頼れる獣医が教える治療法 vol.016
腎臓病は特に猫の発症が多く、腎臓が正常に働かないほど腎機能が低下した状態を腎不全と言い、腎不全は急性腎不全と慢性腎不全に分けられます。急性腎不全は犬猫どちらでも見られる病気で、尿道閉塞や薬物が原因となり1日で急激に体調が悪くなりますが、原因を取り除くことで完治も可能です。対して慢性腎不全は不可逆性で進行する完治の難しい病気です。慢性腎不全は、急性腎不全から移行する場合もありますが、加齢や遺伝的な要素、食事など様々な原因により慢性腎臓病(CKD)が進行する場合もあり、腎臓の機能が徐々に低下していきます。はじめに多飲多尿の症状が現れ、進行すると通常腎臓から排出される老廃物が体内に溜まっていき、食欲低下や吐き気、体重減少といった尿毒症の症状も現れます。
おやつのあげすぎに注意してください。特にタンパク質やリンの多い食事は腎臓に負担がかかります。また「飲んでいる水の量が変わっていないか」をチェックすることも大切です。急に飲水量が増えるわけではありませんが、「若い頃に比べて飲んでいる水の量が増えていないか」を意識すると、多飲多尿に気づきやすくなります。
ただし、そのような症状は腎臓の機能が40〜50%程度まで低下してはじめて現れます。また、一度悪くなった腎臓の機能は基本的に回復しません。ですから、症状が現れる前に腎臓機能の低下を早期発見し、治療を開始して腎機能を残すことが大事なのです。
当院では腎機能の検査を積極的に実施するようにしています。
腎機能は血液検査や尿検査、「SDMA」と呼ばれる腎機能マーカーで調べることができます。特に2016年から一般化したSDMAは、腎臓に40%の障害が出た段階で異常が検出できるので、従来の院内で行う検査と比較して、より早期の発見が可能となりました。当院では猫の健康診断を行う際には、年齢を問わず尿検査を必須項目とし、飼い主様が希望される場合にはSDMAも実施しています。
腎臓病は高齢の猫に多い病気ですが、若齢でも無症状の膀胱炎や尿石症などが見つかることもありますし、若いうちから尿検査を習慣づけて行うことで、尿比重やUPC(尿たんぱくクレアチニン比)など腎機能を数値化し、腎臓病の進行を診ることもできます。
羽根木動物病院
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