西洋医学と東洋医学の両方からアプローチをして治療を行っています。西洋医学の薬や外科手術では病気が改善しない、あるいはその子の体力面や飼い主様の金銭的な問題から西洋医学の治療を行えない、ということがあります。そのような飼い主様に対して「なにかひとつでも治療法の選択肢を提示したい」と思い、東洋医学専門の学校で知識と技術を習得しました。
院内で行う鍼灸治療だけでなく、ご自宅で飼い主様に温灸やマッサージをしてもらうこともありますね。棒状のお灸やあずきの入った袋のようなもの、針のない鍼など、症状やワンちゃん、ネコちゃんの性格に合わせたケアをお伝えしています。

― どのような病気や状態の子が鍼灸治療に向いているのでしょうか?

犬ではヘルニアなどの神経症状、猫では慢性腎不全で特に効果的です。鍼灸治療の効果は個体差があり、体質だけでなく信頼関係にも左右されます。はじめて病院に来た子の場合、僕をあまり信頼できていないので鍼灸治療による効果は薄くなります。普段から来てくれている子や人懐っこい性格の子のほうが良い効果が得られるのです。これはヒトでも同様で、「鍼灸は本当に効くのかな」と思っている大人よりも、子どものほうが治療成績が良いと言われています。ですので、当院では、その子の顔や反応を見て、信頼関係が築けたと判断してから鍼灸治療を開始します。

― 椎間板ヘルニアでの鍼灸治療について教えてください。

鍼灸治療と投薬を併用して治療を行っています。治療開始当初の1週間はできれば毎日通院していただき、その後は徐々に通院頻度を減らしていきます。ご自宅でマッサージができる場合は、通院を3か月に1回などに減らすことも可能です。個体差はありますが、鍼灸治療をはじめて1~2週間で状態の改善がみられるケースが多いですね。
当院では基本的に椎間板ヘルニアに対して手術を行っておりません。グレードが進行している子ですと手術をお勧めしますが、悪化していなければ、鍼灸とお薬による治療でも手術と変わらない効果が得られるからです。手術による侵襲を考えると、鍼灸による治療のほうが身体へのダメージが少なく、飼い主様にとっても治療費を抑えられるというメリットがあります。再発率が低いことも利点ですね。

急に愛犬の顔つきが変わったら病院へ。顔面神経麻痺には鍼灸治療が有効です

― 顔面神経麻痺について教えてください。

顔面に分布している顔面神経が機能不全を起こし、表情筋が動かなくなってしまう病気です。少しずつ変化が起こるのではなく急に発症します。「朝起きたらうちの子の顔の形がおかしくなっている」と気づいて来院されるケースが多いですね。「顔の片側が垂れている」「ご飯をこぼす」「よだれが出る」「涙が出なくなる」などの症状が起き、命にはかかわりませんが、著しく生活の質が落ちてしまいます。
ヒトではヘルペスウィルスに起因することもありますが、犬ではほとんどが原因不明です。例外として、ドライブ中に車の窓から顔を出し強い風を浴び続けることで発生することはあるので注意しましょう。

― 治療することはできるのでしょうか?

「治療方法はなく、一生治らないかもしれないし自然治癒するかもしれない病気」とされてきましたが、鍼灸治療により各段に状態が改善します。顔面神経麻痺を起こしてから1か月以内であれば、適切に治療を続けることで完治も見込めます。
顔面神経麻痺は、筋肉が動かないだけで知覚は残っています。私たちが歯の治療で麻酔をされると「動かせるけれど触られている感覚がない」状態になりますが、それの逆をイメージされるとわかりやすいでしょう。よだれが付いたところが皮膚炎を起こしたり、涙が出ずにドライアイを起こしたりすると痛みを感じるのです。また時間が経過すると、筋肉が萎縮し顔がもとに戻らなくなってしまいますので、早めに治療を開始することが重要です。

― 鍼灸治療はどのように行うのでしょうか?

身体へのお灸と顔への鍼治療を組み合わせて行います。はじめに体をお灸で温め、マッサージをして神経をほぐします。その後、顔への鍼治療を行います。鍼は顔中に刺すのではなく、1か所ずつ刺して抜いてを繰り返します。動かしたい神経を目指して、気の流れに沿って道筋を作ってあげるイメージです。
鍼灸治療は、脈診により体の状態を常にチェックしながら行います。長時間やるほど良いというわけではなく、ベストな状態でやめてあげることが大切です。鍼灸治療は、体がじんわりと温かくなってきたところでマッサージをして、鍼を刺すので、ワンちゃんもネコちゃんもリラックスした状態で治療を受けてくれます。

ドクターからのメッセージ
  • 岩切 久弥 院長

顔面神経麻痺や四肢麻痺など、西洋医学だけでは根治させることが困難な病気も、鍼灸治療などの東洋医学を組み合わせることによって、各段に治療成績がよくなる場合があります。また、東洋医学には薬膳という食による療術、治療方法があり、日々の食事により病気の予防や症状の緩和を行うことができます。病気に対する予防や生活の不満など、お気軽にご相談ください。飼い主様の気持ちに寄り添い、その子に適した最善の治療方法を提案させていただきます。

犬の顔面神経麻痺の治療~鍼灸治療による麻痺の改善~
犬の顔面神経麻痺の治療~鍼灸治療による麻痺の改善~

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住所
長野県北佐久郡御代田町大字御代田2568−27
電話番号
0267-41-0950
診察動物
イヌ ネコ
診察領域
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