津田 卓二院長 日野どうぶつ病院 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.024

犬と猫の包括的な歯科治療の実践
歯と口腔系疾患
犬と猫の包括的な歯科治療の実践
日野どうぶつ病院
  • 津田 卓二院長
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JR岐阜駅から車で15分、岐阜市「日野どうぶつ病院」は、歯科治療と整形外科治療に力を入れている。2歳以上の犬猫の8割は歯科疾患に罹患していると言われるが、実際は歯周病と吸収病巣など複数の持病を持つパターンも多い。そのため「ぐらつく歯を抜いて終わり」ではなく、口腔全体を総合的に評価し治療を行うことが大切となる。処置前のカウンセリングでは希望に応じ、過去の様々な症例の写真を見せながら飼い主に説明する工夫が、ギャップの少ない満足度の高い医療に繋がっている。「いきなり処置をするわけではないので、まずは話だけでも聞きに来てほしい」と話す津田卓二院長に、歯科処置の流れや治療内容の決め方について伺った。(取材日 2018年3月22日)

歯を1本ずつ検査して口腔全体を評価する。「歯磨きができるかどうか」が保存のカギ

―日野どうぶつ病院での歯科処置の流れを教えてください。

本来の歯科治療は「歯石除去をして、ぐらぐらしている歯を抜いて終わり」ではありません。自宅で歯磨きができるか、見えない部分がどうなっているのか、といったことも非常に重要です。そのため、1本ずつの歯の状態や口腔全体を評価し、ペットの年齢や飼い主さんの意向と現実的に可能なケアは何かなどを総合的に考えて治療内容を決定する「包括的な歯科治療」を行っています。
治療の流れとしては、初診時に覚醒状態(麻酔をかけない状態)で、咬合をはじめとして口腔と全身の状態をできる範囲でチェックします。その後、飼い主さんの希望に応じてカウンセリングを行い、治療方針を決め、血液検査をして処置日の予約を入れていただきます。当日、麻酔をかけて気管挿管後、まず歯石を除去します。次に口腔内検査とレントゲン検査を実施し、その結果と事前に検討した治療方針を加味し1本1本具体的な治療プランをたてます。ほとんどのケースで同日にプランに沿った治療を実施したあと、残った歯は仕上げにハンドスケーラーで歯石除去し、研磨剤で磨き上げて手術は終了です。通常はその日のうちに帰宅できますが、だ液や鼻汁に血が混じっていて飼い主さんが心配される場合は1泊することもあります。

―歯科検査ではどのようなことを行うのでしょうか?

「プロービング」と「歯科用レントゲン」の検査が最も大切です。プロービングでは、1本の歯に対して内側3点と外側3点、計6点の歯周ポケットの深さをすべての歯(犬では42本、猫では30本)で測定します。歯周ポケットの深さが3ミリを超えると歯周病が疑われますが、「外側は2ミリだけど内側は8ミリの深さがある」など、1本の歯でも場所により歯周病の程度が異なることがあるのです。地道な作業となりますが、歯周組織の状態を把握するためになくてはならない大事な検査ですね。歯科用レントゲンでは歯ができるだけ重ならないように口内法で撮影します。歯科用レントゲンはデジタル式ですので、数秒で高精度のモニターに画像が大きく表示されます。こちらも歯の内部構造や歯茎の中、骨の状態を確認します。犬猫で多い歯周病は見えないところが悪くなっている病気ですので、麻酔下でしっかりと検査を行うことが精度の高い治療に繋がります。

