救える命のために手を尽くす、供血犬のいる動物病院
血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
- クレア動物病院 大阪府大阪市天王寺区
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- 田中 誠悟 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.015
目次
まず、腫瘍かどうかを確定させるために組織診断や細胞診断を行います。次に、悪性腫瘍(がん)であれば、どの程度広がっているかを、エコーやレントゲン、CTなどの画像診断を用いて確認します。「どこまでの治療に耐えられるか」「治療をするメリットはあるのか」などを見極めるために、尿検査や血液検査も必要となります。これらの情報が揃ったところで、複数の治療案を検討して、飼い主様に提示しています。
主な腫瘍治療は、「外科手術」「化学療法」「放射線療法」ですが、他にも「高濃度ビタミンC点滴」「自家がんワクチン(免疫療法)」など、複数の治療案があります。
当院では治療の選択肢を複数提示しますが、治療法を決定する際には飼い主様のご希望を大切にしています。ですから、飼い主様が治療法を選ぶ参考となる情報、各治療法の効果や副作用のリスク、費用なども含めて説明をしています。最も効果が見込める治療であっても、費用面や副作用のリスクも考慮して、飼い主様が治療を断念されることもありますが、そういったご意見も尊重するようにしています。
まだ獣医師になって2年目ぐらいの頃、抗がん剤を教科書通りの分量で使用して亡くなってしまった子がいました。当時は、教科書がすべてだと思っていました。「腫瘍に詳しい先生であれば助けられたのに、自分は助けられなかった」ということが許せず、腫瘍の治療を学ぶことを決意しました。
当時は、腫瘍の認定医制度が存在せず、一部の大学に腫瘍に詳しい先生が数名いる程度でした。腫瘍は全身どこにでもできる病気なので、内科から外科まですべての分野を必死に勉強し、現在も継続しています。
当院の患者さんには、他院でやれる治療はやり尽くした上で転院されてくる方が多くいます。「何とかしてほしい」と来院された飼い主様のためにも、様々な治療ができるように勉強を続けています。
悪性メラノーマは、犬では口の中にできることが多く、口腔内の悪性腫瘍(がん)の中では発生率が最も高く、進行が早く、転移が多いことが特徴です。
メラノーマの進行は4段階のステージに分けられます。ステージ2では、外科もしくは放射線治療単独で余命7〜8ヶ月、ステージ3以降は3ヶ月と言われています。飼い主様が、食べている餌や遊んでいるおもちゃに血がついているのを発見して異変に気付くことが多いのですが、来院された時には残念ながらステージ3まで進行していることがほとんどです。
悪性メラノーマが疑われたら、まずは細胞診断を行い、病気を特定し、腫瘍の広がりを確認します。広がりが限定的であれば外科手術で局所的には治癒することもありますが、ほとんどの場合、転移をおこすため、全身的な治療が必要になります。
少しでも早く治療方針を決めることが大切です。最も進行しているステージ4では、積極的な局所治療を実施しても、余命は3か月しかありません。末期になると、口腔が崩壊して食事が摂れなくなったり、肺に転移した場合には呼吸困難になったりといった症状が現れます。「限られた時間の中で、いかに生活の質を上げられるか」「末期になるまでの期間を延ばせるか」を常に考えています。飼い主様からの「痛みをなるべく減らしてあげたい」「口の臭いを改善したい」などの希望もお聞きしながら、治療により症状を緩和させることに尽力しています。
悪性メラノーマの治療は、残念ながら有効な化学療法剤が存在せず、外科手術と放射線がメインになります。他に、まだ日本国内では使用できませんが、海外では悪性メラノーマに効果のあるワクチンも承認されており、余命を現在よりも、2倍以上延ばせる可能性があります。
腫瘍治療は現在も発展を続けています。今まで治療の方法がなかった腫瘍の中にも、新しく分子標的薬が開発されたことで治療が可能になったものもあります。海外の獣医療やヒトの医療において新しい治療法が次々に出てきています。私自身も他院での腫瘍診療、学会発表などの活動を通して、日本国内の獣医療における腫瘍治療に貢献しています。
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血液系疾患患者のための輸血外来を設置。腫瘍や慢性疾患等のセカンドオピニオンにも積極的に対応します。
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