亀山動物病院 亀山 康彦 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.040

犬の心雑音~僧帽弁閉鎖不全症と超音波検査~
循環器系疾患
犬の心雑音~僧帽弁閉鎖不全症と超音波検査~
亀山動物病院
  • 亀山 康彦 院長
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相模線香川駅から徒歩7分、落ち着いた雰囲気の住宅街を進むと亀山動物病院のクリーム色の建物が見えてくる。茅ヶ崎で開院して30年の歴史をもつ病院だが、最新鋭の設備を揃え心臓病の治療に力を入れる。僧帽弁閉鎖不全症は進行性の心臓病で、悪化すると肺水腫や血栓症など命に関わる症状が現れるため、早期に進行を食い止めることが重要だ。「飼い主に病気を理解してもらうことが獣医師の責任」と話す亀山康彦院長は、心臓の超音波検査に精通し、心臓の大きさや血流の測定結果から、治療のタイミングや使用する薬を見極めているという。「犬の一番の味方でありたい」と語る亀山院長に、心臓病の検査や治療方針についてお話を伺った。(取材日 2022年8月5日)

13歳以上の小型犬の85%は僧帽弁閉鎖不全症。心雑音がみられたら検査が重要

― 犬で心雑音がみられた場合、どのような病気が考えられますか?

年齢により考えられる病気が異なります。若齢では先天性の病気、5歳以上では後天性の病気である可能性が高くなります。先天性の病気では、動脈管開存症や心室中隔欠損症、大動脈狭窄症などの心臓の奇形、後天性の病気では僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、心筋症、心内膜炎などが挙げられます。特に5歳以上ではじめて心雑音が聴取される場合は、僧帽弁閉鎖不全症が多いですね。小型犬では13歳で85%が僧帽弁閉鎖不全症になると言われています。

― どのように診断するのでしょうか?

心雑音の種類と位置により、どこの弁膜や心臓壁に異常があるかを推測します。一言に「心雑音がある」といっても、心臓が収縮、拡張を繰り返す中でいつ雑音が発生しているのか、左側、右側どちらのどの部位の心臓から音が聴取されているかは病気により異なるのです。複数の箇所に異常が見つかる場合もあります。

― 僧帽弁閉鎖不全症が疑われる場合の検査を教えてください。

レントゲン、心臓超音波、心電図、血圧、血液検査などを行います。特に超音波検査が重要です。超音波検査は、パルスドプラ法や連続波ドプラ法、組織ドプラ法といった超音波の当て方が異なる検査を駆使します。それにより、異常血流の有無や心房・心室の拡大の有無、心臓壁や弁膜の形状、大きさなど、さまざまなことが分かります。レントゲンでは心臓の大きさや形、気管支の圧迫が分かります。それらを総合的に判断して、僧帽弁閉鎖不全症の重症度を5段階(A・B1・B2・C・D)で評価するのです。専門的な話をするとB2の診断をする基準は、心雑音が6段階の3以上、VHS(椎骨心臓サイズ)と呼ばれる心臓の大きさが10.5以上、LVIDDN(左室拡張末期内径)と呼ばれる左室が大きくなりすぎていないかの指標が1.7以上、左心房と大動脈の大きさの割合を示すLA/LOが1.6以上です。このB2以上の場合に治療が必要となり、B1でも治療を行ったほうが良い場合もあります。
心臓病の検査は難しいものですが、カラードプラ法と呼ばれる超音波検査では、血液の流れや速さを色分けして映すことができるので、飼い主さんにも視覚的に理解してもらいやすくなりました。

僧帽弁閉鎖不全症は進行する。適切な検査と治療で進行を遅らせることが大事

― 治療方針はどのように決定しているのでしょうか?

飼い主さんに病気のことを理解してもらったうえで、治療方針の選択をしていただいています。検査結果や治療方法、余命や治療費など飼い主さんに説明することは多岐にわたります。このような正しい情報がないと飼い主さんは治療方針を決定することはできません。とは言え、こちらが難しい言葉を並べていくら説明した気になっても、飼い主さんが理解していなかったら説明していないことと同義です。ですから飼い主さんがしっかりと理解をして考えたうえで治療方針を選択してもらえるように、病気についてのオリジナルの動画や検査画像を見せるなど、分かりやすい説明を心がけています。

― 僧帽弁閉鎖不全症の治療について教えてください。

病気の進行をできる限り遅らせる治療を実施しています。治療を開始するステージB1やB2では、心雑音はあるけれど臨床症状が出ていないことがほとんどで、「散歩からすぐに帰りたがる」「食欲が落ちた」などの症状が出てくるとステージCまで進行しているかもしれません。肺水腫や高血圧症など命にかかわる症状が生じるため、ステージB2では「肺水腫にさせない」「ステージCまで進行させない」治療が重要なのです。それでも僧帽弁閉鎖不全症は進行性の疾患です。肺水腫になってしまうケースもあります。
治療は投薬を行い、B2ではピモベンダンという強心作用と血管拡張作用をもつ薬が主体です。ほかにも、ACEI、アルドステロン受容体拮抗薬、Caチャネルブロッカーなどを使用することもあります。薬の効果はどれくらいあるか、量は適しているか、ほかの薬も必要かを判断するために、治療開始後も検査が必須です。検査を適宜行うことで肺水腫になりづらくできるのです。
大学病院などでは手術も行っており、手術で完治できる症例もあります。

― 肺水腫にさせないことが重要なのですね。

肺水腫は肺に水が溜まってしまい、呼吸困難を引き起こす緊急性の高い病気です。肺水腫になっても治療をして回復をさせることもできますが、再発を繰り返したり、さらに病気が悪化したり、より命にかかわる状態になってしまいます。僧帽弁閉鎖不全症から、肺水腫、三尖弁閉鎖不全症、肺高血圧症、肺血栓症と進行することもあるのです。心臓疾患による肺高血圧症になる子は近年多くなっています。病気の進行をできる限り遅らせ、適切な診断、治療をするために、超音波検査やレントゲン検査が重要です。

ドクターからのメッセージ
  • 亀山 康彦 院長

先天性、後天性心疾患は聴診で心雑音を発見することが大切です。小型犬では特に多い僧帽弁閉鎖不全症は進行する疾患です。診断して薬を処方されればそれで終了ではありません。早期に診断し投薬が必要な状態かを見極めなければなりません。進行して肺水腫になってしまうと寿命がかなり短くなってしまいます。
心臓超音波検査は経験と技術が求められる難しい検査ですが、正しく読み取ることでいろいろなことがわかります。心雑音が聴取されたら年1回は心臓の超音波検査を受け、治療の開始時期や治療内容を考えていきましょう。

犬の心雑音~僧帽弁閉鎖不全症と超音波検査~
犬の心雑音~僧帽弁閉鎖不全症と超音波検査~

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電話番号
0467-52-9067
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