頼れる獣医が教える治療法 vol.020
歯周病は、口の中にもともと存在する細菌、いわゆる「歯周病菌」が、歯と歯茎の境目にある歯肉溝(しにくこう)に蓄積した歯垢や歯石で繁殖することにより起こる病気です。歯周病菌が毒素を出して歯茎を溶かしていくと「歯周ポケット」という深い溝が生じ、最終的には顎の骨まで溶けてしまいます。
歯周病の怖さは、それだけではありません。最近の研究で、歯周病菌の毒素が血管を通り、心臓病や腎臓病、肝臓病など全身の病気を引き起こす原因となることが証明されました。実際に、犬では心臓病の手術をする際に心臓弁を調べると歯周病菌が見つかる場合があります。また、猫では中等度の歯周病にかかると腎不全になるリスクが14倍に跳ね上がるというデータもあります。
歯周病は口の中だけの病気ではなく、ペットの全身を蝕み寿命を縮めてしまう恐ろしい病気なのです。
歯垢を取るためには、歯磨きが最も効果的です。人間の場合は歯垢が歯石化するまでに25日かかりますが、犬の場合は3日で歯石になります。だからこそ、本来は人間よりも頻繁に歯磨きをする必要があるのです。
とは言え、最初から歯ブラシを使って思うように歯磨きをさせてくれる子はいません。上手にできるようになるまで1年はかかると割り切って、気長に取り組みましょう。まずは口を触ることからはじめ、慣れてきたら歯ブラシにおいしい歯磨きペーストをつけて、歯ブラシ好きにさせます。それから、動物が嫌がらない程度の短い時間だけ歯磨きをする習慣をつけます。長時間をかけて磨くのは難しいので、短時間の歯磨き回数を増やしていくのがポイントですね。当院では、このような歯磨きセミナーも実施しています。
口臭を気にして来院される方が多いですね。検査をしてみると、重度の歯周病により顎の骨が折れていることもあります。トイプードルやチワワなどの小型犬は顎に対して歯が大きいので歯周病が重度になりやすく、特に高齢の子では注意が必要です。ダックスフンドは特に重度になりやすい犬種です。
また、おやつのアキレス腱やおもちゃなど硬いものを噛むことで歯が折れたり割れたりして来院する子もいます。歯の中に詰め物をするなど歯内治療を行うほか、歯に負担をかけないおやつやおもちゃの選び方もお伝えしています。
パーク動物病院
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