頼れる獣医が教える治療法 vol.010
ペットの口臭で一番多い原因は歯周病です。しかし、がんや内臓疾患などの全身的な疾患から口臭があることもありますので、まず全身の健康診断を行います。歯周病に関しては歯垢や歯石が付いていて、歯茎(はぐき)の腫れがある子は要注意です。
犬や猫の場合は人間とは違って、毎食後や一日に何回もこまめに歯磨きなどのケアをすることが難しいので口の中の歯を中心に歯石や歯垢がついてしまいます。汚れがたまると臭いの原因になったり歯茎が腫れたりといった症状がでてきます。歯周病は、歯肉に炎症がある歯肉炎と、歯を支える骨にも影響がでている歯周炎とに段階が分けられます。歯周病になるとペットの場合も人と同じような症状がでます。
犬では3歳以上の子の75%が歯周病になっていると言われています。猫の場合ですと、ヘルペスウイルスやカリシウイルスなどの感染症が原因でもっと若いうちから歯周病になっている場合もあります。歯石の付き方が気になりはじめるのは3、4歳からですが、歯茎のトラブルはもっと前から起こっていることが多いです。
歯周病は進行すると歯と歯茎の間にある歯周ポケットに汚れが詰まってきて、細菌が増え歯周ポケットは深くなってしまいます。進行すると歯茎が痩せる、痛みがでるだけでなく、歯の根っこにも影響を与え最終的には歯が抜けてしまうこともあります。
症状の出方は動物種や性格によって異なりますが、頭を振ったり傾けたり、食べる勢いがなくなったり、硬いフードを嫌がる子もいます。犬の飼い主さんの場合は、ご飯の食べ方やフードの好みの変化に気付かれる場合が多く、猫の飼い主さんの場合はご飯を食べなくなったり、よだれの多さや歯ぎしり、叫び声で気付かれたりする場合が多く感じます。共通しているのは口臭の強さです。
口腔以外への影響としては、細菌が血液をたどって全身に回ってしまうので、肝臓や心臓などにも悪影響を及ぼすことがわかっています。
歯周病ケアのやり方がよく分かっていなかったり、ケアの仕方が不十分で伝わっていなかったりすることが歯周病を防げない原因になっていると思います。
歯周病は食べ物や環境など日常生活の中で出てくる色々なことが原因でおきます。これだけをケアすれば大丈夫ですと特定することはかなり難しいです。人間もデンタルケアをしなければ歯周病になってしまいます。それをいかに防ぐかということがとても大切です。
歯周病は遺伝的なことよりも、環境的なことが原因になることが多いと考えていますが、犬は種類によって顔の形が大きく異なるため、ダックスフントなど顔が長い犬種が歯周病になりやすいということはあります。また、大型犬よりも小型犬の方が歯周病になりやすいとは言われています。
しかし、大型犬でも硬いものをかじる子は歯が折れてしまったり、ボールをいっぱいかじる子は歯が削れてしまったりと歯のトラブルはよくおきます。
日々の診察では口の中を触られることを嫌がる子が多いですので、ストレスが少なくて済むように、口の中はなるべく短時間でしっかりとチェックするように心がけています。そのために、事前に動物の種類や年齢、飼い主さんとのお話から性格や日々の習慣などを確認して、歯周病になりやすいかどうかを予測しています。
フードについていえば、缶詰や手作り食などやわらかいものや歯に絡みやすいものは口の中に残り汚れの原因となることもあります。最近では繊維質が多く歯の汚れを絡みとってくれるデンタルケアにも配慮したフードも出ています。
ヴィータ動物病院
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