頼れる獣医が教える治療法 vol.34
咳が出る病気はさまざまあり、併発しているケースも多々あります。動物種や年齢によってなりやすい病気は異なり、たとえば猫であれば猫喘息、若齢の犬であればケンネルコフの可能性が高くなります。中高齢の大型犬では喉頭麻痺、小型犬では心臓病や気管虚脱、慢性気管支炎が疑われます。
咳をしていても、喉にだけ問題があるわけではありません。喉、気管支、肺、心臓など、どこに異常があるかを特定することが大切です。
飼い主さんからお話を聞くことがもっとも病気の診断に役立ちます。「どのような咳が出るか」「いつ出るか」「どの場所で出るか」など、咳の仕方やタイミングも大きなヒントになります。たとえば、大きな音や強い音の咳は喉のほう、軽めの咳は気管の下のほうに異常があると類推できます。また冬の朝にだけ咳をする子の場合は、気管支が弱っていて、朝の冷たい空気が刺激となって咳が出ていると考えられます。診察室では咳をしない子が多いので、私が咳の真似をしてどれに近いか教えてもらうことも多いですね。自宅で咳をしたときの動画を撮っておいていただけると診断の助けになります。
飼い主さんの話をもとに病気を推測し、検査は確認として行います。病気の見逃しがないように、いろいろなパターンを想定して聴診やレントゲン・超音波検査を行います。腫瘍が見つかるケースもあります。咳は慢性疾患の症状であることが多いですが、命にかかわる咳もあるので、最初のトリアージ(重症度を見極め治療を行うこと)が重要です。
「急に息苦しそうになって咳こむ」「咳が止まらない」場合は、肺炎や肺水腫など命にかかわる病気である可能性が高くなります。肺炎や肺水腫では、処置が数時間遅れると死亡するケースも出てきますので、速やかに診断し治療を開始しなければなりません。
救急医療の技術は、夜間救急病院で習得しました。当時勤めていた救急病院で数年前に確立した肺のエコー検査という新しい検査方法によって、肺炎や肺水腫の診断が格段に速くなりました。救急医療は分や秒の単位でその子の今後が変わってきますので、日々新しい知識を習得し、的確な処置をすることを心がけています。
奥沢すばる動物病院
関連キーワード:
急に進行した腎臓病と体調不良は尿管結石が原因の可能性も。尿管結石は手術で治療が可能です。
当たり前の手術だからこそこだわる。病院ごとに意外と差がある、避妊去勢手術の疑問に答えます。
ネコに多い扁平上皮癌。手術や緩和療法により、家族との時間を大切に過ごせるようお手伝いします。