腹腔鏡による低侵襲の肝臓生検で、慢性肝炎の早期発見・早期治療
手術痕は最大5mm。腹腔鏡による肝生検で、ワンちゃんの身体への負担を最小限にとどめます。
- カトウ獣医科クリニック 神奈川県横浜市港北区
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- 加藤 直之 院長
頼れる獣医が教える治療法 vol.021
「猫アトピー性皮膚炎の研究」で2005年に獣医学博士号を取得、2012年には日本獣医皮膚科学会の認定医制度ができましたが、初年度に認定医資格を取得しています。
皮膚科診療を専門的に学んだのは、大学を卒業した直後に世界的な皮膚科の権威である著名な先生の勉強会に参加したことがきっかけです。その勉強会で皮膚科診療の奥深さに一気に引き込まれました。当時は診断方法や治療方法が確立していない皮膚病も多く、皮膚病を熟知する獣医もそれほど多くない時代でした。勤務医として病院に勤めていたのですが、大学院に入り直し、皮膚病をかなり詳しく学びました。このときに皮膚科だけでなく、大学病院というしっかりとした組織内で内科・外科全般を学べたことが、今の自分の技術につながっていると思います。学会や勉強会を通して治療の種類や対応できる症例が増えましたし、飼い主さんに対しても教科書の知識だけではなく実践やデータに基づいて説明ができるようになりました。
「患者さんであるペットと、その親御さんである飼い主さんにとって何が最良か」を第一に考え、治療を提案しています。例えばアトピー性皮膚炎は、最近では副作用の少ない最新の内服薬が開発され、犬猫の体への負担も減りました。また減感作療法という治療により体質改善も見込めます。そのほか症状を緩和させることを目的としたシャンプーや食事療法など様々な選択肢があります。シャンプーや療法食も日進月歩で日々新しいものが開発されています。ですから、「痒みも赤みもない状態にしてあげたい」「ステロイドを使わないでほしい」など、事前に飼い主さんと相談して希望をお伺いしています。「犬猫の苦しみを取り除くこと」と「飼い主さんの気持ち」、両方を大切にしながらお話をするように心がけています。
皮膚病を診療する際には、副作用や体への負担を出来るだけ軽減する治療を心がけています。フードの変更やシャンプー、保湿剤だけで症状の改善が見込めるのであれば、それを飼い主さんに提案しています。また、内服薬を使用する場合でも、副作用が少ないものを選ぶのはもちろんのこと、その薬を用いるうえでの注意点についても飼い主さんとよく話し合うようにしています。大学や二次診療施設で行うような高度医療が、どの犬猫にも適しているわけではありません。同じ皮膚病でも飼育環境や飼い主さんの生活リズムによって、治療法を変えなければいけない場合もあります。また同じ飼育環境であっても、季節によって治療を変えなければならない場合もあります。たとえば、女性ならよくお分かりでしょうが、人は季節によって、春夏用の化粧水、秋冬用の化粧水など、お化粧品も変更するわけです。ですので、飼い主さんからしっかりとお話を聞き、その時々によって、治療も臨機応変に使い分ける努力をしています。
たとえば、アレルギーが疑われるケースなどでは、食事を変更するだけで症状が軽減する子は多いですね。フードに含まれるお肉の成分や味付けに使われるタンパク質がアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)となるケースがあるからです。皮膚に配慮したフードはアレルゲンとならないタンパク質や、たんぱく質をさらに分解したアミノ酸という成分が使用されたり、皮膚・被毛の健康を保つ必須脂肪酸などのサプリメントが配合されていたりするので、皮膚症状全般に対する効果が期待できます。
「療法食は美味しくない」と思われるかもしれませんが、最近は種類も多く美味しいものも増えています。最近のフードメーカーの療法食の研究力は目を見張るものがあり、日々素晴らしい製品が開発されています。当院では療法食のサンプルもご用意していますので、「うちの子は療法食を食べない」と決めつける前に色々と試してほしいです。意外と嗜好性がよく、驚かれるかもしれません。アレルゲンフリーのおやつやサプリメントもありますので、興味がある方はご相談ください。
犬の皮膚病には、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎、膿皮症など、実に様々な病気があり、その症状に応じて20種類ほどのシャンプーを使い分けています。一口にシャンプーと言っても、保湿性・脱脂性・止痒性・抗菌性など特徴は様々です。正しいシャンプーを正しい周期で使うことで症状の改善が見込めます。
目や口、耳の周りなど顔面や頭部はシャンプーしづらいため、ご家庭では首から下のみをシャンプーしがちですが、特にアトピー性皮膚炎などは顔面に症状が出やすいので、恐れずにちゃんと洗うことが大切です。シャンプー療法をご家庭で行うか院内で行うかは、飼い主さんと相談をした上で決めていますが、当院ではシャンプー療法が好評で、予約を非常に取りづらい状況です。このことに関しては非常に申し訳なく思っています。ドライヤーを嫌がる子も多いのですが、短毛の子であればタオルドライだけでも問題ありませんので、ぜひご家庭でも試していただきたいと思います。
何年も皮膚病の治療を続けて薬漬けになってしまったウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアを治療した時のことが印象深いですね。その子はシャンプー療法だけで痒みを抑えられるようになり、内服薬による治療をやめることができました。症状を改善できたのはもちろんですが、飼い主さんから「この病院で治療をしてもらって自分の気持ちも楽になった」と言われたのが嬉しかったですね。初めて来院されたときは、犬はひどく脱毛していて、全身掻き傷だらけでかわいそうでしたが、とても性格のいい人懐っこいワンちゃんで、つぶらな瞳がとても可愛く印象的でした。ワンちゃんも飼い主さんも、皮膚病から解放されて、もっともっと幸せになってほしいなあ、と思いました。皮膚病の子を持つ飼い主さんの中には、「自分のせいで皮膚病にさせてしまった」と悩んだり、「完全に治さないといけない」と思い詰めたりする方もいます。そのような場合には、診察したうえで「犬種の特性であるので、決して飼い主さんの飼い方が悪いわけではないこと」「ここまで治ったのは飼い主さんの努力の結果であること」「完全には治らなくても動物自身の苦痛は和らいでいること」などを、冷静に見極めたうえでご説明するようにしています。飼い主さんの気持ちに寄り添い、ペットが心身ともに元気でいられる治療を目指しています。
かどやアニマルホスピタル
手術痕は最大5mm。腹腔鏡による肝生検で、ワンちゃんの身体への負担を最小限にとどめます。
ストレスにも関連して発症する、猫の特発性膀胱炎。緊急性が高いケースもあり、速やかな受診が大切です。
飼い主様の大切なペットを“治療する喜び”が原動力、様々な内視鏡を駆使し正確な診断と治療を目指します。