頼れる獣医が教える治療法 vol.016
まずは食事療法からはじめます。「食事を変えるだけで生存期間が3倍伸びる」と言われており、犬ではタンパク質とリンを制限した食事、猫では(必要なタンパク量が多いので)リンのみを制限した食事になります。他にリンを下げるサプリメントや尿タンパクの状態によって血管拡張薬などの薬を並行して使うことも多いですね。症状によっては定期的に点滴が必要な子もいます。
腎臓病は治る病気ではなく一生付き合っていく病気なので、飼い主様の生活環境も考慮した上で、わんちゃん猫ちゃんにとってもストレスにならない治療を提案するようにしています。
また、新しい治療法として「再生医療」も取り入れています。
患者である犬猫自身の皮下脂肪を採取し、脂肪細胞から幹細胞を2週間ほどかけて培養し、それを腎臓に戻します。全国的にも症例数はまだ少ないのですが、腎機能に回復が見られたという報告もあります。
よく間違えられるのですが、幹細胞そのものが腎臓になるわけではありません。幹細胞が出すサイトカインという物質が、腎臓の線維化を抑制したり血管を再生したりすることで、腎機能の改善を狙います。
まだ治療法としては確立されておらず、腎臓病の進行具合によっては効果も不明確ですが、作用機序としては効果が見込める治療法です。
実は、本格的に腎臓病の勉強に力を入れるようになったのは、開業してからのことです。余命数週間と言われた末期の患者さんが転院してきたのですが、自分の治療により延命できたことが嬉しくなり、「より多くの子を救いたい」と考えるようになったのです。
入院による治療が必要な状態であったとしても、飼い主様が治療費を負担できないこともあります。毎日点滴を打つのが効果的であっても、飼い主様の生活環境によっては病院に通うのが難しいケースもあります。そのような時にも飼い主様と話し合って、費用面や生活スタイルも踏まえた上で、その子に合わせた治療を提案できるように勉強を続けています。
羽根木動物病院
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