パーク動物病院 愛知動物歯科 奥村 聡基 先生 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.020

犬猫の折れた歯を保存する、破折の治療について
歯と口腔系疾患
犬猫の折れた歯を保存する、破折の治療について
パーク動物病院 愛知動物歯科
  • 奥村 聡基 先生
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南安城駅徒歩10分のパーク動物病院 愛知動物歯科は、歯科専門診療を行っている。犬や猫の歯は丈夫と思われがちだが、人の歯よりも折れたり欠けたりしやすいという。犬は硬い“おもちゃ”やヒヅメを噛んだ時、猫は着地を失敗した時に歯が欠けやすい。歯の欠け方次第で治療は変わるが、獣医療では抜歯となることが多いのが現状である。「抜歯は最終手段、できるだけ歯を残してあげたい」と話す同院の奥村聡基副院長は、歯の状態と家庭でのデンタルケアの対応可否を判断して治療を実践。マイクロスコープやラバーダムなどヒトの歯科医院で使われる器具と技術により歯の温存治療を行う。小動物歯科・口腔外科学認定医の奥村先生に歯の保存について伺った。(取材日 2021年11月4日)

意外と折れやすい犬猫の歯。硬すぎる“おやつ”や“おもちゃ”は要注意

― 歯が折れる原因について教えてください。

犬が歯を折る原因は主に硬いものを噛んだことによります。ヒヅメや鹿の角、骨、アキレス、ヒマラヤチーズ、硬いおもちゃ、硬い歯磨きガムなどが原因です。これらの製品には、「歯に良いです」「歯周病の予防になります」などの表示がされていることも多く、飼い主さんも「わが子のために」と買い与えていると思うのですが、その結果として歯を折ってしまいます。物を切断するときにもっとも重要な「上顎第4前臼歯」という奥歯が折れている子が多いですね。
猫が歯を折る原因は主に外傷です。高い所から降りたときに着地を失敗して顔を正面からぶつけてしまい、犬歯を折ってしまう子が多いです。

― 歯が折れないようにするには、何に気を付ければ良いですか?

動物自身が落下したり倒れたりした際に折れてしまうような「外傷」を予防することはできませんが、「硬い物」を与えないようにすることはできると思います。
硬い物の指標として「子供のお道具箱に入っている柔なハサミでは切れない硬さの物、ご自身がかじったら歯が欠けると思われるような硬さの物を動物に与えれば欠けてしまいますよ」と飼い主さんにお伝えしています。意外に思われるかもしれませんが、人間と動物の「歯の強度」「噛み合わせ」「噛む力」を比較すると、動物の方が実は歯が欠けてしまいやすいのです。

― パーク動物病院では歯の温存治療に力を入れているのですね。

ペット用のドライフードであれば歯を失っても食べられるので、「悪くなった歯は抜歯されやすい」のが獣医療の実情です。しかし、歯の役割を考えると、「食べる」だけではなく「噛む」ことにも意味はあります。おもちゃを噛む遊びや引っ張りっこ遊びが好きなワンちゃんにとっては、「噛む」ことは楽しく嬉しいことなのです。また、歯がなくなると顔つきが変わってしまうというデメリットも。前歯がなくなると舌が出やすくなり、唇を支える犬歯がなくなると垂れた顔になってしまいます。ですから、生きる上では抜歯をして問題がなかったとしても、快適に生きるために、なるべく歯を温存してあげたいですね。

折れてしまった歯を残す治療。将来的にはインプラント治療の適用も

― 歯が折れた場合の治療にはどのような選択肢がありますか?

歯が折れたと一口に言っても、折れ方によって治療の選択肢はさまざまです。
表層だけ浅く折れている場合には、コンポジットレジン修復という強化プラスチックで折れた部分を塞ぐ治療をします。深くまで折れて神経が露出してしまった場合には、その歯の神経を抜いて歯を残すか、抜歯するかを選択していただくことになります。神経が露出したままにしておくと、歯の中で細菌が大量に繁殖してしまい、目の下が腫れたり、穴が空いたり、骨が破壊されてしまったりするのでお勧めしません。また、歯の治療をせずに抗生剤を処方することも原因の解決にならないため、麻酔をかけられないなど特別な事情がない限りはお勧めしません。

― 治療をすればその歯は保存できるのでしょうか?

ヒトでの論文報告や当院の臨床実績から考えると、マイクロスコープやラバーダム、NiTiファイル、超音波洗浄器具など、さまざまな知識や器具を応用することで、90%前後の治癒率を達成することが可能と考えています。
ただし、歯ブラシを怠ったりすればその歯も重度の歯周病となり、折れたこととは無関係にその歯を失う可能性はありますし、硬い物を噛んでしまえば再度歯を折ってしまうことも考えられます。
歯周病に対しては再生療法といった骨を治してその歯を保存する治療、再度歯を折ってしまった場合にはヒトで俗にいう銀歯(ジルコニアや金銀パラジウムなど)を被せる治療を行って、元の歯よりも強度を上げる治療なども行っていますので、飼い主さんが望めば最大限その歯を保存するための努力をさせていただきます。

― パーク動物病院で新しく取り組んでいる治療はありますか?

現在インプラントの機材を購入し、ヒトを診る歯科医師からインプラント治療のレクチャーを受けています。人工物にはなってしまいますが、将来的には失った歯を取り戻すような治療を犬猫にも応用してあげられたらと思い準備を始めました。抜歯をしても生きていくことはできますが、動物自身の利便性や見た目は変わってしまいます。その現状を変えるため、なんとかこの治療法を実現したいと夢見ています。

ドクターからのメッセージ
  • 奥村 聡基 先生

動物たちは歯の痛みをなかなか飼い主さんたちにわかりやすく伝えることができずにいます。おそらく野生では、痛がっていては獲物を捕らえることができず飢えてしまうので、痛みに対してある程度許容できるように生まれてくるのでしょう。驚かれるかもしれませんが、歯の病気のせいで顎が折れてしまっていても食事をする子はざらにいて、当院の診療で、顎の骨折や骨が溶けていることにはじめて気づかれる飼い主さんもいます。歯の専門家として、このような動物たちが飼い主さんに伝えられていない異常に早く気づいてお伝えすることで、動物自身にとって不都合のない、痛みや食べづらさから解放された状態をいち早く作ってあげたいと考えています。 今回は折れた歯についてのお話となりましたが、歯についてお困りごとがあれば、なんでもご相談ください。

犬猫の折れた歯を保存する、破折の治療について
犬猫の折れた歯を保存する、破折の治療について

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住所
愛知県安城市大山町1丁目12−26
電話番号
0566-75-4111
診察動物
イヌ ネコ ウサギ
診察領域
歯と口腔系疾患 眼科系疾患 皮膚系疾患 脳・神経系疾患 循環器系疾患 呼吸器系疾患 消化器系疾患 肝・胆・すい臓系疾患 腎・泌尿器系疾患 内分泌代謝系疾患 血液・免疫系疾患 筋肉系疾患 整形外科系疾患 耳系疾患 生殖器系疾患 感染症系疾患 寄生虫 腫瘍・がん 中毒 心の病気 けが・その他 軟部外科