救える命のために手を尽くす、供血犬のいる動物病院
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
- クレア動物病院 大阪府大阪市天王寺区
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- 田中 誠悟 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.017
目次
飼い主さん一人ひとりの要望に合わせたオーダーメイドの治療を行っています。複数の治療法を提示した上で、飼い主さんの心配事をお聞きして、疑問点を解消しながら治療方針を決定しています。ご納得いただくまでお話をするようにしているので、初診に1時間かけることもあります。
また、飼い主さんとわんちゃん猫ちゃん達に「病院は楽しくて気軽に行くところ」と思っていただくため、院内に自由に使える体重計を設置したり、パピー教室を開催したりしています。実際に、診察を受けずに体重だけを計ってカルテの更新をする子もいます。来院のついでに何か気になることがあれば相談してくれると嬉しいですね。
皮膚病の子は季節を問わず多く来院します。夏は外耳炎や膿皮症が増えますし、ハウスダストにアレルギー反応を起こしている子は、梅雨から秋までの長期間にわたって痒みや脱毛などの症状が現れます。食物アレルギーや外部寄生虫、ホルモン異常を原因とする皮膚疾患は年間を通してみられます。
最近ではアトピー性皮膚炎の患者さんが増えていますね。アトピーとは複数の環境アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に対して過剰な免疫反応を起こしている状態で、柴犬・トイプードル・フレンチブルドックなどは特に発症しやすい犬種です。膿皮症に悩んでいて、当院を初めて来院される飼い主さんも多くいらっしゃるのですが、アトピーは3歳頃までに発症し、症状はお腹や口の周囲など決まった場所に起こります。ちなみに、背中側に脱毛が見られる場合や高齢になってから発症した場合には、アトピーではなく他の原因が考えられます。
アトピーは、その子ごとに原因も症状の現れ方も異なりますので、完全にオーダーメイドの治療となります。シャンプーを用いるメディカルトリミングや、体質改善を目的としたインターフェロンの投与の他、ステロイドを使用することもあります。再発を繰り返す膿皮症には適切な抗菌剤の使用後に、シャンプー療法のみでコントロールできることもあります。ステロイドの副作用が心配な方もいるかと思いますが、長期間多用しなければ怖い薬ではありません。当院では投与開始時に年間の投与量を決め、その範囲内で使用するように治療のスケジュールを立てています。また近年では、分子標的薬と言って、痒みのシグナルだけを遮断し、痒みを止めてくれるお薬も登場しました。飲み薬と月に1度の注射タイプがあり、急速に普及しています。ただし、これらの治療は症状を緩和させるため対症療法であり、完治を目的としたものではありません。アトピーを完治させるための治療法として「減感作療法」も取り入れています。
減感作療法はアトピー性皮膚炎を根治させる、唯一の治療法です。アトピーはアレルゲンに対して免疫が過剰に反応することで起こりますが、減感作療法によって過剰反応を抑えることができます。具体的には、アレルギー反応が出ないほど薄い濃度のアレルゲンを体内に入れ、濃度を徐々に濃くしていくことで体質が改善し、最終的には薄められていないアレルゲンを摂取してもアレルギー反応を起こさなくなるという仕組みです。
減感作療法を行う場合は、まず血液検査を行い、アレルゲンを特定します。一度の検査で食物や樹木、カビなど92種類のアレルゲンを調べることができます。アトピー体質の子は、アレルゲンが一つではなく、食物アレルギーと環境アレルギーなどが複合しているケースがほとんどで、多い子では40種類近くのアレルゲンに反応している場合もあります。特定したアレルゲンに合わせて、その子専用の減感作薬である抗原液を調合します。
皮下注射と舌下療法の2種類に分けられます。投薬スケジュールは異なりますが、どちらのやり方を選んでも効果の差はありません。
皮下注射の場合は院内で処置をします。初回は少量・低濃度のアレルゲンを注射し、5日後、10日後と徐々に濃度を上げ、間隔も長くして(最長1か月間隔)、3~4年間で処置をしていきます。
舌下療法の場合は自宅で治療を行います。毎日決まった時間、できれば午前中に、歯茎と頬の内側の間に薬液を垂らします。舌下療法ではこれを毎日、3~4年間続ける必要があります。
皮下注射と舌下療法では、来院頻度と家庭での対応が異なりますので、飼い主さんと相談をした上でどちらの治療を行うか決定します。どちらの治療法であっても、導入後2~3か月で改善する場合もあり、ほとんどのケースでは6か月後までには何らかの改善を示していることが多いです。
6歳以下で1年中痒みに悩まされている子をお持ちの飼い主さんには、減感作療法を検討していただきたいですね。減感作療法で効果が得られると、薬を飲む必要がなくなります。薬の長期投与には副作用が出る恐れがありますし、ずっと痒みがあるというのはその子にとって苦痛なことです。減感作療法により、2/3ほどの割合でアトピーが完治するので、試す価値がある治療法と言えるでしょう。ただし、事前に膿皮症やマラセチア性皮膚炎は除外する必要があります。
完治をするまでに3~4年かかる治療ではありますが、治療を開始して最初の6か月が経過した時点で判定を行い、治療を継続するかどうかを決定します。判定の結果、減感作療法ではなく通常の薬やシャンプーによる治療法が合っているという診断になることもありますので、愛犬・愛猫の痒みでお悩みの方は一度ご相談ください。
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血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
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