―処置の内容はどのように決めるのでしょうか。

当院では術前のカウンセリングを重視しています。気になるところは飼い主さんによってさまざまです。「歯を抜くのか」「どのように抜くのか」「費用の概算」など様々ありますが、術前に納得いただくことが大切です。意見交換しながら治療方針を決定します。「検査結果を見てから治療を決めたい」と希望される飼い主さんには、手術中に隣室で控えてもらい、検査結果をお伝えしてから手術内容を決めることもあります。
処置内容を決める要素は、「飼い主さん側」と「動物側」の大きく2つの要素に分けられます。飼い主さん側の要素として、「抜歯をして良いか」「歯ブラシによる歯磨きができるか」など歯に対しての意向とケアの可否の現状をしっかりとお聞きしています。ご家庭で歯ブラシを使って歯磨きができる場合は「歯の温存」を選択できるケースもあります。一方で、歯磨きが十分にできない、ペットの年齢が10歳以上で頻回の麻酔は避けたい、といったケースでは抜歯が最適な治療法となります。ご家庭でどこまでケアできるか相談をしたうえで、健康な歯を維持できるように処置内容を提案しています。

動物側の要素で重要なのは、口腔内の状態とペットの年齢です。さらに、歯ごとの「機能面の優先順位」も関わってきます。犬猫の歯で最も大切なのは、奥にある裂肉歯(れつにくし)です。口を閉じた時に上下の歯がハサミのようにすれ違いに咬合する歯で、食べ物を丸のみできる大きさに噛み切る役割を持ちます。裂肉歯は機能面において最も優先的に残すべき歯です。裂肉歯は複数根があるので、悪くなっている根を抜き、良い根を残すことで機能を保つ治療(ヘミセクションなど)も選択できます。

犬は歯周病。猫は吸収病巣に注意。口臭や頬の腫れが見られたら早めの受診が大切

―日野どうぶつ病院ではどのような相談が多いですか?

「歯が抜けた」「口臭が気になる」「頬が腫れて膿が出てきた」など飼い主さんが前から気にされていた症状のご相談が多いですね。病気としては、犬では歯周病、猫では吸収病巣がよく見られます。
歯周病は、トイプードルやダックス、チワワなど顎に対して歯が大きい小型犬で非常によく見られます。吸収病巣は猫ではとても多い疾患で、歯肉の腫れが見られ、破歯細胞に歯が吸収される病気です。頭やあごをなでられるのを避けるようになった、顎をガクガクと動かすチャタリングをするようになった、という場合は痛みを抱えていることが多いです。

―津田先生が診察の際に意識されていることはありますか?

飼い主さんは「どのような治療をするのだろう」と不安に思われているので、事前に治療内容を理解していただけるように心掛けています。どのような処置をするかを具体的にイメージできるよう、その犬猫の症状に似ている症例の治療前後の写真もお見せして、複数の治療方法をご提案しています。飼い主さんが納得をされていないのに勝手に抜歯をしてしまったら取り返しがつきません。麻酔をかける前に、抜歯をする可能性があるかどうかや具体的な治療内容をすべてお伝えしてから、治療を実施しています。

―家庭でのケアについて教えてください。

自宅では、短時間で構いませんので毎日歯磨きをする習慣をつけると良いですね。誰か1人だけが歯磨きを担当するのではなく、ご家族みんなで取り組むと良いでしょう。最初は自宅で歯磨きをさせてくれない子もいますので、来院時に一緒に歯磨きも行っています。病院では適度に緊張しているからか、おとなしく歯磨きをさせてくれる子も多いのです。

ドクターからのメッセージ
  • 津田 卓二院長

歯が悪いからといって、いきなり麻酔をかけて処置をすることはありませんので、まずは話だけでも聞きにきてもらえればと思います。歯科処置後には、飼い主さんから「高齢になって活発さがなくなってきていたが、食欲が増えてよく遊ぶようになった」「怒りっぽかった猫が甘えてくるようになった」などのお話もお聞きします。口の問題は治療をしないと良くならないケースが非常に多いです。ペット自身が口に痛みや違和感を覚えていても我慢することが多いため、飼い主さんが気づきにくいものです。痛みを訴えていると感じたら、それは相当痛い可能性があります。少しでもおかしいと思ったらその時にご相談ください。

犬と猫の包括的な歯科治療の実践
犬と猫の包括的な歯科治療の実践

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住所
岐阜県岐阜市日野南7丁目6−13
電話番号
058-249-6090
アクセス
JR岐阜駅より車で15分
駐車場
あり
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診察領域
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