影響しあう腎臓と心臓の不調。状態を見極めて適切な対処を
ペットにも起こる、腎不全と心腎関連症候群。細やかに状態を把握し、適切な治療を行う必要があります。
- ちょう動物病院 栃木県下野市
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- 長 哲 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.049
目次
「呼吸困難」と「意識障害」の症状は非常に危険なので、すぐに病院に来てください。
夜間救急で多い症例は、肺水腫や、異物誤食、けいれん発作です。肺水腫から呼吸困難を起こすことが多いですが、異物誤食による嘔吐から誤嚥性肺炎を起こすこともあります。けいれん発作は脳の異常興奮状態で、持続すると脳にダメージが蓄積して亡くなってしまうので、迅速な対応が必要です。
肺水腫は、肺の中に水が溜まり呼吸が苦しくなっている状態です。肺が酸素を取り込めなくなると低酸素により心停止を起こすため、非常に危険な状態です。ただし、苦しそうであっても血液中に酸素があればすぐに心臓が止まることはありませんので、酸素吸入を行いながら状況に応じた処置をします。
肺水腫の原因は、心臓と、心臓以外からくるものに分けられます。日本では心臓病になりやすい小型犬が、心臓での血液の逆流から肺水腫になるケースが多く、この場合は心臓に対する治療を行います。心臓病以外の原因は様々で、マズルコントロール(過度なしつけ)、肺腫瘍、膵炎などの肺への炎症の波及から起こるケースもあり、原因治療も大切になります。まずは原因を特定するために、レントゲンやエコー検査、心雑音の聴取をして診断しますが、検査自体が患者の負担にもなるため、どの検査を行うか見極めて実施します。
肺水腫は、肺のうっ血(体の中に水が溜まっている状態)のみか、心臓が弱って血液循環まで悪くなっているかで処置が大きく異なります。うっ血であれば肺の水分を尿として逃がすため利尿剤を使いますが、循環が悪いと利尿剤が腎臓に届かず、尿が作れないため、強心・昇圧治療も合わせて行います。ストレスを減らすため、必要以上に動物に触れないことも重要です。酸素室に入れて、治療による呼吸の状態の改善を見て治療内容を決めるので、経過観察のため入院が必要になることも多いです。酸素室で不十分な時は、人工呼吸管理を行うこともあります。退院後は、かかりつけの病院と協力して内服の継続治療を行います。
人間のご飯や薬、ヒモなどのおもちゃが多いですね。タマネギやチョコレート、ブドウが動物にとって良くないことは知られていますが、「気づいたら食卓のお皿から食べていた」といった相談もあります。飲み込んだものによって危険性は異なり、例えば尖ったものであれば消化管に刺さる可能性がありますし、薬であれば中毒症状が出る可能性があります。人間の薬は一錠でも、体重差を考えるとチワワが飲み込んで命にかかわることはあります。また、猫ちゃんがヒモを飲み込んでしまうケースでは、ヒモがズボンのゴム紐のように腸を手繰りよせて腸閉塞や腸穿孔を起こすので、非常に危険です。診断はレントゲンが基本ですが、エコーも行います。エコーやレントゲンで映らない異物もあり、その時に状態が良くても「問題なし」とならないのが誤食の怖いところです。飲み込んで、2、3日後に具合が悪くなることもあるので、検査で確定できなければ、かかりつけでの継続治療、経過観察も必要になります。
飲み込んだものや状況によって、「吐かせる」「内視鏡」「開腹手術」などの処置を使いわけます。侵襲がもっとも少ない処置は、薬で胃を収縮させて吐かせることです。しかし、消化管を傷つける恐れがある尖ったものなどには、この処置は使えません。そのような場合は、内視鏡で取り出すこともあります。内視鏡が届かない位置にある場合や、異物の数が多い場合には、開腹手術の適応が増えます。内視鏡や胃切開、腸切開を行うときには麻酔が必要となるので、ご相談しながら状況に応じて処置を選びます。また、インターネットには「塩水やオキシドールを飲ませる」といった情報がありますが、絶対にやめてください。塩分過多による脱水や脳委縮、神経症状など重篤な症状を起こす可能性があります。
動物種によって胃の通過時間は異なりますが、飲み込んで3時間以内であれば胃の中にあることが多いので、誤食に気づいたらできるだけ早くご来院ください。
ご来院前にお電話をください。状況をお聞きし、考えられる病気や検査の内容をお伝えしますので、その上で来院されるどうかを飼い主様にご判断いただきます。夜間診療は日中の診察よりも高額になるのでご心配もあるかと思いますが、費用の目安もお伝えしますのでご安心ください。電話をしていただくことから治療がスタートします。病院に連れて行くか迷われましたら、まずはお電話でご相談ください。
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