三枝 早苗院長 北川犬猫病院 | ドクターズインタビュー

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頼れる獣医が教える治療法 vol.012

犬の膿皮症・耳道閉塞、原因と治療法
皮膚系疾患
犬の膿皮症・耳道閉塞、原因と治療法
北川犬猫病院
三枝 早苗院長
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「たれ耳」の犬に多い耳道閉塞。なるべく切らずに内科的治療で根本的に改善!

―犬や猫の耳の構造は、人間とはどのように違うのでしょうか?

最も異なるのは、「耳道」の形です。自分の耳を見るとわかりますが、人の耳道は地面と平行な水平耳道になっています。それに対し、犬の耳道はL字型をしており、水平耳道と垂直耳道からできています。ちなみに、猫の耳も犬に近い形をしています。
犬種によっても耳道の形には特徴があり、フレンチブルドッグなどは極端に水平耳道が細く、耳の病気になりやすい犬種です。

―耳の疾患にはどのようなものがありますか?

症状が出ている場所によって、外耳炎、中耳炎、内耳炎に分けられます。
異物や感染症が主な原因ですが、他には腫瘍やアレルギーが原因となっていることもあります。
飼い主様が気づく症状としては、「耳を気にするそぶりが増える」「耳を痛がっている」「耳が臭うようになった」などが多いです。
ものを噛めなくなる、あくびができない、耳を触ると痛がるといった症状は、耳にポリープができた急性の中耳炎の症状であることもあります。

―耳道が腫れてしまうと耳道閉塞という状態になるのですね。

外耳道が腫れ、耳の穴が塞がってしまっている状態を「耳道閉塞」と言います。アレルギーや感染症により腫れることもありますし、異物や腫瘍・ポリープといった出来物により腫れることもあります。
耳道閉塞まで症状が進行すると、飼い主様も症状に気づきやすくなります。
「すごく耳を振っているな」と耳を見たら、穴が無くなっているので、驚かれる飼い主様が多いですね。
耳の中に異物が入って腫れてしまう例としては、散歩中に草の実が耳の中に入ってしまうこともあります。散歩中に突然耳を振り出したら注意が必要ですね。また、フレンチブルドッグやパグなどの短頭種では、自分の毛が鼓膜に刺さって鼓膜炎を起こし、腫れてしまうこともあります。
犬種としては、「たれ耳」の子が耳道閉塞を起こしやすい傾向にあります。特にコッカースパニエルは好発犬種です。

―耳道閉塞の治療はどのようなものなのでしょうか?

膿皮症の治療と同様に、まずは腫れている原因を調べることが大切です。ただし、腫れがひかないと原因を調べることもできないので、まずは耳の洗浄や抗生物質により、耳の腫れを治療します。
耳の腫れがひくと、「オトスコープ」という耳用の内視鏡を使って耳の中を見ることができるようになります。
耳道閉塞に対して、耳の穴を切り取る「全耳道切除術」を行う病院もありますが、切除をしなくとも治せるケースも多くあります。耳道を切り取ってしまうと音が聞こえなくなりますし、原因が中耳や内耳といった奥にある場合には原因を残すことになり、根本的な治療になりません。できる限り耳道を切らずに、内科的な治療をしていくことを勧めています。

―自宅でできる耳のケアはありますか?

目で見える範囲を定期的にチェックすることです。耳の中に洗浄用の液体を入れて首を振らせるケア方法もありますが、耳垢が残り効果があまりないこともありますので、私は「目で見える所を優しく拭いてください」と伝えています。
市販の綿棒やティッシュを使用して耳掃除をすると、やりすぎて耳道を傷つけてしまうこともあるので、注意が必要です。

―耳道閉塞の治療で印象に残るエピソードはありますか?

長崎から1200Kmの距離を車で移動して治療を受けに来た、アメリカンコッカースパニエルの子ですね。外耳炎の症状が悪化して耳道閉塞になってしまい、地元の獣医師には全耳道切除術を勧められたのですが、納得できなかった飼い主様がインターネットで調べて北川犬猫病院に辿り着いた、という患者様です。
診察をすると、耳の中は鼓膜も骨もないほど酷い状態で、アレルギー体質から起こっている中耳炎でした。1か月半入院をしてもらい、抗菌薬を使用した内科的治療を行うことで、耳の中の腫れが徐々にひいていきました。薬剤が効かない耐性菌とも闘った難治性の耳炎でしたが、飼い主様の希望通り、全耳道切除術を行うことなく治療することができました。飼い主様が長崎から迎えにきた時の、わんちゃんと喜びあう姿がとても印象に残っています。

―遠方からいらっしゃる方も多いのですね。病院全体の特徴はございますか?

当院は皮膚科と耳の診療に力を入れていますが、予防医療を含めた一般診療も行っています。
皮膚科・耳科だけの専門診療にしようかと考えたこともありますが、耳を含めた皮膚疾患の治療では、「皮膚だけを見ればいい」ということではなく、内科も関わってきます。ですから、専門診療だけはなく一般診療も行う今のスタイルが良いと思っています。ただ、症例としては皮膚疾患の患者様は非常に多いですね。年間で6000件は診ているのではないでしょうか。
臨床に携わる獣医として、困って来院された飼い主様の立場になり、「治してあげたい」という気持ちを常に持つことを大事にしています。

ドクターからのメッセージ三枝 早苗院長

動物病院を転院するというのは、エネルギーが必要なことです。「ペットが元気なうちに何とかしてあげたい」と思いますので、治療ができるうちに受診してください。早めに受診してくれれば治療できることも、手の施しようがなくなってからでは、どうにもできなくなってしまいます。臨床医として、いつも飼い主の気持ちになって、飼い主の立場で「家族の一員」である犬や猫を治してあげたいという気持ちを忘れずにいます。皮膚疾患は死に至ることもあります。言葉が話せないペットの犬や猫が出している信号を早めにキャッチして、気づいてあげて欲しいと願っています。

犬の膿皮症・耳道閉塞、原因と治療法
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犬の膿皮症・耳道閉塞、原因と治療法

北川犬猫病院

場所
東京都板橋区南常盤台1-39-1 MAP
電話
03-3958-5370
診察動物
イヌ ネコ
診察領域
皮膚系疾患 耳系疾患

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