救える命のために手を尽くす、供血犬のいる動物病院
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
- クレア動物病院 大阪府大阪市天王寺区
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- 田中 誠悟 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.020
目次
犬が歯を折る原因は主に硬いものを噛んだことによります。ヒヅメや鹿の角、骨、アキレス、ヒマラヤチーズ、硬いおもちゃ、硬い歯磨きガムなどが原因です。これらの製品には、「歯に良いです」「歯周病の予防になります」などの表示がされていることも多く、飼い主さんも「わが子のために」と買い与えていると思うのですが、その結果として歯を折ってしまいます。物を切断するときにもっとも重要な「上顎第4前臼歯」という奥歯が折れている子が多いですね。
猫が歯を折る原因は主に外傷です。高い所から降りたときに着地を失敗して顔を正面からぶつけてしまい、犬歯を折ってしまう子が多いです。
動物自身が落下したり倒れたりした際に折れてしまうような「外傷」を予防することはできませんが、「硬い物」を与えないようにすることはできると思います。
硬い物の指標として「子供のお道具箱に入っている柔なハサミでは切れない硬さの物、ご自身がかじったら歯が欠けると思われるような硬さの物を動物に与えれば欠けてしまいますよ」と飼い主さんにお伝えしています。意外に思われるかもしれませんが、人間と動物の「歯の強度」「噛み合わせ」「噛む力」を比較すると、動物の方が実は歯が欠けてしまいやすいのです。
ペット用のドライフードであれば歯を失っても食べられるので、「悪くなった歯は抜歯されやすい」のが獣医療の実情です。しかし、歯の役割を考えると、「食べる」だけではなく「噛む」ことにも意味はあります。おもちゃを噛む遊びや引っ張りっこ遊びが好きなワンちゃんにとっては、「噛む」ことは楽しく嬉しいことなのです。また、歯がなくなると顔つきが変わってしまうというデメリットも。前歯がなくなると舌が出やすくなり、唇を支える犬歯がなくなると垂れた顔になってしまいます。ですから、生きる上では抜歯をして問題がなかったとしても、快適に生きるために、なるべく歯を温存してあげたいですね。
歯が折れたと一口に言っても、折れ方によって治療の選択肢はさまざまです。
表層だけ浅く折れている場合には、コンポジットレジン修復という強化プラスチックで折れた部分を塞ぐ治療をします。深くまで折れて神経が露出してしまった場合には、その歯の神経を抜いて歯を残すか、抜歯するかを選択していただくことになります。神経が露出したままにしておくと、歯の中で細菌が大量に繁殖してしまい、目の下が腫れたり、穴が空いたり、骨が破壊されてしまったりするのでお勧めしません。また、歯の治療をせずに抗生剤を処方することも原因の解決にならないため、麻酔をかけられないなど特別な事情がない限りはお勧めしません。
ヒトでの論文報告や当院の臨床実績から考えると、マイクロスコープやラバーダム、NiTiファイル、超音波洗浄器具など、さまざまな知識や器具を応用することで、90%前後の治癒率を達成することが可能と考えています。
ただし、歯ブラシを怠ったりすればその歯も重度の歯周病となり、折れたこととは無関係にその歯を失う可能性はありますし、硬い物を噛んでしまえば再度歯を折ってしまうことも考えられます。
歯周病に対しては再生療法といった骨を治してその歯を保存する治療、再度歯を折ってしまった場合にはヒトで俗にいう銀歯(ジルコニアや金銀パラジウムなど)を被せる治療を行って、元の歯よりも強度を上げる治療なども行っていますので、飼い主さんが望めば最大限その歯を保存するための努力をさせていただきます。
現在インプラントの機材を購入し、ヒトを診る歯科医師からインプラント治療のレクチャーを受けています。人工物にはなってしまいますが、将来的には失った歯を取り戻すような治療を犬猫にも応用してあげられたらと思い準備を始めました。抜歯をしても生きていくことはできますが、動物自身の利便性や見た目は変わってしまいます。その現状を変えるため、なんとかこの治療法を実現したいと夢見ています。
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血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
ペットと長く楽しく過ごせる治療を選択するために、高度な機器と技術で消化器型リンパ腫を診断します。
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