木と土のにおい、陽の光。動物に優しく自然に近い動物病院
犬猫別の入口、専用待合室と診療室を備えつつ、森の中のような環境でお待ちしています。往診も対応します。
- 緑の森どうぶつ病院 豊岡病院 北海道旭川市
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- 榎土 慶 先生
- 曽我部 由希子 先生
頼れる獣医が教える治療法 vol.062
目次
腸から蛋白質が漏出し不足することで様々な症状が起きる症候群であり、ひとつの疾患を指す名前ではありません。血液中の蛋白質の一種であるアルブミンは、体内の水分の保持や浸透圧の調整、ホルモンや薬物と結合して運搬する役割を持ちます。漏出してしまうと低蛋白血症や低アルブミン血症が引き起こされ、下痢や食欲不振、削痩(やせすぎ)、腹水、胸水などの症状があらわれます。一方、症状がまったくない子もおり、健康診断時に病気が見つかるケースも多々あります。当院では、下痢などの症状がある子と無症状の子は半々程度です。ヨークシャーテリアなどの小型犬で好発し、中高齢で発症が増える病気です。
まず血液検査で総蛋白やアルブミンの値を調べて、低蛋白血症であるかを判断します。その結果、低蛋白血症である場合は原因により治療が異なるので、その理由を特定することが重要です。低蛋白血症は、肝臓や腎臓の病気、出血や重度の皮膚炎、やけどでも起こります。身体検査や血液検査、尿検査を行い、これらの病気の可能性を除外した後に、内視鏡や開腹による生検、エコー検査を行って蛋白漏出性腸症の診断をします。
蛋白漏出性腸症の原因は主に3つです。①原発性の腸リンパ管拡張症、②炎症性の腸疾患による二次的な腸リンパ管拡張症、③リンパ腫などの腫瘍に起因するものに分かれます。腸リンパ管拡張症の場合、96%の子はエコーだけで診断が可能です。
①原発性の腸リンパ管拡張症の場合は、低脂肪食とステロイドで治療を開始します。脂肪を摂取するとリンパ管からリンパ液と共に蛋白質も漏出してしまうため、腸への負担が少ない低脂肪食に変更することで症状を抑えることができるのです。低脂肪食でコントロールできるケースが多いですが、効果が薄ければジャガイモやささみを使った手作りの超低脂肪食に切り替えます。②炎症性の腸疾患が原因の場合は、加水分解された低アレルゲン食を与えるケースもあります。③リンパ腫が原因の場合には、腫瘍の治療を行います。
治療の目標は、アルブミンの血中濃度を2.0g/dl以上で維持すること。食餌や薬の量を調整し、症状が出ないようにコントロールします。
蛋白漏出性腸症は自然に完治することはなく、早めに治療を開始することで予後が良くなります。そのため、下痢や腹水などの症状が出る前に発見することが理想です。その手掛かりであるアルブミンの値は2.1~3.6g/dlが基準値であり、1.5g/dlを下回ると腹水や胸水が生じます。しかし「基準値だから安心」というわけではなく、「今までと比較してどうか」が大切です。たとえば今年の結果が2.2g/dlであっても、昨年の値が3.6g/dlであれば、体の中で何かが起きていると分かります。普段の元気な状態の数字を知ることで、変化にすぐ気づくことができるのです。
健康診断は「病気を早期発見する」ためだけではなく、「健康であることを確認する」「健康な状態を知る」ためにも重要です。元気なうちから年1回は受診していただきたいですね。
専門用語を使いすぎないこと、「お医者さん」と距離を置かれないようにすることです。お医者さんらしいスクラブや白衣ではなく、ポロシャツを着ているのもその一環です。狂犬病の集合注射の記憶から白衣を怖がるワンちゃんはいますし、カラフルなスクラブが好きではない子もいます。飼い主様とお話しするときも、敬語は少なめでフランクかもしれません。飼い主様とも動物たちとも、壁を作りたくないんです。なにかあれば電話やLINEで連絡をもらい、すぐに来ていただいています。なるべく早く診てあげられる、患者さんとの距離が近い病院を目指しています。
受付の上にある大きな太陽の壁画は、私が大ファンである画家の「かおかおパンダ」さんに描いてもらいました。病院はどうしても気が滅入ってしまうもの。「明るい太陽を見て少しでも元気になってもらいたい」と思い、お願いしました。また、院内のシダ植物は私が胞子から育てたものも多いです。動物病院らしくない、明るい雰囲気にしたくて飾っています。
また、病院に来た子に楽しく帰ってもらうことも重視しています。ワンちゃんには、おやつをあげたり一緒に遊んだり、ネコちゃんには静かに接して、おやつやおもちゃを使って自分からケージの外に出てきてくれるように工夫しています。病院を怖がらず、ワンちゃん、ネコちゃんが楽しんでくれることが治療の第一歩です。飼い主様には明るい場所、動物たちには楽しい場所だと思ってもらえるように診療しています。
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犬猫別の入口、専用待合室と診療室を備えつつ、森の中のような環境でお待ちしています。往診も対応します。
予約診療制で時間をかけてじっくり対話し、飼い主様と動物の立場で診療することを大切にしています。
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。