頼れる獣医が教える治療法 vol.012
一番多いのは痒みです。痒みの強さにも段階があるのですが、ひどい場合には痒みで夜も眠れなくなってしまう子もいます。
次に多いのは脱毛です。毛が少なくなる子もいますし、ホルモンの病気で全身の毛が抜けてしまう子もいます。痒みと脱毛に加え、皮疹ができる子もいます。
痒がっているのを何とかしてほしい、皮膚や被毛の状態を元に戻してあげたい、と来院される飼い主様が多いですね。
そうですね、5院6院と転院されてから当院へいらっしゃる方もいます。
皮膚疾患は、同じ症状でも原因は様々です。痒みの症状が出る原因だけでも、食物アレルギーやノミアレルギー、アトピー性皮膚炎など、様々な要因が関与していることが多くあります。ですから、原因を特定するだけでも難しく、時間も掛かることがあります。
なかなか原因が特定できず、皮膚状態が良くならないと、飼い主様も不安になられますよね。内臓系の病気と異なり、皮膚疾患では状態の良い・悪いがはっきりと見えますので、飼い主様も少しでも早く治してくれる病院を探して転院をされていることもあると思います。
当院では、「痒みの原因を探る」ことと合わせて、薬漬けにしない治療法「シャンプー療法」に力を入れています。
様々な要因が関与して特定に時間がかかることもありますが、皮膚疾患の診断基準はありますので、症状を診て、検査をして、原因を特定していきます。
原因は、自己免疫性疾患や腫瘍、寄生虫感染症と様々です。診断の結果、疥癬などの寄生虫感染症だとわかると、除去すれば治りが早いので獣医師としては安心しますね。ホルモン分泌量不足が原因の場合も、ホルモンを足すだけで改善するので対応が容易な方です。
近年増えている原因は、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎です。この2つは症状が似ていることも多く、併発している子もいます。
食物アレルギーが原因となっている場合は、食物を食べなければ症状は改善します。しかし、アトピー性皮膚炎の場合は、原因が生活環境中に存在し、除去が難しいこともあります。アトピー性皮膚炎の原因となるアレルゲンを回避するか、アレルゲンに対してアレルギーにならない状態にするのが効果的ですが、ハウスダストやカビなどがアレルゲンの場合は、治療が困難です。アレルゲンを簡単に回避できれば治療は容易ですが、回避できないものの方が多いのが現状です。
診断技術の向上も関係していると思いますが、クッシング病などのホルモン性の疾患も増えています。クッシング病は漢字で書くと、「副腎皮質機能亢進症」と言います。副腎から分泌されるホルモンが過剰に出てしまっている状態です。ステロイドという言葉は、耳馴染みがあるのではないでしょうか。ステロイドも副腎皮質ホルモンのひとつです。
クッシング病は、ダックスフントやシーズー、ポメラニアンなどが好発犬種です。毛が抜けてしまったり、太鼓腹になったり、色素沈着が起こったりします。水を飲む量が増えると糖尿病を疑いがちですが、クッシング病のこともあります。
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