救える命のために手を尽くす、供血犬のいる動物病院
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
- クレア動物病院 大阪府大阪市天王寺区
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- 田中 誠悟 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.070
目次
膀胱炎や尿路閉塞などの尿のトラブルや、便秘など排便の異常が考えられます。猫は特に尿のトラブルが多いですが、「おしっこが出ているかどうか」で緊急性が異なります。出ているようであれば膀胱炎を疑いますが、まったく出ていないのであれば尿路閉塞の可能性が高く、腎後性腎不全に繋がる危険な状態です。いずれにしても速やかに病院へご相談ください。
尿路閉塞を起こすと、尿を体外に排出できずに腎後性腎不全を引き起こし、命に関わる可能性が非常に高くなるからです。犬において、「尿管閉塞後1週間で解除しても腎機能は65%まで回復する」という実験的な報告もありますが、現実的ではありません。繰り返し尿路閉塞を起こしている場合には、腎機能にさらに悪影響を与えます。特にオスは、メスに比べて尿道が細いため尿路閉塞を起こしやすいです。「何度もトイレに行く」「おしっこの量が少ない、出ていない」などの症状が見られたら、早めの受診をお願いします。
感染性や腫瘍性など、何らかの原因で膀胱の粘膜に炎症が起きるのが膀胱炎です。検査をしても原因が特定できない場合に特発性膀胱炎を疑いますが、この疾患はストレスが関与していると言われています。
どちらの膀胱炎の場合でも代表的な症状は「頻尿」で、何度もトイレに行ったり、トイレから出てこられなくなったりします。健康な状態であれば、膀胱に尿が溜まると膀胱壁が引き延ばされ、その刺激によって脳が尿意を感じます。しかし膀胱に炎症があると、それ自体が刺激になり尿が溜まっていなくてもトイレに行きたくなるのです。その他の症状としては、排尿時の唸り声や陰部をしきりに舐める、痛みによりイライラするなどがあります。膀胱内に結晶や結石を形成する仔もいます。
膀胱炎は性別、年齢に関係なく発症しますが、特発性膀胱炎は5歳以下の若いオス、特に去勢をした太り気味の仔に多くみられます。また、少しの変化にすぐ気付くような繊細な仔で発症が多いです。膀胱炎は治療すれば再発しないこともありますが、特発性膀胱炎は繰り返すケースが多いことも特徴です。また、どちらでも尿路閉塞を起こす可能性はあります。
特発性膀胱炎は、いわゆる「ストレスを溜めておくコップ」があふれたときに発症すると考えられます。仕組みは明らかになっていませんが、猫はストレスがきっかけとなり、膀胱の粘膜に炎症が起きると考えられています。
エアコンの音がうるさい、好きな部屋の扉が閉まっていて入れない、食器が変わった、家族が増えた・減ったなど、様々なことがストレスになり、膀胱炎を発症する仔もいます。猫にとってのストレスを完全に無くすのは難しいので、コップからあふれないよう発散させることが大切です。一緒に遊んだり、美味しいものを食べさせたりするのも良いでしょう。膀胱炎の治療は、ご家族と一緒にストレス源を探す、ストレスを発散させる方法を見つけることが何より重要なのです。
何より、ストレスを排除することです。痛みがあればそれ自体もストレスになるため、和らげてあげることが大切です。細菌感染が関与している場合は抗生剤を処方することもありますが、特発性膀胱炎では基本的には使いません。
尿路閉塞を起こしている場合には、尿カテーテルを挿入し、速やかに尿を出します。排尿処置だけでは再発の可能性が高いので、4日から1週間程度お預かりし尿カテーテルを入れたままにすることを当院ではお勧めしています。尿を出して膀胱壁の圧力を減らし血流を良くすることで、炎症が収まり、再発も起こしにくくなるのです。
再発を繰り返し何度も尿カテーテル治療をするような場合は、手術も選択肢に入ってくるでしょう。
尿道閉塞を防ぐために、尿道の狭くなっているところを太くする手術が一般的です。肛門と陰茎の間の会陰部に尿の出口を新しく作る「会陰尿道瘻造瘻術」という手術法です。これは特発性膀胱炎に対しての手術ではないのですが、「おしっこが出ない」というストレスを感じる機会が減るせいか、特発性膀胱炎の再発自体を減らすことにも繋がることが多い印象を受けます。
また膀胱炎と膀胱結石を併発する仔も多いのですが、尿道を太くすることで結石が尿と一緒に自然に排出されるようになるというメリットもあります。
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血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
ペットと長く楽しく過ごせる治療を選択するために、高度な機器と技術で消化器型リンパ腫を診断します。
ペットにも起こる、腎不全と心腎関連症候群。細やかに状態を把握し、適切な治療を行う必要があります。