頼れる獣医が教える治療法 vol.050
腎臓病は特にネコの発症が多く、腎機能が低下することでさまざまな弊害を及ぼす病気です。はじめに多飲多尿の症状が現れ、進行すると腎臓から老廃物が排出できなくなり、食欲低下や吐き気、体重低下といった尿毒症の症状も現れます。尿路閉塞や薬物などにより急激に体調が悪くなる急性腎不全の場合は、原因を取り除くことで完治が可能です。一方、加齢や食事などの影響で徐々に腎機能が低下する慢性腎不全の場合は、不可逆性の病気であり完治が難しくなります。多飲多尿といった症状は気づきにくいので、定期的に検査を行い早期発見することが重要です。
「点滴はしないといけないのか」「腎臓食を食べてくれない」といった相談が多いですね。腎臓病の治療に限りませんが「この治療しか方法はない」ということはありませんので、飼い主様の疑問を解消し、その子にできる治療を提案しています。
実際には、検査を行うと腎臓病ではないケースや治療を必要としない段階であるケースが半数程度みられます。BUNやSDMAといった血液検査の1項目だけが高くなっていることから腎臓病だと誤診されているのです。腎臓病の治療に力を入れるようになって初めて気づいたことですが、誤診が多いことに驚いています。
イヌではクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、ネコでは尿管結石や心疾患が多いですね。
SDMAという血液検査の項目は、腎機能の低下を早期発見できる検査として腎臓病の診断に広く使われていますが、内分泌疾患でもSDMAの値が上がることはあまり知られておりません。そのため誤診されやすいようです。内分泌疾患の子に対して腎臓食を処方すると、肝障害を悪化させることもあるので注意が必要です。
ネコでは、超音波検査を行うと尿管結石が見つかることが多いですね。石を取り除くだけでは再発をしたり、尿管が線維化して再び詰まったりしますので、当院では尿管をつなぎ直す手術を中心に、人工の尿管であるSUBシステムなどの手術も実施しています。
羽根木動物病院
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