僧帽弁閉鎖不全症の治療。地域で頼られる循環器診療を目指して
日ごろから様子を共有し、犬の循環器疾患を早期発見。医師と飼い主さんの二人三脚で見守っていきましょう。
- つむら動物病院 大阪府堺市南区
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- 津村 ⽂彰 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.088
目次
左心房と左心室の間にある僧帽弁がしっかり閉じなくなることで血液が逆流してしまう、中高齢期の小型犬によくみられる心臓病です。
僧帽弁が閉じずに血液が逆流すると、心臓のポンプ機能が落ちて血液がうまく送り出せず血管内の圧が上がり、血管から水分がにじみ出て肺に溜まる「肺水腫」を引き起こすことがあります。肺水腫はいわば陸上でおぼれているような状態で、私たちが最も避けたい疾患のひとつです。治療の目標も「肺水腫を起こさせないこと」になります。
ほとんどは、定期健診やワクチン接種のときの聴診で「心雑音」が指摘されることで発見されます。散歩の持久力が落ちるなど日常の変化もサインではありますが、加齢の変化と紛らわしいものです。しかし呼吸の変化や咳、失神などの目に見える症状が出る段階では、ある程度疾患が進行してしまっています。
肺水腫を疑う場合には、呼吸の回数をチェックしてみてください。健康な犬なら安静時の呼吸数は1分間に20回前後ですが、横になって落ち着いている状態で40回オーバーなら、体に負担がかかっているサインです。この段階で受診してもらえると治療の反応が良いことが多く、助かる可能性も高くなります。
「心雑音が聞こえる」というと、飼い主さんはとても悪い状態と受け取り落胆しがちですが、すべてのケースが重症というわけではありません。初期の段階ならば、経過観察で十分な場合もあります。
早く見つけられれば治療の選択肢が増え、進行をゆるやかにできる可能性が高まりますが、投薬は体への影響や費用の負担など、考えなければならないこともあります。まずはしっかりと診断し、適切なタイミングで治療を始めることが大切です。
心雑音だけでは疑いに過ぎませんので、超音波検査(エコー)を用いて確定診断を行います。エコーによって僧帽弁の形や動きを確認し、逆流の有無や強さを判断。レントゲンも活用し、心臓の拡大の程度や肺に水が溜まっていないかなど、重症度を把握します。
外科手術による根本的な治療方法もありますが、対応できる病院が限られているため、現在の治療の中心は飲み薬です。薬によって心臓への負担を減らし進行を遅らせ、安定した状態を長く保つことが目標になります。進行のスピードには個体差がありますし、薬を続けながら何年も大きなトラブルなく過ごして、心臓病以外の原因で寿命を迎える子もいますよ。
その子の心臓が今どんな状態にあるのかを正確に把握し、全身状態や飼い主さんの負担を考慮しながら治療を組み立てることです。治療は数か月から数年と長期にわたることが多いので、その子と飼い主さんが無理なく続けられる形を探すことが大切です。
まずは、血管を広げて全身に血液が回りやすくする薬や、心臓の収縮を助ける強心薬を用いることで、心臓の仕事を軽くしていきます。病状が進行したら、追加の血管拡張薬や利尿剤を組み合わせ、血液中の過剰な水分を排出する働きを促します。しかし心臓と腎臓は、一方を治療することでもう一方に負担をかけることがあります。特に血管拡張薬や利尿薬は腎臓の働きに影響を及ぼすことがあるため、定期的に状態を確認し、心臓と腎臓のバランスを保ちながら治療を進めることを重要視しています。
当院には「循環器科」があり、日本獣医生命科学大学で講師を務める、日本獣医循環器学会 動物循環器認定医の資格を持つ獣医師が、心臓病の診療をサポートしています(予約制)。私たちが目指しているのは、「もう一歩先の治療」です。スタッフも日々研鑽を重ね、心臓病に強い病院として信頼していただけるよう精度の高い診断と治療を行い、健康寿命を伸ばすお手伝いに取り組んでいます。循環器に関するお悩みがあれば、お早めにご来院いただきたいですね。
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日ごろから様子を共有し、犬の循環器疾患を早期発見。医師と飼い主さんの二人三脚で見守っていきましょう。
「ソファから落ちた」などでも発生する、小型犬の骨折。ちょっとした違和感でもお早めにご相談ください。
ジェネラリストとして幅広い分野で技術を磨き、家族目線でその子にとってのベストを一緒に考えます。