つむら動物病院 津村 ⽂彰 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.088

僧帽弁閉鎖不全症の治療。地域で頼られる循環器診療を目指して
循環器系疾患
僧帽弁閉鎖不全症の治療。地域で頼られる循環器診療を目指して
つむら動物病院
  • 津村 ⽂彰 院長
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大阪府堺市南区の「つむら動物病院」は、地域のホームドクターとして、動物と飼い主の気持ちに寄り添う丁寧な診療を続けている。幅広い診療を行いつつ循環器科も標榜する同院では、中高齢期の小型犬に多いという「僧帽弁閉鎖不全症」の治療に注力。初期には症状が出にくく、定期健診などで心雑音を確認し発見されることが多いこの疾患は、進行を遅らせながら長くQOL(生活の質)を保つことが治療の基本だ。治療が長期にわたることもあり、飼い主と獣医師が二人三脚で向き合う姿勢が欠かせない。精度の高い診断と治療が提供できる体制を整え、「もう一歩先の治療」を目指す同院の循環器診療について、津村文彰院長に伺った。(取材日 2026年2月26日)

定期健診で心雑音に気づくことも。早期発見・早期治療で進行をゆるやかに

― 「僧帽弁閉鎖不全症」とはどのような疾患ですか?

左心房と左心室の間にある僧帽弁がしっかり閉じなくなることで血液が逆流してしまう、中高齢期の小型犬によくみられる心臓病です。
僧帽弁が閉じずに血液が逆流すると、心臓のポンプ機能が落ちて血液がうまく送り出せず血管内の圧が上がり、血管から水分がにじみ出て肺に溜まる「肺水腫」を引き起こすことがあります。肺水腫はいわば陸上でおぼれているような状態で、私たちが最も避けたい疾患のひとつです。治療の目標も「肺水腫を起こさせないこと」になります。

― どのように発見されるケースが多いのでしょうか?

ほとんどは、定期健診やワクチン接種のときの聴診で「心雑音」が指摘されることで発見されます。散歩の持久力が落ちるなど日常の変化もサインではありますが、加齢の変化と紛らわしいものです。しかし呼吸の変化や咳、失神などの目に見える症状が出る段階では、ある程度疾患が進行してしまっています。
肺水腫を疑う場合には、呼吸の回数をチェックしてみてください。健康な犬なら安静時の呼吸数は1分間に20回前後ですが、横になって落ち着いている状態で40回オーバーなら、体に負担がかかっているサインです。この段階で受診してもらえると治療の反応が良いことが多く、助かる可能性も高くなります。

― 早期に発見し、治療を始めるメリットを教えてください。

「心雑音が聞こえる」というと、飼い主さんはとても悪い状態と受け取り落胆しがちですが、すべてのケースが重症というわけではありません。初期の段階ならば、経過観察で十分な場合もあります。
早く見つけられれば治療の選択肢が増え、進行をゆるやかにできる可能性が高まりますが、投薬は体への影響や費用の負担など、考えなければならないこともあります。まずはしっかりと診断し、適切なタイミングで治療を始めることが大切です。

安定した状態を長く保つために、無理なく続けられる治療を二人三脚で模索

― 診断や治療はどのように進みますか?

心雑音だけでは疑いに過ぎませんので、超音波検査(エコー)を用いて確定診断を行います。エコーによって僧帽弁の形や動きを確認し、逆流の有無や強さを判断。レントゲンも活用し、心臓の拡大の程度や肺に水が溜まっていないかなど、重症度を把握します。
外科手術による根本的な治療方法もありますが、対応できる病院が限られているため、現在の治療の中心は飲み薬です。薬によって心臓への負担を減らし進行を遅らせ、安定した状態を長く保つことが目標になります。進行のスピードには個体差がありますし、薬を続けながら何年も大きなトラブルなく過ごして、心臓病以外の原因で寿命を迎える子もいますよ。

― 投薬治療において、どのような点が大切ですか?

その子の心臓が今どんな状態にあるのかを正確に把握し、全身状態や飼い主さんの負担を考慮しながら治療を組み立てることです。治療は数か月から数年と長期にわたることが多いので、その子と飼い主さんが無理なく続けられる形を探すことが大切です。
まずは、血管を広げて全身に血液が回りやすくする薬や、心臓の収縮を助ける強心薬を用いることで、心臓の仕事を軽くしていきます。病状が進行したら、追加の血管拡張薬や利尿剤を組み合わせ、血液中の過剰な水分を排出する働きを促します。しかし心臓と腎臓は、一方を治療することでもう一方に負担をかけることがあります。特に血管拡張薬や利尿薬は腎臓の働きに影響を及ぼすことがあるため、定期的に状態を確認し、心臓と腎臓のバランスを保ちながら治療を進めることを重要視しています。

― ほかにも心臓病治療において、貴院の強みがありましたら教えてください。

当院には「循環器科」があり、日本獣医生命科学大学で講師を務める、日本獣医循環器学会 動物循環器認定医の資格を持つ獣医師が、心臓病の診療をサポートしています(予約制)。私たちが目指しているのは、「もう一歩先の治療」です。スタッフも日々研鑽を重ね、心臓病に強い病院として信頼していただけるよう精度の高い診断と治療を行い、健康寿命を伸ばすお手伝いに取り組んでいます。循環器に関するお悩みがあれば、お早めにご来院いただきたいですね。

ドクターからのメッセージ
  • 津村 ⽂彰 院長

動物たちは、「苦しい」「つらい」などと言葉にすることができません。日々の変化に一番早く気づけるのは、生活を共にしているご家族です。普段の様子を教えてもらう、薬が飲みにくいなら飲める方法を一緒に探す、費用面で難しければ優先順位を考えて治療を組み立てる。そうした積み重ねが、動物たちの疾患に向き合うためにはとても大切です。また健康なときから病院に慣れておくことで、小さな変化を拾いやすくなります。もしも心臓病が見つかったとしても早い段階から治療を始められますし、結果として一緒に過ごせる時間を少しでも長く保つことができるでしょう。
心臓病の治療は、飼い主さんと獣医師が同じ方向を向いて、その子の生活をより楽に、より長く守っていくための二人三脚です。不安や気になることがあれば、どんな小さなことでも遠慮なく相談してください。

僧帽弁閉鎖不全症の治療。地域で頼られる循環器診療を目指して
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住所
大阪府堺市南区泉田中150
電話番号
072-291-1181
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あり(14台)
※月極駐車場と共用のため、案内板確認のうえ必ず当院のスペースに駐車して下さい。
診察動物
イヌ ネコ
診察領域
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