救える命のために手を尽くす、供血犬のいる動物病院
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
- クレア動物病院 大阪府大阪市天王寺区
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- 田中 誠悟 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.077
目次
犬や猫はもちろん、うさぎやハムスター、爬虫類や両生類、鳥類、霊長類など、いわゆるエキゾチックアニマルを受け入れているのが特徴です。「動物全般を診られる獣医」を目指し、エキゾチックアニマル専門病院や高度医療施設、夜間救急病院などで経験を重ね、天王寺動物園の研修などにも参加しました。幅広い診療の実績を信頼していただき、開院以来、転院・紹介されてくる子も増えています。
診療において大切にしていることは、飼い主様の不安を取り除き、笑顔で帰っていただくことです。飼い主様の不安やストレスはペットにも伝わりますので、丁寧なインフォームドコンセントや待ち時間の削減で、安心感や満足度を高めるよう努めています。治療して終わりではなく、治療の意義や再発防止方法までしっかりお伝えしたいと思っております。
どんな動物でもいつかは、腎臓や心臓などを悪くして寿命を迎えます。過去の勤務病院でも腎臓の疾患をもつ子をたくさん診てきましたが、治療によって長生きできるケースもあれば、残念ながら早く亡くなってしまうケースもありました。適切な治療法や対処法を知り、これから出会うであろうたくさんの子たちが健やかな時間を飼い主様と過ごせるようサポートしたいと考え、腎泌尿器学会認定医を取得しました。取得過程で学び、経験してきたことは、日々の現場でとても役に立っていると感じています。また、僕自身も犬や猫を飼っていますので、もしいつかこの子たちも腎臓を悪くしてしまうことがあれば、これらの知識や技能を生かして同じように助けてあげたいです。
腎臓は体の中の不要なものを尿として排出していますが、腎臓が消耗すると機能が低下し、体内に老廃物が溜まってしまいます。これが長く続く状態が「慢性腎障害(=CKD:Chronic Kidney Disease)」です。機能低下の原因は消耗や加齢以外にも様々で、感染症や尿路閉塞、腫瘍、先天的な構造異常などが考えられます。初期はほぼ無症状ですが、進行すると食欲の低下や多飲多尿、嘔吐、被毛のごわつきなどが見られるようになります。完治することはなく、腎臓機能の低下速度を抑えながら全身状態を改善するための治療が必要です。
血液検査と尿検査のほか、血圧測定や画像検査などを実施します。血液検査では、クレアチニンとSDMA(対称性ジメチルアルギニン)の数値から残存している腎臓機能の評価を、尿検査ではUPC値(尿蛋白クレアチニン比)から尿蛋白の異常を、また尿比重や感染症もチェックします。SDMAは比較的新しい検査ですが、感度・特異度が高く、早期の腎不全マーカーとして優秀です。
しかし一度の検査だけでは、診断が難しいこともあります。例えばクレアチニンは、筋肉の代謝産物であるため、筋肉量や運動強度によって数値が高く出ることがあるのです。また脱水や食事などの影響も受けるため、数回にわたって確認したり検査を組み合わせたりしながら、総合的に診断します。
検査数値が高いことには、必ず何か原因があります。「高齢だから」で済ませず、その時点でできる対策を取ることが、重症化を防ぎ寿命を延ばすことに繋がります。
慢性腎障害の治療は、①腎臓を保護し、進行を抑制する、②全身状態を改善し、症状を楽にする──という、2つの視点から対応します。進行抑制のために、蛋白やリンを制限する食事療法を導入、ACE阻害剤や腎臓血流を良くする薬を活用し、高血圧や尿蛋白に作用する薬も検討します。そして、吐き気などを取り除き全身状態を楽にするために、点滴をはじめ、尿毒素やリンの上昇を軽減する吸着剤、増血ホルモンの注射などを行います。
慢性腎障害は長く付き合っていく病気です。頻繁な通院が難しかったり、食餌を変えられなかったりする子もいるでしょうし、投薬が困難な子もいます。限られた条件の中で、飼い主様とペットにとって続けやすい治療を行うことが大切です。早期に発見すれば、食生活の簡単な軌道修正などで腎障害の進行を遅らせることや重症化を防ぐことも可能です。ぜひ定期的な健康診断を心掛けてください。
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血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
ペットと長く楽しく過ごせる治療を選択するために、高度な機器と技術で消化器型リンパ腫を診断します。
ペットにも起こる、腎不全と心腎関連症候群。細やかに状態を把握し、適切な治療を行う必要があります。